Ep64 泣いて蹴って忠告されて
宴会が終わったあと、ヒロはガーラントの工房でひたすら生産作業と実験に勤しんだ
街を救った英雄ということもあり材料は死ぬほど手に入ったし、作ったものは既にスティグマよりも良い物なので住民たちにも喜ばれた
スティグマが一人落ち込んでいたが、そんなことは知らん
どうにかしたいなら精進あるのみだ
オレはいつでも受けて立つぞ
ドノッポイの街での2週間の成果がこれだ
1J:墓荒らしLv17
2J:生産狂人Lv22
3J:鬼薬師Lv3
スキル:採取Lv20※、生産初級Lv19、一流斧術Lv12、石師Lv18、鑑定Lv26、解体Lv23、調合Lv20※、上級製薬Lv5、識別Lv20、木師Lv28、切断改Lv21、研磨改Lv30、接着改Lv12、分離LvMAX、精密作業Lv17、肉体超強化Lv11、計測量Lv6、穿孔Lv20※、光球LvMAX、砲術Lv14、拠点把握LvMAX、ダウジングLv16、超集中LvMAX、アラームLv13、裁縫Lv12、鍛冶Lv20※
EXスキル:メディーナ式薬学
木の精霊の加護
???
イグニファスの加護
スキルポイント:11
鍛冶が限界にまで到達した
そして、米印の注釈を出す
鍛冶Lv20※→鍛冶巧Lv1(必要スキルポイント15)
<鍛冶道とはこっから始まる、レッツゴー>
軽い説明に対して、必要スキルポイントが重すぎる
最低でもあと2つ
他のスキルの取得を考えると、更にレベルアップを図らなくてはならない
スティグマに貰った<レア度7>のグリュンライトを除けば、既に物足りない材料しか周りになくなっていた
まぁ、この間のオークジェネラルを除けば最高でもランク4の魔物しか出ない
鉱石も鉄と銅が少し取れる程度
これ以上を望むのは、不可能だろう
やはり移動すべきか
ドノッポイの街はすごく居心地が良い場所だ
黙っていても美味いメシが出る(たまに味が濃すぎて気持ち悪くなるが)
一日中作業に没頭し放題(ついに作業場を使いまくりすぎて、ガーラントがオレ専用の作業場を用意してくれた)
材料も使い放題(勝手に補充されるし、足りなければリーフとカバ太に集めさせに行けばいい)
まさに天国のような場所なんだが、モノづくりの衝動には勝てない
「オレ達は明日ここを出ていく」
さすがに挨拶もしないで出て行く程、恩知らずじゃない
ガーラントの家族とスティグマが揃ったところで、話を切り出した
一人を除いて、概ね予想はついていたらしく
随分急だなと少し驚かれたくらいだった
「やーだー、もっと、ずっと、カバ太といるのー、ヒロお兄ちゃんも行っちゃだーめー!!!」
ただ一人、シエータにはめっちゃ泣いて拒否された
メララが優しく撫でて落ち着かせようとするが、その程度では機嫌も治まらないらしく
カバ太にがっしり引っ付いて離れなくなってしまった
「あらあら、随分とカバ太ちゃんと、ヒロくんに骨抜きにされちゃったみたいね」
「おいおい、シエータよ、別れは辛いが分ってやりなさい」
「むぅ、おとーさんなんて大ッ嫌い、ふんっ、だ」
「ふぐはぁ」
あっ、ガーラントが死んだ
今までシエータというと大人しくて、優等生なイメージがあったがこんな風にもなるんだな
と言うかカバ太、お前いつの間に幼女をここまでたらしこんだんだ
一応飼い主として、ちょっと将来が心配だぞ
それから何を言っても、シエータが納得することはなかった
親でもどうしようもないならオレにはお手上げだ
そもそも、興味がない
勝手についてくると言うなら、最悪睡眠薬でも使ってなんとかすれば問題ないだろう
この間の工事で外にも簡単には出れないようになっているし、街を出てしまえば追ってはこれまい
「カバ太」
なので、オレは手招きしてカバ太を呼んだ
「うー?」
「これはお前の問題だ、お前が自分で何とかしろ、オレの言ってることがわかるな?」
「うーーーー、うーうー」
ちょっと考え込んだあと、カバ太は何か思いついたみたいだ
自信たっぷりに頷くと、シエータを乗せてそのまま外へ行ってしまった
「よし、あっちはこれでなんとかなるだろ、さてスティグマちょっとツラ貸せ」
「ああ、師匠、でもあっちはいいのか?」
そう言って、スティグマは部屋の隅に視線を向ける
「あいつらは知らん、自分で何とかしろ」
そこには名前すら出てこないリーフと娘に嫌われたガーラントが膝を抱えて落ち込んでいるが、あいつらに構っている時間はない
