Ep71 巨大なお城アーグ城
サナと風香はその後もツナ吉とシーチの行方を探すも、一向に手がかりを得られずにいた
風香は心配で夜を通して探す心づもりでいたが、多くの店が閉まり、土地勘もない場所で夜探し回るのは非効率的だと判断したサナが無理やり宿まで連れて行き、その日は眠りについた
翌朝、二人の足取りは意外なところからわかった
サナと風香はいくらか日が昇り、朝市で賑わう街の中心に向かって歩いていた
「号外、号外、号外だよー!!」
ドワーフの少年が叫びながら紙を配っていた
どうやら無料で配られているらしく、風香もそれを一枚もらった
そこには大きく見出しが書かれており、その下には人相の悪い二人の男女の絵があった
けれど、どうもどこかで見た気がする二人だった
「って、これツナ吉君とシーチちゃんじゃない」
引っ掛かりに気がついた風香が声を上げ、サナも横から覗き込む
「あー、言われてみれば二人の特徴をよく捉えてるわね。で、これなんて書いてあるの」
そうサナにせがまれ改めて見出しから読みあげる
「えー、国家転覆を狙う人間の冒険者を未然に逮捕、お手柄ゼオルト警備隊って、なによこれ!」
「む、あたしの知らない間に随分楽しそうなことしてるじゃない」
不満そうな口調でしゃべりつつも、口角を上げるサナ
「何笑ってるのよサナ、ほらここ見て」
風香が指差す先にはこう書かれていた
『王都に到着後、取り調べを行い処刑の予定』
「早く何とかしないと、二人とも殺されちゃうのよ」
「んー、それはまずいわね。でも、なんか引っかかるのよね」
「何かって、そんなこと悩んでないで、早くドワーフの王都に行くのよ」
「っ、ちょっと風香、そんなに引っ張んなくても、わかった、わかったわよ」
いつもとは逆に、風香がサナを引っ張っていくのであった
「シーチ、お前いつの間にそんなやばいもの買ったんだよ」
「む、別に狙って買ったわけじゃない」
警備隊に捕まった後、ツナ吉とシーチは牢に入れられていた
どうやらこのままドワーフ王国の王都へと移送されるらしい
移動の準備に人手が必要らしく、牢の周囲には警備兵がいない
無用心に思われるが、全身簀巻き状にされた二人に逃げる方法がある訳もなく、ツナ吉はシーチに事の次第を問い詰めていた
「狙って買ったわけじゃないって、でも現に規制品を大量に買ってたじゃん」
「あれは全部料理の材料、そもそもダメ兄だって私が毒薬に興味がないことくらい知ってるはず」
「まぁ、確かに」
「これはきっと罠」
「罠って、そんなことして何のメリットがあるんだよ」
「それはわからない。でも、何かしようとしてるのは間違いない」
「じゃあ、秘密を知った俺達は、処刑?」
「本当にダメ兄はダメ兄、利用価値があるから王都に連れて行かれる。そうじゃなきゃ既に殺されてる」
ビビりまくるツナ吉に対して、シーチが自信満々に答える
「でもどっちにしろ、殺されるんだろ、なんでそんなに落ち着いてられるんだよ」
「ダメ兄はビビりすぎ。きっとチャンスはある。それに団長や風香がいるから大丈夫」
シーチはまっすぐツナ吉を見つめて語る
そんな妹の姿を見て、兄としてツナ吉はそれ以上何も言わなかった
馬車に揺られること2日、窓はないが所詮は木で出来た馬車なので、隙間から入り込む光で日にち感覚が失われることはなかった
おまけに食事も3食付く上、凍え死なないように毛布まで完備されてる車内で、枷さえなければ本当に快適な馬車の旅であった
どうやら王都へ運ばれるのはツナ吉、シーチの二人だけらしく、最初こそ緊張していたものの、今ではただゴロゴロと馬車の中で怠惰な時間を貪っていた
そしてゼオルトを出て10日
ついに馬車の扉が開かれた
少しふらつきながらも、十日ぶりに地面の感触を確かめつつ、周囲を見回すツナ吉とシーチ
そして、二人はある一点を見つめて固まる
彼らの目の前には巨大な城がそびえ立っていた
最も高い場所で地上150メートル
城内には1000人を収容できるパーティー会場や官僚たちの執務室、王の住居にと何百もの部屋を持つ南の大陸でも有数の規模を誇る巨城
これこそドワーフ王国王都バルカムが誇るアーグ城である
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