Ep60 結果的に勝てたんだからいいじゃんか(前編)
「ヒロ、どういうことか説明してもらおうか」
無事オーク達を退けたというのに、何故かオレはみんなに囲まれていた
というか詰め寄られている
誰も死なずに、守城兵器や土塁なんかも揃えることができたというのに何が不満なんだろうか
まだ満足に鍛冶のスキルレベルが上げれていないんだから、早く作業に戻りたいんだけど
と言っても事態がこじれるだけなので、仕方なくオレはここまでの経緯を話すことにした
話はイグニファスの神殿で何とかあの特攻火竜を説得させた後まで戻る
ガーラントたちが急いで人を集めている中、オレ達も実はこっそり街の方へと向かっていた
「師匠いったいどうするんでしか?」
「ん? もちろん戦うつもりだぞ」
「でも、3000でしよ。それにすっごい強い魔物もいるんでしよね」
「らしいな」
「何でそんなに落ち着いていられるんでしか? このままじゃリー達全滅でし」
「まぁ、そりゃ普通に戦ったらそうだろうな」
「もしかして何かいい作戦があるんでしか? あの石砲ってやつでしか? 確かにあの威力ならオーク達も一網打尽かもしれないでしね」
「なんだ、じゃあお前がバーストツリー何本も狩ってきてくれんのか?」
「うっ」
今までやかましかったのが嘘だったかのようにリーフが押し黙る
最初オレはその手を考えなかったわけではない
オレが現在持っているモノの中で最強の威力を誇るのが、炸裂ドングリを装填した石砲だろう
今なら金属も加工してさらに強化が可能だとも思う
だが、それだけじゃ多分勝てない
「仮にリーフがこの辺りのバーストツリー全部討伐してきても多分負けるだろうな」
「なんででしか、あれだけの破壊力と師匠の技術があれば」
「無理だな、相手が悪い」
石砲、まぁいわゆる大砲と呼ばれる武器は非常に強力だ
格上を倒せるだけの潜在力を秘めている
実際レッサーデビルトレントと戦ったときも臼砲がなければ勝てなかっただろう
だがあの時は、たまたま条件が揃っていたからに過ぎない
大砲という武器の欠点は、狙って当てないといけないということだ
それに重くて普通に運用するのは不可能と言える
オレにはストレージというものがあるから持ち運べるが、どうやらこの能力はプレーヤーしか持たないらしい
何が言いたいかっていうと、今回のオークは指揮官がいる軍隊だということ
オークジェネラルというのがどれくらい賢いのかはわからないが、3000もの魔物を率いることが出来るんだ、馬鹿ではないだろう
まぁ、馬鹿だったら助かるんだが、命がかかっている以上そんな楽観視はできない
「単純な話、どう攻めてくるかわからない」
「トンネルからじゃないんでしか?」
「明らかに守ってるのわかってるところにわざわざ攻めてきてくれるのか」
そんなことならどれほど楽なことか
周囲の崖は簡単に越えられるようにはなっていない、とガーラントが話していた
そりゃそうだ、じゃなきゃ魔物が迷い込み放題だからな
イグニファスも何らかの工夫をしているんだろう
「戦力を分散して3箇所あるトンネルを全部一気に攻められたら、守りきれない」
「トンネルを1個に絞るんじゃダメなんでしか?」
なかなか鋭い意見を言うじゃないか
でもな、そのまま入口を固められたら何もできない
こっちはオレも含めて戦争の素人ばっかりだ
何日もかけてゆっくり攻められたら集中できない
その間にどっかに穴をあけるなり、乗り越えるなりされたらおしまいだ
「石砲はな、相手が攻めてくるか、動かないという条件じゃないと全く役に立たないんだよ」
イグニファスを除けば<ランク6>のオークジェネラルと立ち回れる奴はいないだろう
あいつなら喜んで突っ込んでいきそうだが、残念ながらここにはいない
まさか石砲の前にわざわざ出てきてくれるわけ無いだろうし、多分一発じゃあ倒せない
警戒されちまえば、なおさら絡め手で来るだろう
「というか、なんでお前はそもそもここで戦う前提でしか考えないんだ」
「違うんでしか? でもさすがに外に出て戦うのは自殺行為じゃないんでしか?」
はぁ、とオレはため息を付く
何も正面から戦えばいいってもんじゃない
目的はこの村にオーク達を来させなければいいんだから
こんなことを言っても、あいつは納得しないだろうが
「さて、ここだったな。リーフ、中に人がいないか調べてきてくれ」
「師匠ここって、普通に頼んで入れてもらいばいいんじゃないでしか」
「いいから、黙って言うとおりにしとけ」
「むぅ、わかったでし」
そう言ってリーフは一件の家の周りを飛んで、人の有無をチェックしに行った
「誰もいないみたいでし」
どうやら、ガーラント達の呼びかけに応じて出て行ったみたいだな
「よし、よくやった。それじゃあちょっと失礼させてもらおうか」
「なんか師匠が悪人みたいでし。でも、ここ鍵がかかってるでしよ」
「何言ってるんだ、この程度の鍵オレにかかればないも同然だ」
この村の鍵の構造は既にガーラントの家でチェック済みだ
あの時は興味だけで調べていたんだが、こんな形で役に立つとはな
日頃の行いがいい証拠だ
鍵穴に針金を突っ込んで、カチャカチャとやること10秒
カチンと音が鳴って鍵が開く
静かに中に侵入し、目的の場所まで行く
戸棚にかけられた鍵も外し、例のモノを拝借する
それからオレは大急ぎで作業を始めた
そこそこ時間はかかったが、目的のモノを作ることができた
後は、知っての通りガーラント達が集まっていた広場に登場したってわけだ
まさか撤退みたいな話になってる時は焦ったけどな
戦う気になってくれないと、オレが困る
じゃなきゃタダで材料も助手も手に入らなかったからな
話がそれたな
というか、だんだん周りの連中のから殺気みたいなのが溢れてきてるんだが
続き聞きたいんでしょ
全く落ち着いて聞けないのか
ドワーフは短気だな
それで、その後リーフとカバ太が何をやってたかってことだろ
あいつらはな、外に出かけてもらってたんだよ




