↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PKになった俺は孤立するしかなかった  作者: 北神悠
第三章 赤き老兵と豚の将軍
59/113

Ep56 誰が為に彼は戦う

 グルルとイグニファスが低い声で唸る


「師匠、あのドラゴンさんめっちゃ怒ってるでしよ」


 リーフが怯えるようにオレの腕に絡みついてくる


「イグニファス、お前ここに戻ってくる気なんて無いだろ」


 大火竜イグニファスを指さしオレはそう告げる


「おい、ヒロどういうことだよ」



 ああ、とオレはガーラントたちに自分の考えを説明する


 そもそも、最初に疑問に思ったのが遠距離を探査出来るだけの実力があるにもかかわらず、ドワーフ連中よりも発見が遅かったこと

 まぁこれだけじゃ決定的なことではない

 この分野はイグニファスにとって不得意だったってこともあるかもしれないしな


 だが決定的なのは、わざわざ住民に危機を告げてから出て行くってことだ

 10年も一緒に住んでるんだ、住民の実力は知ってるだろ

 なら、最初から何も言わずに飛んでいって討伐してくればいい


 いくらオークジェネラルが強いといっても、イグニファスから見れば大した敵じゃないはずだ

 3000のオークも所詮はランク3程度

 結果は火を見るより明らかだろう


 なら、なんでこんな回りくどいことをしてるのか

 お前に次がないからだろ

 いや、もしかしたら生き残れるかもしれないが、良い状況とは言えないはずだ



「イグニファス、黙って死にに行くのは10年も付き合った連中にする挨拶にしては、あんまりにも薄情なんじゃねえか」


「……ぐっ、仮にそうだとして、それでは他にどんな手があるというのじゃ」


「さあな、だがお前がオークに突っ込むより良いアイデアが浮かぶかもしれないぜ。なぁ、ガーラント、スティグマッ!」


「ああ、もちろん。火竜様は守り神様だ、だからと言って全てを背負わせるわけにはいかない」


「当たり前だ師匠。火竜様は放浪する俺達に、住む場所を与えてくれたんだからな」


 二人ともオレの呼びかけに元気良く応じてくれる


「まずは街の有力者たちを再び集めねばならないな、職人連中はスティグマ任せていいか? 儂は他の者達にも協力を頼んでくる」


「わかった、こっちは任せろ」


 そう言って、二人は神殿を飛び出していった





「いい住民を持ったじゃねえか」


「うるさい、何をどうするか知らんが、儂が行かぬとは言ってないぞ」


 そう言って強烈な威圧感を醸し出す

 くそっ、オレは住人じゃないから容赦しないってか

 身内贔屓にも程があるぞ


「やめなさい」


 どうするか迷っていると、聞いたことのある女性の声が響いた

 その瞬間、さっきまでのが嘘のようにイグニファスの威圧が霧散した


「メララか、邪魔するんじゃない」


 イグニファスの視線を追うと、そこにはガーラントの妻メララがいつもの笑みを浮かべ立っていた


「せっかくあの人が頑張ろうとしてるんですもの、妻として夫を支えるのは当然のことでしょう」


「儂に楯突くというのか」


「あら、そんなつもりはないのだけども。ただちょっと待って欲しいなって思ってるだけよ」


 いつも通りただ微笑んでいるだけのはずのメララ

 しかし、その目には絶対に考えを曲げる気はないという強い思いが込められていた


「ちっ、どいつもこいつも。わかったわい、少しだけ待つとしようかの」


「あらあら、物分りがよくて助かりますわ」


「ふんっ」


 イグニファスは不機嫌そうに鼻を鳴らすと目を閉じてしまった


「さて、ヒロくんは行かなくていいのかな?」


「いや、メララ助かった。カバ太、リーフ行くぞ」


「うー?」

「どこに行くんでしか」


「それは行ってからのお楽しみだ」



 オレにはオレのやり方で準備をさせてもらうぞ


 こんなところで貴重な素材をオーク共にやるわけにはいかないからな

 全く早まりやがって、お前の肝や骨がどんだけの価値があると思ってんだ、勝手に死にに行こうとするんじゃねえよ


 にしても<ランク10>の大火竜イグニファスを黙らせるなんて、ただのエルフじゃねえな

 こないだまで病人だったとは思えない程、先程の彼女の存在感は凄まじかった

 まぁ、考えてもわからんことは仕方がないか


 それよりも、オレにはやることがある

 何とかなったら鱗の一枚くらいは絶対にもらってやろう

 きっと相当なものに違いない


 なんだかんだと言いながらも、今日も平常運転なヒロであった








 ヒロたちが出て行った後


「ふふっ、あの子は面白いですね」


「ほう、随分高く買ってるのう。だが、今回はどうしようもなかろう。所詮はただの人間に過ぎない」


 目を閉じながらも、イグニファスは毒づく


「……あんまり安く見られると困るんだけどなー」


「なっ、いつの間に」


 突然割り込んできた声に、イグニファスは不快そうな声を出す


「わかっておるわ、彼らの答えを聞くまで動くつもりはない」


「それなら構わないけどねー、でもあんまりつまんないことすると怒るよー」


「あらあら、あまり物騒なことはやめてくださいね。それにしても、ヒロくんのこと随分と気に入ってるんですね」


「あははー、あいつは面白いやつだからなー、今回もきっと何かをやってくれるはずさー」


「しかし早すぎぬか、それは誤れば数少ない鎖が消えるぞ」


「あははっ、勘違いしないで欲しいんだけど、そもそも私はあんた達と違って別にこの世界にそんなに興味はないからねー」


「貴様っ」


「落ち着いてください、火竜様。つまり少しは興味があるんでしょう?」


 どうかなーと曖昧な答えを残して、彼女は二人の前から姿を消した


「奴らは相変わらずじゃな」


「そうですね、でも私は助けてもらっちゃいましたから。それに、私もヒロくんには期待してるんですよ」


「なんじゃ、助けられて情でも湧いたか」


「あらあら、体を張って戦いに行こうとされた方の発言とは思えませんね」


「うるさいわ」


「ふふふ」

読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。