Ep49 ミュリ病
「できないだと……なんてことだ」
なんとかミュリーナ草を手に入れたガーラントに待っていたのは、あまりにも辛い現実であった
ドノッポイのベテラン薬師でさえ、ミュリーナ草から薬を作ることができなかったのである
作れる可能性があるのは1番近い場所でも、ドワーフ王国の首都バルカムだった
そこまではどんなに早く向かっても往復1週間はかかる
それに対して、ガーラントの妻はそこまで持つ見込みはない
「なら、オレが作ってやるよ」
「なっ、お主作れるというのか、ミュリ病の薬は手順が複雑な上、発症例が殆どない奇病なんだぞ」
「そうだな、オレもなんでかはわからんが、やり方はわかる」
突然のオレの申し出に動揺するガーラント
まぁ、気持ちは分からなくもない
出来過ぎている
でも、作れるなら作ってみたいと思うのが生産職だろう
流石に命がかかってるから、作ったことのあるベテランがいるなら出しゃばる気はなかった
今のオレは回復薬であれば8級まで作れる
基本的に防具があるからあまり薬を使うこともないが、こういうものは突然必要になるものだと割り切ってる
実際カバ太の例もあるし、材料はいくらでもそこら辺に転がっている
それに生産職として生産系スキルは伸ばしておくことに越したことはない
以前あいつにいきなり戦艦造れって言われたときは、泣きながら造船と関連するスキルを伸ばすはめになったし
薬師の家を借りてオレは薬を作る作業を始めた
なんせ、街の中でここが一番設備が整っている
まず、煮るところからだな
この間にステータスをいじってスキルを増やす
1J:墓荒らしLv15
2J:生産狂人Lv17
3J:鬼薬師Lv2
スキル:採取Lv20※、生産初級Lv17、一流斧術Lv9、石師Lv16、鑑定Lv25、解体Lv22、調合Lv20※、製薬Lv20※→上級製薬Lv1(NEW)、識別Lv18、木師Lv27、切断改Lv18、研磨改Lv25、接着改Lv9、分離LvMAX、精密作業Lv10、肉体超強化Lv8、計測Lv20※→計測量Lv1(NEW)、穿孔Lv20※、光球LvMAX、砲術Lv13、拠点把握LvMAX、ダウジングLv15、超集中LvMAX、アラームLv12、裁縫Lv11
EXスキル:メディーナ式薬学
木の精霊の加護
スキルポイント:1
製薬Lv20※→上級製薬Lv1(必要スキルポイント6)
<ヤバイお薬も作れるよ>
計測Lv20※→計測量Lv1(必要スキルポイント6)
<長さに加え重さも測るぜ>
今回作るミュリ病の薬は、回復薬で言うと7級クラス、レア度4といったところだ
つまり、今まで作ったことのない領域への挑戦である
レベル20で止まってるスキルが溜まってきたので、必要になるまでスキルポイントを貯めといてよかった
今は少しでもスキルの恩恵が欲しい
茹でたミュリーナ草を次の工程に移す
今まで一度も作ったことのない薬だが、知識としては既に知っている
ガーラントにミュリ病の話を聞いた時に手順が頭に流れ込んできた
確証はないが、きっとあのEXスキルが役に立っているのだろう
3Jも薬関係だしな
分量を間違えないように、配合し、再び攪拌する
もう一度加熱して、ゆっくりと温度が下がるのを待ち、変化の途中で急激に冷やす
どうやら、ここまでは上手くいっているようだ
後は、最後にさっと加熱して効果を安定させる
よしっ、完成だ
結局3時間くらいかかったが、材料の範囲内で成功させることができた
ミュリ病の特効薬(生薬)
品質:4 レア度:4
北の山の風土病であるミュリ病に高い効果を発揮する薬
成功の要因として、ランク3の調剤器具が使えたことがある
上位の薬を作るなら、いずれオレも高ランクの道具が必要になるだろう
まぁ、今はそれよりガーラントの奥さんだ
高熱に飯が食べれないなんて相当に辛いだろう
急いでオレはガーラントの家に向かう
入口に前でガーラントがそわそわしながら待っていた