これまでお菓子を渡したり、話しかけたりして地味に努力していたリーフだが、どうも第一印象が微妙だったからなのか、相変わらず警戒されていた
オレは、スティグマや既に100人近くになった弟子たちの成果を見に行くので忙しいんだ
勝手に弟子になったんだが、それでもオレを師と呼ぶ以上は相応の覚悟を持ってもらわないと困る
技術が足りないのは仕方なしにしても、生半可な情熱のやつは認められない
というわけで、最後に弟子たちの様子を見てまわろうというわけだ
ヘボい仕事をしていたら体に教えてやらんとな
そんなヤツがオレに教えてもらったとか言うなんて我慢できん
「なんだこれはっ!!!」
「ひぃっ」
「この程度満足してるんじゃない、ここの丸みはもっと柔らかく、こっちは鋭くする余地が残ってるじゃねえか! お前、こんな雑な仕事を師匠に見られたら斧で真っ二つにされっぞ、返事は?」
「はいっ」
「声が小せえぇっ!」
「はいっっ!!!」
作業場の一つを覗くと、そこは戦場だった
いい感じになってるようだな
オレの教育が行き届いているようだ
どうもドノッポイの職人達は平和な街でだいぶ鈍臭くなっちまったようだ
技術というのはやらんと伸びないし、それは机の上でうなったり、椅子に座って考え込んで高まるものじゃない
最初はケツを叩かれてでも作りまくるしかない
その中で自ずと次を見つけ出すもんだ
だからオレは最初ちゃちな作品を持ってくる自称弟子たちに怒鳴ったし、蹴飛ばした
中にはそこそこのものもあったかもしれないが、そんなんで満足するようじゃあ職人じゃない
そいつはただの機械と一緒だ
まぁ、あまりに厳しくしすぎたせいか、もの凄い殺伐とした職場になっちまったが、このペースなら数年後にはかなりの腕前になっているだろう
あるかどうかはわからんが、次に会う時があれば楽しみだ
とりあえず怒鳴り役をしていたドワーフを蹴っ飛ばして、お前も口動かすだけじゃなくて、手を動かせと注意しておいた
全く、後続の指導に熱くなるのはいいが、己の技の研鑽を止める言い訳にはならんというのに
それと弟子連中には禁酒を言い渡してある
なんでも、夜は酒を飲んで騒ぐのがドワーフの習慣らしいが、知ったことか
そんな暇があるならば、修行をしろ
ムチばかりも良くないので、イグニファスの神殿にオレが作った<品質10><レア度5>の斧をブッ刺して、これより出来のいいもんができたら飲んで良いと許可してある
<レア度4>の素材を使えるのは、現在スティグマとガーラントだけらしいが、その気でやればそのうちできるだろう
一応石砲の作り方も教えてあるから、頑張って高ランクの魔物を狩りまくって腕を磨いてくれ
弟子たちの工房を巡り終わる頃には、だいぶいい時間が経っていた
しかし、他人の作品や作業を見ることも良い勉強だ
いくらスキルの補正があるとは言え、オレはそれだけに甘えるつもりはない
生産はここを離れても、いくらでもできる
最後はやっぱりここにも挨拶しとくか
やって来たのはイグニファスの神殿
オレにまだまだ隠していることはあるみたいだが、それでも有用な情報をいっぱいもらったからな
ついでに、なんか追加でくれるかもしれんし
「ほう、御主が訪ねてくるなんてめずらしいのう」
「別に大したことじゃねえよ。明日、街を出る」
「そうか」
「なんだよそれだけかよ、なんか情報とか餞別とかくれねえのか?」
「ふんっ、意外じゃのう、施しなんかいらんと言いそうなものを」
表情は分からないが、ニヤニヤとオレを小馬鹿にしたように言う
「オレは、もらえるものはもらえる主義だ」
なのできっぱりと言い放つ
いちいち遠慮してたらいいものなんて一生できない
ドラゴンと違って人間は命が短いんだ
「がっはっは、そうかそうか、まぁ御主には世話になったからのう、別れの手向けに一つ忠告をしてやろう『旧神』と『悪魔』には気をつけろ、御主ならいずれたどり着くやもしれんからな」
「なんだよ、それ」
火竜はそれ以上答える気はないらしい
スティグマを見ると、奴も知らないらしい
悪魔はなんとなくわかるが、『旧神』ってなんだ
もっと具体的に話せよ
まるでゲームのイベントじゃねえか
って、そういやここ一応ゲームの世界なんだよな
くそっ、まぁいずれたどり着くとか言ってたから、先に進めばわかることだろう
オレは早々に疑問を棚上げすることにした
そして、そのまま神殿を後にし、暗い夜道を歩きガーラントの家へと戻った
「ししょー、大変でしっ」
ドアを開けた瞬間、リーフが突っ込んできた




