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PKになった俺は孤立するしかなかった  作者: 北神悠
第三章 赤き老兵と豚の将軍
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Ep57 戦いは撤退戦?

 大火竜イグニファスの神殿を飛び出していったガーラントとスティグマは、大急ぎで街の住人たちに声をかけていった


 緊急の狼煙が上がった事と有力者がイグニファスの神殿に集まっていた事が功を奏し、多くの住人たちはそれぞれの家に戻っていた

 その為、何とか日が暮れるまでには大半の住民を、街の中心にある広場に集めることができた


 ここにいないのは、病人や怪我人、幼子に周辺の監視をしている者位である

 ざっと千人以上の住人たちが呼びかけに応じてくれた


 その中心でガーラント達は質問攻めにあっていた


「ガーラントさんどうしたんですか」

「一体なにがあったんだ」

「火竜様は?」


 多くの人たちは突然の集会に混乱していた

 ここまでに様々な情報が交錯しているため無理もない



 

 不安そうな顔の住民たちをなだめ、彼は少しだけ高くなっている壇上に登った

 住民たちを見回し、彼らに聞こえるように大きな声を出す


「全員、一回静かにしてくれ、まずは集まってくれたことに感謝する。そして、これから儂の話すことは全て真実だ」


 それからガーラントは、今回の件に関することを包み隠さず、全てを淡々と語った


 オークの軍3000がこの街を目指していること

 その中には、強力なオークジェネラルまでもがいること

 そして火竜様が戦いに行けるお体ではないということ


「儂等は選択を迫られているのだ、何かいい意見があればぜひ申してくれ」


 ガーラントはそう言って話を終えた

 あまりにも唐突な話に、誰ひとりとして声を出せずにいた



 しばらくすると、各所でざわざわと話がなされるようになった

 しかし、何らかの提案をするに至るまではいかなかった


 

 やはり、撤退か

 幸い火竜様の情報によれば、オーク達がドノッポイの街に到着するまであと二日は最低でもかかるらしい


 

 ガーラントの中では、一応最悪の場合の想定はしていた

 今、我々に取れる手段は少ない


 総力戦か撤退か


 火竜様に戦わせて、自分達だけのうのうと生き残るという選択肢はガーラントにはない

 そんなことをするくらいなら、一人ででもオーク達に突っ込むつもりだ

 それくらいの恩が火竜様にはある


 あの日、ドワーフの王国から脱出したボロボロの自分達を快く迎え入れてくれた火竜様

 この十年間、メララの病気を除けば本当に素晴らしい日々だった

 赤子だったシエータマイエンジェルも今では随分と大きくなった


 いつの間にか、拳を握る力が強くなる


「おいガーラント、少しは落ち着け」


 そんな儂を心配して、スティグマが横から心配そうに声をかけてくれる

 スティグマとの付き合いは随分と長い


 元々ドワーフ王国の騎士の一人だった彼は、儂等が国を捨てると話したとき、自らも職を捨てついてきてくれた

 そして、慣れない鍛冶を独学で修行し、住民たちが魔物と戦えるように武器を作り始めた

 また先頭に立って街の警護にも顔を出してくれている


「ああ、すまない。なぁ、元騎士のお前としてはどう思う」


「撤退だな、もし戦うなら最低でも王国騎士団なら1500人はいないと話にならない」


 スティグマは難しい顔をして答える

 王国騎士団で副団長の一人まで上り詰めた彼が言うのであれば、この数字は最低ラインなんだろう


 ドノッポイの街でまともに戦えるのはかき集めて400

 それもあくまで一度でも戦闘経験がある者でだ

 実力は王国騎士団よりもはるかに劣る

 


「それしかないか」


 先ほどから、ざわめきが大きくなるばかりで、一向に良いアイデアは出てこない

 

 儂は街の代表として、街を捨てることを決心した


 まだオーク共がここに来るまでに時間があるとはいえ、撤退するならば早く出発しなければならない

 なんせ、こちらには老人や女子供もいるのだ

 距離を稼がなければ捕捉されて襲われかねない

 愛着のあるこの街を捨てるのは心苦しいが、儂等が生き残るにはこれしかあるまい



「皆の者、聞いて欲しい! どうやらいいアイデアも出ないようだ、あまり時間もないのでドノッポイの街の代表としての決定を話す」


 儂がそう切り出すと、今まで話していた者たちが互いに注意し合い静かになる


「既に現状は話したとおりだ、正直勝目のある戦いではない。しかし、多大な恩がある火竜様を戦わせて生き残るということも出来ない。だから、本当に申し訳ないが、儂等はこの住み慣れた場所から避難しようと思う」


 多くの者たちが息を呑む音が聞こえる

 ただでさえ儂等は国を捨てた者たちだ

 また出ていかなければならないというのは、どれほどに辛いことか

 

 しかし、これしか方法がないのだ

 こんな情けない男だが代表をやっていて申し訳ない

 力不足で申し訳ない

 また逃げることしかできずに申し訳ない



「お、俺は戦う! たとえ一人でも、この街がなくなるのは嫌だ」


「俺もだ!」


「私も。もう故郷を捨てるのは嫌よ」



 それは誰からともなくだった

 何人かの者たちが戦うと言い出したのである



「ま、まて、そんなことをしても……」


「よせ、ガーラント、ああいう連中は言っても無駄だ。目を見ればわかる」


 慌てて制止しようとするガーラントをスティグマは止める

 彼が昔騎士をしていた時も同じようなことが何度もあった

 理屈ではわかっていても、気持ちが納得できないということだ


 スティグマ自身も、そういった気持ちでガーラントにくっついてきたのだ

 彼らの気持ちは痛いほどわかる

 ガーラントの補佐的立場で、皆を守らなければならない立場でなければ、自分もきっと残ると言っていただろう


「それに、ここで時間をかけていても仕方がない、とにかく避難の準備を進めることが先だろ」


「ああ、そうだったな。戦うという者たちは止めない、避難する者たちは日が昇るまでに身支度を整えておいてくれ」



 ガーラントの言葉を聞いて、皆がそれぞれの行動に移ろうとしたそんな時



「おいおい、待ってくれよ、何オレ抜きで話を進めてんだ。あーくそ、少し時間がかかっちまったみたいだな。まぁいい、ガーラント戦うぞ」


 羽のついた少女と謎の白い生命体を引き連れた少年が帰ってきた


「なっ、ヒロ何をいきなり、お前先に避難したんじゃないのか?」


 イグニファスの神殿で別れてからヒロの姿が見えないことにガーラントは気付いていた

 妻の恩人である彼だが、別にこの村の関係者ではない

 本当はもう少しいろいろと話してみたかったが、状況が状況だ

 早々に村から去っていてもそれについてガーラントが思うことはなかった

 

 しかし、彼は帰ってきた

 その顔は自信に満ち溢れている


「勝てる手は考えた、あとはお前ら次第だ」


 そう言って彼は笑った



うーん、余談が挟みにくい展開になってきました

楽しみにしている方は申し訳ありません

しばらくそこそこ真面目な戦闘が続くと思うので、余談は省きます


読んでいただきありがとうございます

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