Ep74 牢屋のその先で
「君たちは一体何者だ」
そんな声が頭の上からかけられた
声だけ聞くと中性的な感じで、どことなく威厳がある
と、悠長に考えている場合ではないと気づいたツナ吉は身を慌てて起こし警戒する
そこには一人の人物が立っていた
身なりは少し汚れていて、薄暗いのでちゃんとは分からないが、貴族が着るような白地のスーツを着ている
少し肌が浅黒いのでドワーフだろうが、ものすごいイケメンだ
表情から敵意は感じ取れない
そのおかげで周囲を観察する余裕がうまれた
どうもここも牢の中らしい
じゃあ彼も囚われているということだろう、ならば仲間だ
そう判断したツナ吉は、改めて自己紹介をする
「どうも、俺はツナ吉って言うっす。あなたも同じ囚人仲間っすよね」
「囚人、ああそうだな、私も囚人みたいなものか。私の名はユーノラ、ドワーフ王国の現国王の甥にあたる」
ユーノラと名乗った青年は、なんと王族らしい
「なんでそんな人がこんな所にいるの?」
いつの間にか穴から這い出してきたシーチが疑問を口にする
「というか、シーチ自己紹介が先だろ」
「むっ、ダメ兄に常識を教えられるなんて屈辱。私はシーチ、不満だけどこのダメ兄の妹」
「いやいや、その自己紹介どうなのよ。初対面の人にあらぬ警戒を抱かせちゃうでしょ」
「どうせ取り繕ってもすぐバレる。だから問題ない」
「ふふっ、ははははは」
俺達兄妹が言い争っていると、突然ユーノラさんがお腹をかかえて笑い出した
「いや、すまない。久しぶりに人と話したものでね、二人とも仲がいいんだね」
「「違う(っす)」」
「ははははは」
「「うっ」」
「ダメ兄、真似するなんて気持ち悪い」
「いやいやシーチが被せてきたんじゃないか」
お互いに視線で牽制し合う俺たちをユーノラさんがやんわりと止めに入る
「ほんとに、笑ってすまなかった。お詫びと言ってはなんだが、私について少し話そう。きっと君たちの役にも立つはずだ」
そして、ユーノラさんが静か語りだす
元々我々ドワーフという種族は人付き合いが苦手な者が多くてね
最初はなるべく同じドワーフ達で群れる程度だったんだが、時間と共にどんどんとそれがエスカレートしていった
ついにはドワーフ優位主義、血統至上主義を唱えるものまでが現れ始め、この国は格差と差別が横行する国になってしまった
そしてついに先日、他種族を奴隷化する法が王によって認可されてしまったんだ
もちろんそんな馬鹿げた話があるわけない
私は断固として抗議した
結果は見ての通り、反逆者として囚われる始末だよ
そう言ってユーノラが肩をすくめる
「それにしても、ここはかなり罪の重い者が囚われる重犯罪者房だよ。君たちは人族みたいだけど一体どんな理由でここに入れられたんだ」
「それがわかんないっすよ」
「うん、買い物してたら突然危険物を所持してるって言われた」
「危険物?」
俺はあの時兵士に言われた品物について覚えてる限りユーノラさんに話した
「ゼルダ草の根にモルゲントスパイダーの針だとっ!」
突然ユーノラさんが声を荒らげて聞き返してくる
「えっ、やっぱりやばいものなんっすか」
「当たり前だ、全て国際条約で取引が規制されている禁制品だぞ。君たちはどこでそんなものを手に入れたんだ。それらは正しい調合をすればドラゴンの群れすら全滅させられる薬の原料だ」
「全部ゼオルトの雑貨屋とか道具屋で売ってた」
「そんな馬鹿な、もしそうだとすれば店主はもちろん家族、取引先洗いざらい調べ上げ関わった者は全員皆殺しだぞ」
「いや、でも俺達は普通にゼオルトの街の大通り周辺にあった店を回っただけっすよ」
「来たばかりの街で、そんな裏取引できるわけがない」
「ふむ、確かにそうだな。……っ、それでその品物はどうなったんだ?」
「もちろん全部没収っすよ」
「そういうことか、君たちは運び屋にさせられたようだな」
「えっ?」
「通常、王都に運び込まれ物品はたとえ王族でも例外はなく検査される。だが唯一の例外として護送用の馬車は軽いチェックしか受けない。理由は単純で、いくら拘束しているとはいえ犯罪者が逃げ出せるような隙を作るのはよくないからだ。なので王都内の警備隊の詰所で別途検査されることになっているんだが、警備隊にも協力者がいるのだろう、既にこの王都の中に薬の原料が運び込まれてしまったってことか」
ユーノラさんは難しい顔のまま、考えこんでしまった
「ダメ兄、そろそろ戻らないと食事の時間、いなくなってるのがバレる」
そんな時シーチが俺の服を引っ張って、帰還を促す
「んっ? ああ、流石に二人共姿が見えなくなってるのはヤバイな」
「おお、引き止めてしまって悪かったな」
状況を察したユーノラさんが笑顔で見送ってくれた
食事を終えたあと、兵士の気配が遠ざかるのを確認して再びユーノラさんのもとへやってきた俺とシーチ
食事中にシーチと二人で話し合ったことを話す
「ユーノラさん、俺たちと脱獄しないっすか?」
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