Ep63 勝利の後の美酒
事の顛末を話したオレはなぜか多くの住民から睨まれていた
どうしたというんだろうか?
オレは早く帰って、鍛冶の続きをしたいといいうのに
「まぁ、皆ヒロに言いたいことがあるだろうが、まずは街の危機を脱したことを喜ぼうじゃないか」
ガーラントが大きな声でそう宣言する
正直言いたいことがあるのはオレの方なんだが、どうやら開放してくれそうなので何も言わず黙っていることにした
住民たちはさっきとは打って変わって晴れ晴れとした顔をしていた
ガーラントの横に立っていたスティグマに至っては涙を流していやがる
本当にオッサンの嬉し泣きなんて、誰得だよ
その後、ガーラントにイグニファスの神殿へと行くようにと言われた
最初は駄々をこねたんだが、よく考えてみればオレは街を救ったんだ
何かしらの褒美を期待してもいだろう
そういうのであれば、出向くのも悪くない
「ヒロ、今回はいろいろと助かったのじゃ」
「別に大したことはしてねえよ、それより、オレはお前が認めるほどの男になったか」
「そうじゃな、少し位なら認めてやっても良いかのう」
「そうか、じゃあ」
そういって、オレは火竜に近づく
ベリッ
「ぬをぉっ、いきなり何をするんじゃ」
「何って、鱗を貰おうと」
「おいおいヒロ、火竜様に何してんだよ」
「いやだって、前にオレが男として認められるくらいの人物になったら鱗をくれるって言ってたからな」
にしても、全く剥がれる気配がしない
流石はドラゴンの鱗だな
「ええい、馬鹿者!」
剥がそうと色々やってたらイグニファスに怒鳴られた
「なんだよ、くれるって言ったじゃねえか、男に二言はねえだろ」
やっぱ、バールみたいなものを用意しなきゃダメか
「確かに、あの時はそんなことを言ったが、竜の鱗は魚の鱗と違ってそんなに簡単に剥がせる代物ではないわっ」
「じゃあ、どうすれば取れるんだ?」
「ふむ、まさか御主がこんなに早く活躍するとは思ってなかったからのう。そもそもドラゴンの鱗はさっきも言ったとおりで簡単には取れん。というより生え変わる代物ではないのじゃ」
なんだと、じゃあオレは何のために戦ったと言うんだ
オレはがっくりと崩れ落ちる
「はぁ、仕方ないのう、鱗はやれんが、これをくれてやる。それに、儂の加護もやろう、それがあれば儂の知る者達と出会った時に役に立つじゃろう」
そういって、一本の瓶がオレの下へ落ちてくる
その中には赤い砂の様なものが詰められていた
「なんだこれは?」
「御主は鑑定ができるじゃろ、自分で確かめてみるがよい」
そういやそうだったな
じゃあ改めて
火竜イグニファスの竜粉末(薬品)
品質:??? レア度:???
もうコイツは凄いよ
でも、今の実力じゃあ使えないね
よしイグニファス、ちゃんと説明してもらおうか
鑑定が仕事をしてくれない
「なんじゃその目は」
「鑑定しても中身がお前の龍粉末としかわからん」
そう言って、オレはイグニファスに鑑定の結果を話した
「がっはっは、そうきたかのう、なら御主が成長するのを待つことじゃな。それ以上儂に言えることはない」
くそっ、どういうことだ
だがこの石頭火竜のことだ、これ以上は何があっても教えてくれないだろう
仕方がないので、龍粉末はストレージに放り込んでおいた
そういえば、加護がどうとか言ってたな
オレは改めてステータスを見る
1J:墓荒らしLv16
2J:生産狂人Lv19
3J:鬼薬師Lv3
スキル:採取Lv20※、生産初級Lv19、一流斧術Lv10、石師Lv18、鑑定Lv26、解体Lv23、調合Lv20※、上級製薬Lv5、識別Lv20、木師Lv28、切断改Lv20、研磨改Lv27、接着改Lv11、分離LvMAX、精密作業Lv14、肉体超強化Lv10、計測量Lv3、穿孔Lv20※、光球LvMAX、砲術Lv14、拠点把握LvMAX、ダウジングLv16、超集中LvMAX、アラームLv13、裁縫Lv12、鍛冶Lv8
EXスキル:メディーナ式薬学
木の精霊の加護
???
