Ep86 人は支えあっているからこそ、仲間となり、拳でも語り合える
復活2話目
まさかのここまで2000PVoverで感謝しております
「私は、幼いころから男として育てられてきたのだ」
そう言って、ユーノラは自分の過去を語り始めた
私は生まれた瞬間から、男として育てられた
王弟である父は、兄である現国王から王位継承に対して警戒されていることを知っており、女よりも男として育てたほうが危険が少ないと判断したからだそうだ
父は兄の現国王と違って他種族融和派で、たびたび国王とぶつかっていたそうだ
結局父は争いに負けて、私の祖父である先代より王位を譲られたのは他種族排斥派の現国王である兄だった
あれ、王冠は?
と、風香が質問を挟む
王冠は、伝説なのだ
記録に残っている限りの直近は130年前の4代前の国王の時となっている
だからこそ、王冠が王を王足らんとする為のシンボルとなっているのだ
私は父の教えを受けて、学校も首席で卒業して政治に関わり何とか他種族排斥の機運を防ごうとしていたのだが、排斥派最有力の父は何かと外へ飛ばされ、第三王子は亡命
そして、法律の制定
いよいよ我が国は他種族を完全に排斥する一歩手前まで来てしまった
もちろん、いくら国王に権力があるとはいえ、全て自由になる訳ではない
私たちの派閥も全力で立ち向かったが、君たちも知っての通り、父は行方知れずで私は投獄、他の派閥の者たちも情報は集めているが芳しい状況ではない
話を進める程にユーノラの表情は重くなる
「でも、王冠を手に入れればまだチャンスはあるんですよね?」
場の空気を換えようと、風香がユーノラの話に割り込む
「ああ、しかし、さっきも言ったように可能性がある程度、それに仲間も多くはない」
「それでも、このままではいずれ……ですよね。逃げる選択肢はないんですか?」
「残念ながらそれは出来ない、多くの異種族が捕まっていることもあるが、このままこの国を放置すれば、いずれ外の国とも戦争になる。王族として、それは見過ごせない」
ぐっと、拳に力を入れてユーノラは語る
「なら、決まりね」
「そうっすね。というか、姐さんは最初からやる気満々みたいっすけど」
「団長は戦えればなんでもいい、だから仕方ない」
「風香殿、ツナ吉、シーチ……しかし本当に」
「ユーノラ、私達は同じ牢屋で過ごした仲間」
「そうっすよ!」
「ありがとう」
うっすらと涙を浮かべて、ユーノラは3人に感謝の言葉を述べる
今日は時間も遅くサナも出て行ったままなので、解散となった
次の日、覚悟が決まったユーノラの顔を見たサナは一言
「これなら戦えそうね」
と、満足げに呟いた
おまけ
サナたちがユーノラの屋敷に来た次の日の夜
「兄者、次のユーノラ様の護衛は俺に譲ってほしい」
「ほう、ドッジ、弟の分際で兄に意見か」
全身が緑の鱗に覆われた兄弟が、口から細長い舌をチロチロ出しながら互いを牽制しあう
「あら、楽しそうな事してるわね」
「女ぁっ!」
「どうした、ドッジ? ユーノラ様の客人ではないのか?」
突然声を荒立たせる弟のヴォントが驚いたように声をかける
「兄者、この女はユーノラ様に無礼な発言だけでなく、秘密の事まで暴きやがったんだっ!」
「なんだと、おい貴様」
事情を聴いたヴォントも低い声を出し、赤髪の少女を睨む
「中々、良い目ね。ここら辺の魔物は戦い飽きたし、期待してたドワーフ兵は雑魚ばっか、やっと見つけた獲物はお預け食らうし、少しは楽しませなさいよ」
そう言って、サナは腰に差した木刀に手をかける
「我ら兄弟とやる気か」
「ここでやれば貴様の仲間にも迷惑がかかるのだぞ」
「何よ、口喧嘩しかできない雑魚なの、期待外れね。その武器は飾り?」
「このくそ女が、もう我慢できねぇ、ぶっ殺す」
ドッジが怒りに任せて振り下ろした剣をサナは右側にいなし、空いた左手で顔面を殴打する
