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PKになった俺は孤立するしかなかった  作者: 北神悠
第四章 光の王冠と土精王国
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Ep87 町に戦闘狂を解き放ってみました

 ドワーフ王国首都バルカム

 王座の間には3人の男がいた


「ギュノスター、結局どれほどの囚人が逃げたんだ」


 重く威厳のある声が室内に響く

 王座に腰掛ける声の主は現ドワーフ王国国王ゼオ=ベッケルニ

 異種族排斥派の筆頭でもある


「はっ、349名です。うち293名は捕縛。残りも町は封鎖しましたので、時間の問題かと」


 全身黒ずくめの鎧に身を包んだ王宮親衛隊隊長のギュノスターは責任を感じているのか、口調が重い


「して、あやつは?」


「それはっ……最重要目標のユーノラ=ベッケルニの消息は未だに分かっておりません」


「ちっ、ゲンブ、弟の方はどうだ」


 先ほどから腕を組み瞑目したまましゃべらずに立っていた白い鎧の男、王国騎士団団長ゲンブは国王ゼオの質問にこたえる


「はい、先日捕縛した王弟様は現在尋問中です。拷問等は他の者の眼もあり難航しております」


「どちらも上手くいっておらんのか、くそっ、蛮族どもを排除するまであと一歩だっていうのなぜうまくいかん」


 手に持ったグラスを地面にたたきつける


「ギュノスター、国王命令だ、ユーノラが隠れていそうな屋敷を強制捜査しろ。権限は与える」


「はっ」


「ゲンブはギュノスターに兵を貸してやれ、奴らさえ始末できれば反対派は力を完全に失うはずだ」


「御意」


 黒と白の鎧は国王ゼノに対して臣下の礼をして、退出していく




「くそっ、忌々しい、王冠にさえ認められればこんな面倒なことをしなくても済むものを、しかし、あと少し、あと少しで、ドワーフが世界で一番優れた種族だと証明できる」


 誰もいなくなった部屋で、ゼノは一人呟くのであった







「今後の作戦について説明する為に、皆に集まってもらった」


 サナ達と合流してから2日目の夜、ユーノラは主だったメンバーを部屋に呼んだ


「密偵に情報を集めてもらった結果、父は既に王宮に囚われてしまっているらしい。それに、私を見つける為に周囲をしらみつぶしに当たっているようだ」


「八方ふさがりね。王宮に突っ込むの、いいわよ」


 にやっとサナは嗤って、腰の剣に手をかける


「はいはい、ちゃんと活躍の場は与えるから、おとなしくしてなさい」


 サナの肩を押さえて、風香がなだめる


「既にユーノラさんから情報はもらってるわ、本番は4日後。その前に私からいくつか提案があるんだけども、いいかしら?」


 ユーノラが促すと風香がメモを取り出して説明する


 2Jセカンドジョブが『策士』から『戦略家』にランクアップして得たスキルで、風香は王都のおおよその図面を書いていた


 『鷹の眼』という戦場俯瞰スキルで、ユーノラの持っていた地図と合わせて非常に詳細に書かれている


「最終目標は王冠になるわ、でもいきなり城に正面突破は悪手よ。敵の戦力も不明だし、ユーノラさんのお父様もどこにいるかわからない。しかし、時間もあまりないから、出来るところからやっていきましょう」


