Ep54 観測所
斧の勝負をしてから数日、ガーラントの工房は騒がしくなった
まず、店主であるガーラントが鍛冶屋としての営業を再開した
今まではメララのこともあり休業していたのだが、彼女の体調も戻り心配事もなくなったからだ
むしろ「おとーさん、仕事しなきゃダメだよ」とシエータに怒られていた
オレは相変わらず居候している
昨日やっとスキルポイントが貯まったので鍛冶を取得した
おかげで現在は絶賛鍛冶スキルの育成中である
もちろん弟子のリーフもオレの横でハンマーを振っている
なんだかんだ文句を言いながらも、挫けず修練してる
たまに口を半開きで「うへへでしー」とか言ってるぐらいだ、だんだんもの作りの世界の真髄に近づいているのかもしれない
うんきっとそうだ
さらに、自称オレの弟子のスティグマ
朝飯以外は、ガーラントの家でいつの間にか飯まで食べている
仕事はどうした、街一番の武器屋と聞いたら、
「師匠の技を教えてもらえるのなら、店なんて休業だ」だって
ガチムチのむさいオッサンに言われても、キモいだけだ
いいから仕事しとけよ
これで常に4人は工房に詰めていることになる
本来2、3人で作業することを想定していた工房はかなり窮屈だ
その上、スティグマの弟子やら、他の鍛冶師やらが入れ替わり立ち替わり見学に来やがる
こんなんなら、外に出るんじゃなかった
あの火竜のジジイ余計なことを言いやがって、文句の一つも言いたいがあそこまで行くのも時間の無駄なので、スキルの超集中を使って全てを無視してやっている
初めてこのスキルが役に立つと思った
「ガーラントっさん、大変、だ!」
それは、ちょうど全員で昼飯を食べている時だった
息も絶え絶えに、若いドワーフが駆け込んできた
「ん、フェリドじゃないか、そんなに慌ててどうしたんだ。まずは水でも飲んで、落ち着け、ほれっ」
ガーラントはコップに水を入れて、フェリドと呼ばれたドワーフに渡してやる
「はぁはぁ、んくっ、はぁ、ありがと、うござい,ます」
「それで、何が大変なんだ、確か今日は北の山の見張りじゃなかったか」
「はいっ、そうなんですっ、そ、それが、北の山の観測所から、緊急を告げる狼煙が上がりまして、それも3本」
「なにっ」
フェリドの話を聞いたガーラントが急に険しい顔をする
「3本だとっ、そいつはマジなのか……」
スティグマの顔も驚きに引き攣る
「おい、一体どうしたんだよ、訳分かんねえぞ」
ガーラントがフェリドと話し込んでしまったため、オレはスティグマに疑問をぶつけた
「おお、師匠はこの街のもんじゃねえからな」
そう言って、スティグマが説明してくれた
ドノッポイの街は周囲を山に囲まれ基本的には安全なんだが、それでも何があるかわからない為、常に周囲を監視しているらしい
しかし、周囲の山だけでは遠くまで監視することができないので、見晴らしの良い山の上に監視所を建てて高域を監視できるように工夫しているそうだ
オッサンがシエータを発見できたのも、その監視所の監視員がシエータの姿を一瞬見たからであったと前に聞いたきがする
「そんで、街と監視所はかなり距離があるから、必要なことは狼煙で連絡を取り合うんだ」
「なる程な、で緊急が3本は相当にやばいのか」
「ああ、緊急でも1本は大したことない。せいぜい怪我人が出たとか、強い魔物の個体が見つかったとかな。だが3本はヤバい、街の存亡を左右するほどのことが起きたってことだからな」
「2本だったとか、見間違いの可能性はないのか」
「間違いを防ぐために2本の狼煙はない、そして3本は緊急時以外に使ったら死刑だ」
スティグマの話を聞いているうちに、ガーラントは確認をするためか、外に出ていってしまった
そこでオレはふと疑問が浮かんだ
「でもよ、なんでガーラントのオッサンにそんな話が来るんだ、普通町長とかじゃねえのか」
「なんだ師匠知らなかったのか、ガーラントはこの街の代表だぞ」
「んなバカな、じゃあなんで鍛冶屋なんかやってんだ」
「がっはっは、あれはあいつの趣味だ、それにこの街は外とも大して交流がないし、問題が起きれば火竜様もいるし、さっきのフェリドみたいに基本的に役割分担がしっかりしてるからな、代表としての仕事なんて殆どないんだよ」
「美人エルフと結婚して、街の代表とかどんだけだよ」
「それは俺も師匠と同意見だ。が、どうやら今はそんな状況でもないっぽいからな、師匠も来るか」
「どこにだよ」
「火竜様のとこだよ、最終的にあそこで皆集まって話すことになっている、もしかしたら師匠の力が必要になるかもしれないからな」
「まぁ、しかたない」
世話になってるし、何も知らないのでは、対処のしようもない
オレもスティグマに付いて、大火竜イグニファスの神殿へと向かうのだった
にしても、娘をマイエンジェルとか言ってるオッサンを代表にして大丈夫なのかこの街
と、変な方向で心配になるヒロであった
余談 メララのご飯
メララの体調もだいぶ良くなり、台所に立って料理をするようになった
ガーラントもよく作るらしいが、やはりそこは母親
普段はメララが料理担当だったそうだ
ガーラントのオッサンが照れながら
「あいつの料理はうまいぞ」
ってノロケてきやがった
かなりイラッときたが、料理は確かに美味しかった
ただ、メニューの8割が肉だった
美味しいんだが、正直胃がもたれる
森じゃあよく焼肉を食っていたが、果物や、キノコ、草も調理して食べていた
焼肉も、野生の生き物や魔物だったので脂少なめで、味付けも全くなかったし
しかし、メララのは味付けは濃い目で、油ガッツリで、しかも多い
最初はオッサンが作った男飯かと思った
こんだけ強烈な食べ物に対して、米がない
そりゃまぁ、異世界だから仕方ない
あるのは薄いナンみたいパン
これも油を使って焼いている
正直かなりしんどい
しかし、本人はもちろん、娘のシエータもペロリとたいらげていた
カバ太はなんでも食うので、問題なし
意外だったのがリーフだ
普通におかわりしてた
と言うか、エルフって菜食主義者じゃねえのかよ
森と共に生きてくれよ
あと、リーフ、お前木の精霊だろ
もうちょっとアイデンティティーを守ろうとしろよ
と言うか、本当は肉の精霊なんじゃないのか
そして驚きなのは、それでいて全員かなり細いということだ
なんだ、この世界のエルフや精霊は胃にブラックホールでも飼ってるのか
なんとかオレがこの家で生きていられるのは、ガーラントのおかげだ
ガーラントは見かけによらず、かなり淡白な料理を作る
肉もツミレとか、スープに少量使っている位で、かなりヘルシーな献立だ
後で、ガーラントからこっそり聞いたんだが、ガーラントもメララと結婚してから、食事だけはダメだったらしい
そこで、ありとあらゆる交渉を用いて、週に何度かは自分で料理を作るようにしたらしい
薄味好きで、健康的なドワーフっていうのもものすごい違和感だが、今回ばかりはオッサンに助けられた
だんだんとヒロがツッコミになってきた
おかしいなぁ
あらすじにツッコミ不在のグダグダとか最初に書いていたのに
余談に風香とかサナも出したいのに、中々いいネタが浮かびません
こういう話を見たいという要望があれば是非、伏線やストーリーに影響が出ない範囲で参考にさせていただきます
読んでいただきありがとうございます




