Ep83 生ゴミの策士
ツナ吉達がドワーフ王都バルカムの地下牢から脱獄してから4日目の朝、ユーノラに連れられてきた屋敷に、少女の声が響く
「たのもー、ここにあたしん所の丁稚と料理番がいるはずよ、出てきなさい! 」
声の主はもちろんサナである
4日前、ツナ吉達がここまで無事逃げ切れたことを確認したのち、サナは風香と合流する為に地下牢まで一旦戻った
あわよくば鎧の剣士と戦えればと期待していたが、既にみゅうみゅうが地面を崩した後で、王宮区から工房区へと脱出しようとしている風香と運よく合流することが出来た
風香と合流した時、ちらりと地下牢の方を悲しそうに眺めるサナに風香はジト目を向けるのであった
「あれ、みゅうは? 」
「私を先に逃がして、それっきりよ。お礼もちゃんと言いたいのに」
「まぁ、生きてればまたそのうち会えるわよ。たぶん彼女も必死なんだろうからね」
「えっ? 」
「さて、じゃああたし達も本格的に逃げますか」
そういって、風香を連れてサナは走り出した
あえて、ツナ吉達が逃げた屋敷とは逆方向へ向かう
それから3日間は警戒が厳重だったので、ここまで近づくことが出来なかった
「ユーノラ様」
「そんなに慌てて、どうしましたか」
「それが、突然変な人間の冒険者がやってきまして、うちの団員を出せと」
「人間ですか」
この国は既に他種族の排斥法案が通ってしまっている
そんな中、王都の中枢に近い工房区までドワーフ以外の種族がすんなりと来れるとは思えない
ましてや、三日前の脱獄でより警備は厳重だろう
「それって、もしかして赤い髪を伸ばした若い女性じゃないっすか? 」
ユーノラが思考を巡らせていると、ツナ吉が割り込んできた
「ああ、そうだが、容姿まで話しては」
「それきっと姐さんっす。この間地下牢で助けてくれたみゅうみゅう姉さんと一緒で、自分らの仲間っすよ」
「そうか、ここまで来るとは、余程の腕利きなんですね。しかし、ここに招き入れることはできません」
「どうしてっすか」
「ダメ兄はわかってない、ここで団長を通したら脱獄犯がここにいることを周囲に教えるようなもの」
「シーチちゃんの言うとおりだよ、申し訳ないが」
と、悔しそうにユーノラが言う
「じゃあ、俺らが外に出れば」
「はぁ、ダメダメと思ってたけど、ここまでとは思わなかった。団長が単独ならわざわざ入口で聞いたりしない。たぶん、風香の策」
「君らの団長さんは凄い信頼のされ方をしてるんだね」
と、若干引きつった笑みを浮かべながら、ユーノラが提案する
「なら、こんな感じなら、どうだろう」
「うん、たぶん風香ならわかる」
「ユーノラさん、一瞬で解決策が出てくるなんて凄いっす」
「こんなのと血がつながってると思うと、恥ずかしい」
「ちょっと、シーチそこまで言うことないじゃないか」
「言い足りないくらい」
「ふっはっは、君達は相変わらず仲がいいね。それじゃあ、申し訳ないけど、そのように伝えてもらってもいいかい」
ユーノラからの言伝を聞いた彼は、駆け足で玄関まで戻っていった
ツナ吉とシーチがいる建物から、何ブロックか離れた路地裏
サナは何回か周囲を確認し、更に奥へと入っていく
「戻ったわよ」
サナが物陰に向かって声をかけると、ごそごそと奥から風香が現れる
「お帰りなさい、ねぇ、お願いだから鼻をつまむのはやめてもらえないかしら」
「いやでも、ここ結構臭うわよ」
この三日間サナと風香は、ツナ吉達とコンタクトを取る為、工房区の中に潜伏していた
ドワーフの兵士や騎士たちが血眼になって脱獄者の捜索を行っている為、気配察知とサナの野生のカンを頼りに移動しながら捕まらないように行動していた
そして、いよいよツナ吉達が隠れているところの近くまで移動することが出来たので、最悪一人ならどうとでもなるサナが出ていったのである
「風香に言われた通り言ったけど、普通に門前払いされたわよ。やっぱり、押し入りましょう」
「どうしてそんなに嬉しそうなのよ」
風香はため息をまじえあきれたように言う
「ただ追い返されるだけだった?」
「そういえば、何か言われたわね」
「ちゃんとそこまで報告しなさい、そこが肝心なんだから」
そういって、サナは門番から言われたことを風香に話す
「やっぱりね、ツナ吉君とシーチちゃんは無事にしてるみたいね」
年内最終更新です
来年もよろしくお願いいたすします
読んでくれてありがとでしー