イグニファスの加護
スキルポイント:3
「おい、なんかお前の加護と一緒に変なのが付いてるぞ」
「なんじゃと? おかしいのう、儂は儂の加護しか与えておらんぞ」
まぁ、別に変なところも感じられないし、まあいいか
そんなことよりも、鍛冶の続きだ
「じゃあオレは鍛冶の続きをしに戻るから、後はガーラントのおっさんと適当にやってくれ」
そう言ってオレはイグニファスの神殿をあとにした
そういえば気付いたら鬼薬師のレベルが3になっていたが、3J自体よくわかんないので、スキルポイントが増えてラッキーとだけ思っておくことにした
「火竜様、すみません」
ヒロが神殿から出て行ったあと、ガーラントがヒロの非礼を詫びる
「よいよい、あやつはああいうやつなんじゃろう」
ヒロの態度に不機嫌になったかと思っていた火竜イグニファスは楽しそうに笑った
「今回は御主にも迷惑をかけたのう」
「いえ、もったいない御言葉です」
「がっはっは、そんなに恐縮する必要もあるまい、御主と儂の仲ではないか、それに御主らが居らねばこうやって楽しく話すこともなかったからのう。感謝しておるぞガーラント」
そう言って大火竜イグニファスはガーラントを優しい眼差しで見つめる
実際イグニファスは静かにこの場所を見守りながら朽ち果てるつもりであった
しかし、十年前にその静寂はガーラント達によって打ち破られた
最初こそ知人の頼みで、渋々受け入れたが、彼らと話すうちにいつしかそれは楽しい日々へと変貌していった
長い時を生き、多くの戦乱を超えた彼が欲しかったのはこんななんでもない日常だったのかもしれない
オークの軍団が来ていることを知った時、本気で命を賭して彼らを守ろうと思った
再び彼らとこうして楽しく話せる日々が来るとは
不器用で意地っ張りな火竜は口には出せずとも、心の底から嬉しく思っていた
これもあの小癪な人間の小僧のおかげだとはな
まぁ、少しぐらいは感謝してやるかのう
「ヒロ、本当に行かないのか?」
「ああ、オレに気にする必用はない、好きにやってくれ」
ヒロは作業の手を止める気はないらしい
オーク軍団の撤退した次の日
ドノッポイの街では祝勝会が開催されることになった
場所はもちろん、火竜イグニファスの神殿
既に会場ではお祭り騒ぎが始まっていた
今回の勝利の立役者というか、ほぼ全てをやったヒロは鍛冶をするために欠席を申し出た
曰く、そんな暇があるならオレは鍛冶をするとのことらしい
スティグマとガーラントは何とかして参加させようとしたが、暖簾に腕押し状態であった
生産バカのヒロがこうなったらテコでも動かないだろう
二人より長い付き合いのカバ太とリーフは早々に諦めていた
しかし、そこに現れたのはだいぶ際どい衣装で着飾ったメララ
どうやら、シエータに頼まれたらしい
カバ太とヒロお兄ちゃんと行くとぐずる可愛い娘の願いだ、母親として断るわけがない
リーフは相変わらず数に入っていなかった
「ヒロくん、お祭り行かないの?」
「だから行かないと言ってるだろう」
そう、と言ってメララはヒロの耳元に口を近づけてそっと呟く
「もったいないわねえ、お祭りとなれば珍しい食べ物や衣装、それに火竜様の神殿でやるなら、なかなか見られない道具なんかも出てくるかもしれないのに」
その言葉を聞いた瞬間、ヒロは手を止め扉に向かって歩き出す
「おい、お前たち何をボサっとしてるんだ、早く行くぞ」
そう言って外へと出ていってしまった
「うーうー」
「あの師匠を動かすなんて、凄いでし、リーにもその技をぜひ教えて欲しいでし」
ヒロの仲間たちはメララの手腕に驚いていた
「おいおい、一体何をやったんだ?」
「うふふ、秘密ですわ」
そう言って彼女はいたずらっぽく笑った
イグニファスの神殿でのお祭りは夜を通し続けられ、朝になる頃には皆疲れと酔いでぶっ倒れていた
「あらあら」
「まったく、際限を知らん連中だ」
そんな様子をメララとイグニファスが並んで眺めている
メララは膝の上で幸せそうに眠るシエータに毛布をかけ直してやる
「でも、たまにはこんなのもいいんじゃないかしら」
「まぁ、そうだのう」
「あら、今回は随分と素直なんですわね」
「ふんっ、儂にだってそういうことくらいあるわい」
「あらあら」
そう言って、メララは横で大の字になって眠る夫の髪をなでた
読んでいただきありがとうございます




