Ep52 ヒロ、街を歩く
創世3神
地の神アスドール
海の神シロン
空の神エリアリアス
この世界を創造した神が3つに分かれた存在で、それぞれが、陸、海、空を守護している
その後の神話は諸説あるらしいが、この3柱の神がこの世界の始祖であるということは共通しているそうだ
それじゃあ、オレが聞いたあの声はそんな偉い神様の声だったというのだろうか?
可能性としてはなくもないが、話が非現実的過ぎて想像もできないな
まぁ、そのうち何かわかるかもしれないだろ
それよりも、オレが気になっていたのは最後の言葉だ
オレの表示が黒いことにあいつは気づいていた
しかし、その割には友好的な対応だったな
イグニファスの言葉を信じるなら、この村の連中にはオレの表示にかかっている隠蔽は見破れないということだろう
現にガーラントの家族にはバレてない
外に出てみるか
買いたいものもあるし、情報も集めたい
ガーラントの家に戻ると、全員が朝食の準備をして待っていた
「ヒロお兄ちゃん、おはよう」
「うーっ」
「師匠遅いでしっ、お腹減ったでし」
「おかえりなさい、火竜様はどうだったかしら」
四者四様に言葉をかけてくる
とりあえず、リーフにはデコピンをしておいた
「少し、外に出てみようと思う」
朝食を食べ終え、全員の前で切り出す
「火竜様のお言葉か、必要なら案内するぞ」
ガーラントがそんなことを申し出てくれるが、オレは断った
いきなり酒場とかに連れて行かれても嫌だからな
ガーラントが飲んでるとこを見たことはないが、ドワーフはそういうイメージだ
酒を作るのには興味があるが、飲むのは論外だ
そんな時間あるんだったら、オレは物を作る
「あら、でもお金は持ってるのかしら」
ふと、メララがそんなことを聞く
「いや持ってねえぞ、でも考えがあるから心配無用だ」
まぁ、ゲーム時代から魔物を倒しても金を得られないシステムだった
普通に考えて、魔物も使わん金を持ってる意味がわからんからな
仮に何か買いに来たとしても、即行返り討ちだろ
カバ太とリーフも付いてくるかと聞いたら
「カバ太、今日も一緒に遊んで」
「うーっ」
「さぁ、オッサン今日もリーに鍛冶を教えるでし」
「お前はヒロに付いていかんのか」
「鍛冶はリーの方が先に上達するんでし」
と言う事らしい
メララはだいぶ体調が戻ったらしく、普通に家事を始めていた
オッサンは仕事しなくていいんだろうか
外に出たオレがまず向かったのが、服屋だ
別に服が欲しいわけじゃない
いや、予備には欲しいけど
それよりも何よりも糸だ
これがないと、まともに裁縫できないことに気がついた
一応ブラックスパーダーの糸が大量にあるんだが、何の加工もしないと毛糸みたいにゴワゴワだ
一回これで服と言うか、下着を編んでみたんだが、10分でチクチクに耐えられなかった
やっぱり何か下に履かないとダメみたいだ
破れたところとかは接着でくっつけていたんだが、やっぱり脆い
そういうわけで、糸は必需品というわけだ
針は魔物の骨で作ったんだが、チクチクしない糸は結局生成できなかった
それに糸の利用価値は服の修復だけではない
罠を作ったり、燻製作ったりと応用範囲が広い
それで服屋っぽい看板がかかっている店に入ったら、糸は扱ってなかった
その上、素材の買取もやっていないそうだ
事情を説明したら、雑貨屋を紹介してもらった
ここなら糸も買取もやっているらしい
そして、雑貨屋に行ったら――――――喧嘩になった
原因は、オレが売ったものだった
まぁ、正確に言うとその前に斧を卸していた奴が悪い
どう考えてもオレの作った斧の方が出来がいいのに、奴の斧の方が5倍も買取値が上だった
そこでオレは言っちまった
「あんなへっぽこな斧より、なんでオレの方が下に見られるんだよ」と
運が悪かったのは、そいつがまだ店内にいて、オレの声を聞いていたということだ
「おい、若造そりゃあどういうことだ」
ムキムキなドワーフのオッサンがドスの利いた声で詰め寄ってくる
もうそこからは、売り言葉に買い言葉だ
「お前の作った出来の悪い斧より、オレの方が優れてるって言ってんだ」
「あぁ、いい度胸だな、すぐに頭下げて詫び入れれば許してやったものを、表出やがれ」
「なんだ、喧嘩かよ、自分の作ったモノにプライドとかないのか」
「なんだと」
「だってそうだろ、お前が作った斧がオレよりも優れてないから、勝てそうな腕っ節に頼ってんじゃねえか」
「いい度胸だ、おい店主、ドワーフの俺様が人間の若造に負けるわけがねぇ、その買取キャンセルだ」
そう言ってオッサンは斧を店主から奪い返し、オレに突きつける
「いいだろう、若造、俺とお前の格の差を教えてやる」
「寝言は寝て言え」
「このクソガキがっ、おい店主お前が立会人だ、そこまで言ってもしお前が負けたらわかってんだろうな」
ヒートアップしたオッサンが詰め寄ってくる
しかし、オレも引く気はない
自分の作品を正当に評価されずに黙っていられるか
オレ達は、充分に斧が振れるように店の外へと出た
もちろんびくつく店主も一緒だ
完全に巻き込まれた形だが、こいつのせいでこんな争いになったんだ、責任くらいとってもらおう
店をぶっ壊さなかっただけ感謝してもらいたいくらいだ
そして、互いに各々の斧を担ぎ向かい合う
「勝負は簡単だ、俺とお前お互いに斧をぶつけて先にぶっ壊れたほうが負けだ」
「いいだろう」
既に周りには騒ぎを聞きつけた野次馬が集まりだしている
彼らはさすが地元民、オッサン寄りらしい
まぁ、オッサンの斧が金属に対して、オレの方が石斧だってこともあるのかもしれない
「おい、ヒロ何やってんだ」
そんな中、後ろからガーラントに声をかけられる
「何って、勝負だよ」
「お前なぁ、心配してきてみれば」
「おい、ガーラントっ! そのクソガキとどんな知り合いか知らんが邪魔するんじゃねぇ」
「よりによって、スティグマの親父とやりあうとは」
ガーラントはやれやれといった顔をする
「うるせえな、オレの作品を下に見やがったんだ、黙ってられるわけ無いだろ」
「スティグマはこの街だとトップの武器職人だぞ」
「だからどうした、やれば結果はわかる」
そう言って、ガーラントを後ろに下げる
ここまで来て引けるわけがない
お互いニヤリと笑って、互いに武器を構える
自分の作った武器に絶対の自信を持っている顔だ
雑貨屋のオヤジの合図に合わせて武器を振り下ろす
IF余談(という名のボツシーン)
メララが嫉妬深かったら
「さぁ、オッサン今日もリーに鍛冶を教えるでし」
「お前はヒロに付いていかんのか」
「鍛冶はリーの方が先に上達するんでし」
「あらあら、あなた人気者ねぇ」
部屋の温度を一気に下げる様な冷たい声が響く
「いやいやいや、そういうのじゃないから」
「そう、でもあの娘を裏切るようなことがあったらわかってるでしょうね」
「ひぃ、怖いでし」
そこには鬼がいたという(リーフ談)