完全に不意を突かれたドッジは目をつむり、一瞬サナを視界から外してしまう
サナはその隙に身を低くして、殴った勢いのまま足でガードがない腹に蹴りを飛ばす
「ちっ、煽ったのは貴様だからな」
弟がやられるままなのを見ていられるほど、ヴォントは悠長な性格ではない
わずかに残っていた理性で、峰の方を向けでサナに切りかかる
「甘いわね」
ヴォントの動きを察知して、蹴りを途中でキャンセルする
多少バランスは崩れたが、峰打ちで全力を出していない剣を防ぐには十分だ
「どっちも一気に相手したげるから、少しは楽しませなさいよ」
口角をぐいっと引き上げてサナは剣を振る
「ぶっ殺す!」
「調子に乗るなぁ!」
ヴォントもドッジも叫び声をあげてサナに向かっていった
それから2時間後
「くそー、体が動かねぇ!」
「まさかリザードマンの鱗を素手で殴ってへし折る人間がいるとはな」
「あんた達だってちょっとはやるじゃない」
3人は大の字になってその場にぶっ倒れていた
「しかし、貴様が本気を出せば我ら兄弟位軽くあしらえていたのではないのか?」
「兄者っ!」
「ドッジ、お前もあの剣の威力を見ただろう、それに我らは最も得意な殴り合いで、しかも2人でやってやっと引き分けだったのだ」
実際サナは、戦い始めて数分でヴォントとドッジの剣をへし折っていた
その後は「無粋ね」と言って、自分の剣を放り投げて拳での語り合いに移行していた
「なによ、それじゃあ楽しくないでしょ」
不満げにサナは言う
「くっ、はっはっは、まさかそんな理由とはな、ドッジ、我らの負けだ」
「兄者、しかし、この女はユーノラ様を」
「くどい、負けたんだ、それにお前も感じたはずだ、このサナ殿はユーノラ様に悪い感情を持っているわけではないと」
「はぁ? なんでユーノラの話が出てくるのよ、それにいちいち殿なんてつけなくていいわよ。いい戦いだったわ、よっと」
サナは少しふらつきながらも体を起こし、ヒロの作った黒い木刀を担いで「また戦いましょ」とだけ言って、館の方へ帰ってしまった
サナの姿が見えなくなってしばらくたった頃
「なぁ、ドッジ、お前はユーノラ様にずっとついていくか?」
「当たり前だろ」
「……そうか、じゃあその悔し涙をふけ、我らはもっと強くならなければならない」
「くっ、わかってるよ」
「いや、わかってない。俺もだが、サナと戦って分かっただろ。今の我らの力ではユーノラ様を守り切れないのだ」
「……」
「きっとサナはわざと我らに喧嘩を売ったのだろう。周りに噛みついている暇があったら、もっと鍛えて強くなれと」
「……くそっ、ああ、そうだな兄者」
次の日、やけに艶々したサナと、今までにも増して厳しい訓練に精を出す包帯だらけのリザードマン兄弟だった
おまけ2
「サナ殿、昨日一体何があったのだ」
ボロボロのくせに元気に走り込みを行うリザードマン兄弟を見てユーノラはサナに問いかけた
なんとなく、想像はついている風香も半眼でサナを見る
「何って、ちょっと話し合いをしただけよ、拳で」
リザードマンってタフでいいわね、と呟きながらサナはしれっと言う
「拳って、あの、風香殿?」
「はぁ、やけに調子がいいと思ったら。ほどほどにしときなさいよ」
既にサナの行動に慣れた風香はユーノラの懇願めいた質問をスルーして、たぶん意味ないなぁとは思いながらも釘を刺す
「えっと、あの」
ポンポン
「シーチ?」
困惑しているユーノラの肩をシーチがたたきぼそりと
「あれは団長の病気。どうしようもできない」
「?」
ツナ吉を含め皆が達観したあきらめた目をする中、ユーノラは一人混乱を深めるのであった
何故か余談の方が長くなった……
今週中に何とかドワーフ編を終えられるといいなぁ
しばらく3日に1回は更新します(安定供給できるようになるまでは不定期に上げていきます。よろしくお願いします)
読んでいただきありがとうございます。