 そう言って、風香は必要な場所だけをマークした小さな地図をツナ吉とサナに渡す


「サナ負担をかけることになるけど、お願いしていいかしら。ツナ吉君もね」


「戦えるのであれば文句はないわ」

「もちろん問題ないっす」


「風香、私は?」


「シーチちゃんは、みんなに精の付く料理を作ってあげて。それと、私と裏方を手伝ってもらうわ」


「了解」


「ねぇサナ、みゅうみゅうさんに何とか手伝ってもらうことはできないかな?」


「んーそうね、みゅうの目的も王宮内部だと思うから、力を貸してくれると思うわよ。でも意外ね」


「意外?」


「風香はまだみゅうの事信じてないと思ってたんだけど」


「信じてないわよ。でも、今は戦力が欲しい、それにサナは信用してるんでしょ?」


「もちろん。まぁ見つけたら話してみるわよ」


「任せたわ」




 夜のバルカムで突然の破砕音と悲鳴が上がる


「姐さん、そこの柱もお願いっするっす」


「よいしょぉっ!」


 どがぁあん


 サナが剣を振り、柱を叩き折る


 ドワーフが作った石造りの頑丈な建物ではあるが、あちこちぶっ壊されれば倒壊する


「これで、5軒目っすね。つぎはあっちっす」




 サナとツナ吉は兵士の詰め所や、軍事施設、検問所などを無差別に襲撃して回っていた


 囚人が逃げ、王都内には相応の異種族排斥反対派もいるため、バルカム中に兵士が配備されている

 逆に言えば、それだけ人手を割いているため、一か所一か所の人員は多くない

 その為、無双しているサナ達を十分足止めできず、たった2人で行動しているため補足もされていなかった




「何事ですか」


 騒ぎを聞きつけたギュノスターが完全装備で指揮所に入ってくる

 王宮親衛隊長である彼は、王都内の兵士達の指揮官でもあった


「ギュノスター様、それがバルカム内各所で軍の施設が襲撃されてまして、既に100名以上の兵士と7軒の施設、3つの検問が襲撃されました。それに呼応する形で、潜伏した囚人たちが外へ逃げています」


「ちっ、ゲンブ騎士団長にも伝えてください。私も出ましょう」


 黒い鎧を翻して、ギュノスターは現場に向かった




「姐さん、こっからしばらく隠れて進むっす」


「なんでよ、めんどくさい」


「いや、そんなに睨まれても、風香さんがそうしろって」


「ふぅ、しょうがないわね」




「それで、賊はどこに向かってるんですか?」


「はっ。我々も追っているのですが、相手の移動が速すぎて、追いつけません」


「そうですか。……では、今もめているところを案内しなさい、そして兵士たちは網を張って、追い込むように展開」


「はっ」


 ギュノスターは手早く指示を出すも、状況は後手後手になる一方で、サナ達を捉えられずにいた




「はぁっ、とうっ、とりゃあああああ」


 びゅんびゅんと今までの鬱憤を晴らすかのように、サナが剣を振るう


「ごめんなさいっす」

「がはっ」


 サナに気を取られた兵士を、ツナ吉は背後から気絶させた

 あまり獲物を取るとサナが怖いので、ツナ吉は重要そうな書類や建物に火をつけるのが主な役割となっている


「姐さん、そろそろ次に行くっすよ」


 ツナ吉が出てきた奥の部屋は既にここからでも分かるほどメラメラと赤く燃えている

 彼の2Jセカンドジョブ『もっと影が薄い』にランクアップしたときに得たスキル『気配希薄』

 それに元から取得していた『隠密』『忍び足』『軽業』などのスニーキングスキルによって、並の兵士には察知されなくなっている


「待って」


 扉から出て行こうとするツナ吉の服をつかんで止める


「ぐへぇ。姐さんどうしたんっすか?」


「覗き見だけでいいのかしら?」


 窓に向かってサナが声をかける


「あの、そっちには誰も……っ! みゅうみゅう姉さん!」


「あらぁ、ばれちゃったか、さすがサナちゃんねぇ」


お姉さんビックリよ、と言いながらみゅうみゅうが窓の影から姿を現す


「ふんっ、隠れるならもうちょっと上手く隠れなさい。ほら、どうせみゅうも城が目的なんでしょ、決行は4日後よ」


 そう言ってサナは地図を渡す


「あらぁ、いいの?」


「私は戦えればいいわ」


「ふふふふ、サナちゃんらしいわね。お姉さん嫌いじゃないわぁ。それじゃあ、サナちゃん、ツナ吉君、またね」


 すぅっ、とみゅうみゅうの気配が消える


「ほら、ボーっと突っ立ってないで、先に行くわよ」


「ぎゃぁっ、ちょっと姐さん、痛いっすって」


 サナたちも、次の場所へ移動する


「にしても楽しくなってきたわね」


 ふはははははと王都バルカムの夜にサナの笑い声が響いた




翌日


「被害は?」


「少なくとも300名以上の兵士が負傷、施設も崩壊、延焼併せて20軒以上、潜伏していた囚人たちも、だいぶ外に出てしまったようです」


「なんということですか……それで、犯人は?」


「目撃した兵士によると、やたら強い剣士の女と盗賊の男の2人組で、消息は掴めておりません。ただ、外には出ていないようで」


「くそっ」


 いつも冷静なギュノスターには珍しく、感情をあらわにした




 おまけ



 というか、俺一応『気配察知』とか『探索』のスキルそこそこあるはずなのに、なんで姐さんは毎回あそこまでわかるんだ? やっぱり、野生のカン……


「ぐへぁ、痛いっす、痛いっすって、なんで殴るんっすか!?」


「なんか、殴った方が良い感じがしたのよ」


 やっぱり野生のカンだとツナ吉は改めて思った




 ……そして、また殴られた


読んでくれて、嬉しいでし!

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