Ep89 激戦!王冠をわが手に(中編)
ドワーフ王国首都バルカム、その中央にそびえるシンボルというべきアーグ城
当初は戦闘も考慮されて作られたため、石造りの無骨な城だったが、度重なる改修により、4本の尖塔からなる壮麗な形に作り替えられた
普段は静かな正面広場では現在、いたるところで金属のぶつかる音、悲鳴、叫び声が響いている
サナ達が突入を開始しておよそ30分
何とか侵入者である異種族混成部隊が優勢であった
しかし、外から増える援軍に戦況はじわじわと王国側が盛り返しつつある
範囲が限定される王城の入り口を占拠することで膠着状態に持ち込めるが、その手前で最も激しい戦いが繰り広げられており、実行できていなかった
敵味方含めどちらも介入できぬほど、サナとゲンブの戦いは厳しいものになっていた
「ふんっ、ちょこまかと。だが、どこまで持つかな」
王国騎士団長であるゲンブは自らの愛斧雷撃王の大斧を振り回し、振りぬく度に特殊効果の雷撃が迸る
一定の力で振りぬいたときに発生する雷撃一発のダメージは耐えられないものではないが、攻撃が積み重なるにつれてじわじわ体力を削られていく
それに、一瞬しびれて動きが鈍る為、次の動作がワンテンポ遅れる
サナは早々に斧の特徴を見抜き、極力振りぬかせないように立ち回るも、力で上回るゲンブを攻め切れていなかった
「やっかいな斧ね、でも、面白いわ」
特殊効果を抜きにしてもゲンブは強い
そんな男が更に雷撃によって強化されて目の前に立っているのだ
戦闘狂としての血がさわぐ
その後何度かゲンブと切り結び、今まで以上に距離を取る
「どうした、もう打ち止めか?」
「……」
珍しくサナが何も言わない
彼女はゲンブから視線を外し、手元の剣を見ていた
この剣はこっちに来てから一番自分になじんだ剣だ
サナは好きで武器を壊しているわけではない
そもそも、彼女の技量であれば力を押さえて剣を壊さない戦い方もできる
しかし自分の戦いを追求した結果、武器が耐えられていないだけなのだ
「まぁ、後で考えるか」
わずかな逡巡の後、すっきりした顔で目前の相手を睨む
雷撃を食らうことを覚悟でゲンブに突っ込み、剣の重さを上げる『重撃』を発動する
これに対し、ゲンブは斧を振り下ろす
二つ武器が交錯し、雷撃がサナを襲うが、『重撃』の分わずかにゲンブが後ろに押されバランスを崩した
『震脚』
一歩だけ力強く踏み込める事ができるスキル『震脚』を発動し、更に前へと踏み込むと、バランスが崩れていたこともあり、ゲンブは無理せずサナの力を受け止め後ろへと下がる
「なんだ、その程度では儂を倒せんぞ」
衝撃を完全にそらし、ゲンブは余裕の表情を浮かべる
しかし、サナの眼はゲンブを見ていなかった
「ここは何とかするから、入り口を確保しなさい!」
「「おうっ!」」
「くっ、そっちが狙いか」
「あら、行かせないわよ」
ゲンブの位置をずらしたことで、城の入り口の前があいた
そこに、ドワーフ兵を押しのけて異種族混成部隊が入り込む
既に、王城内の兵士は外と裏の方へ駆り出されており、あっさりと場内への進入を許してしまった
城に流れ込む味方の背を見送り、ぶんっと剣を振って具合を確認する
「さて、悪いけど私が勝つわ」
「小娘が、その程度の力でどうにかできると思ったのか?」
再び、二人の戦いが始まった
正面で激しい戦闘が行われる中、裏の戦いも激化していた
ギュノスターの大剣が激しく風を切りながら、みゅうみゅうに向かって振られている
それを2刀と地形を利用して捌いていく
「どうしました、防戦一方じゃないですか」
「あらぁ、あなただって攻めあぐねてるじゃないの」
口では言い返すものの、ここまでみゅうみゅうは一度もギュノスターに攻め入ることができていない
しかも、じりじりと壁際に追い詰められている
一方他の潜入組は、今のところは互角に戦っているようだ
「邪魔」
シーチは淡々と親衛隊を一人ずつ斧で薙ぎ倒していく
ギュノスターには勝てなかったにしても、ここまでサナの下で戦ってきたのである
レベルもそれなりに上がっているため、しっかりと戦えば親衛隊と言えども勝てない相手ではない
中央で守られているユーノラは、皆の牽制になるように右へ左へと頻繁に位置を変えて牽制をしている
その為、親衛隊たちはそれに対応を追われ、囲み切れていない
状況は悪くないが、このままでは前にも進めない
周囲の状況を確認したユーノラは目深にフードを被り直し、膝の力を抜いてしゃがむ
誰もが一瞬、その姿を見失った
仲間の間を縫うように駆け抜け、シーチの横から囲みを抜ける
「行かせる、ぐはぁ」
「させない」
ユーノラを阻もうとした兵士をシーチが横から斧で殴りつける
その隙にユーノラは奥の入り口に掛けていく
目の前には出口を守る兵士が2人いるだけだ
腰の短剣に手をかけた瞬間、気配を感じてバックスステップで回避する
「おいおい、どこへ行くんだ、ユーノラ?」
そこには豪華な成りの男が、抜身の剣をぶら下げて立っていた
「おらぁ、終わりだ」
男の剣がユーノラに振り下ろされるが、ユーノラはかわすこともなく、短剣でそれを受け止める
「馬鹿な、そんな剣術いつの間に!? っ、そうか、お前ユーノラじゃないな」
「あらら、ばれちゃったすね」
フードをあげると、それはユーノラの変装をしたツナ吉であった
「ならば本物は」
「あっちだ」
城内を8人の影が走っていく
先ほどゲンブの横を通過した中に、ユーノラは混ざっていた
王族のみが知る裏道は、叔父である国王ゼオが気付いていないわけがない
その上弱い者いじめが大好きな叔父は、確実に裏に追い込んだ私を見物に行くはずだ
もともと周囲の異種族狩りの先頭で指揮をとっていたような男だ
私が悲嘆にくれて、許しを請う姿でも想像しながら楽しそうにしていることだろう
おかげで、もぬけの殻の王座の間から、その裏にある王冠の保管庫に侵入することができる
表と裏の戦闘により、城内はもぬけの殻同然であった
仮に多少兵士が残っていても、昔からユーノラの護衛として仕えてきた者達と、今回の作戦の立案者でもある風香がいる
サナやみゅうみゅうには劣るものの、親衛隊レベルでも互角以上に渡り合える布陣だ
しかし、悠長にしている時間があるわけではない
ユーノラが王冠に認められるか、全滅するまでこの戦闘は終わらないのだから
アーグ城の入り口前
ゲンブとサナは一進一退の戦闘を繰り広げていた
サナは、相変わらず同じ様に戦うゲンブに違和感を覚えた
城の中に侵入されたはずなのに、心が乱れた様子もない
そこから導き出される結論は……
「……そういうことね」
「なんだ、急に」
「これは、まずいかもしれないわね」
サナは再びゲンブから距離を取った
ここまで読んでくれてありがとうでし!
4章もあと2話なんでし!
わたしの出番ももうすぐなんでし--!!!