足音でオレに気がつくと、心配そうに見つめてくる
オレは親指を上にあげ、笑顔で応えてやる
既に家の中には治療師が待機していて、薬を渡すとすぐに治療が始まった
ガーラントとシエータは母親エルフの部屋の前でじっと待っている
シエータも純エルフな為、感染を警戒して発病してから一回も母親と会っていないらしい
投薬を含め治療はさほど時間はかからないらしいのだが、病気の経過も含めて一晩は様子見らしい
オレたちは、ガーラント家の空部屋に泊めてもらうことになった
薬を完成させたので、オレに出来ることはなくなった
ただ、外に出ようにも隠蔽がばれると面倒なので、部屋の片隅で装備の修復と研究の続きをすることにした
ちなみにカバ太とリーフは、それぞれ用意されたベットと藁(の様な草)の上で既に寝ている
毎回家を建てているとは言え、基本的には野宿だったからな
ちゃんとした場所で寝るのはさぞ気持ちがいいのだろう
途中でリーフの寝言がうるさかったので、顔面に枕を乗せ黙らせ、オレも今日はいつもより早くベットに入った
余談
「ねぇ、戦艦作れる?」
「藪から棒にどうした突然」
「次のクエストが海戦なのよ」
「また凄いクエスト見つけてきたな」
「で、どーなのよ、作れるの作れないの」
「いや、お前いきなり戦艦は」
「なによ、作れないの、期待はずれね」
「作れねぇとは言ってないだろ」
「そう、で、いつ」
「どれくらいのが欲しいんだ」
「最強」
「また随分アバウトだな」
「わかりやすくていいでしょ」
「材料は採ってきてもらうぞ」
「もちろんよ、で、どこまで行ってくればいいの」
「とりあえず、ここの山に生えてる木を適当に伐採してきてくれ」
「あら、木で作るの?」
「金属だとうちの工房じゃ無理だ、設備からになると、一ヶ月はかかるぞ」
「それは面倒ね、で、木ならどれくらいでできるの」
「材料が揃ってから一週間だな」
「あたしの団からいくらでも人を貸すから、3日で何とかしなさい」
「また無茶を」
「何、出来ないの?」
「わかった、やってやるよ、とっとと材料採ってきやがれ」
「それじゃあ行ってくるわね」
くそっ、完全に乗せられた
オレの造船レベルまだ10も無いんだぞ
店は当分休業だな
造船鍛えつつ、wikiで効率的な方法探すか
つか、スキル造船だけでいいのか
とりあえずあの狩場で木の伐採なら当分は帰ってこないだろ
オレにもやることがあるっていうのに
2日後
「もう、集まったのか」
(1週間はかかると思ったんだが)
「ええ、寝ないで狩りまくったからね、いい戦いができたわ」
(この戦闘バカが余計なところで全力出しやがって)
「さて、じゃあ3日で頼んだわよ」
楽しみだわと言って、あいつは出て行ってしまった
とりあえずやれるだけやってみるか
3日後
「へぇ、中々いい出来じゃないの」
「できる限りはやった」
(ほとんどハリボテみたいなもんだが、大砲だけは自信作だ)
「そう、それじゃあ行ってくるわね」
「ちょっ、おまっ、操舵方法とか設備の説明とかいいのかよ」
「航海しながら何とかするわ」
そう言って、サナは仲間たちと出発してしまった
次の日
「どういうことよ、なんで大砲撃ったら転覆するのよ」
店の扉を蹴破りあいつが怒鳴り込んできた
(そりゃお前、小舟しか作ったことがない奴に無理やり3日で戦艦作らせたからだろ)
ということは口に出さず、どうせこうなることを予想して考えておいた言い訳を言う
「お前のところ、まともな航海のスキル持ちいたのか」
「そんなのいるわけないじゃない」
「じゃあ、どうやって操縦してたんだよ」
「気合と根性よ」
「それじゃあ沈むわっ! とりあえずまともに船操縦できるやつ見つけてこい、じゃなきゃいくらいい船作ってもまともに戦えん」
(これで諦めるだろ)
次の日
「見つけてきたわ」
「なんだそれ」
サナが縄でぐるぐる巻きにしたスケルトン10体ほど引きずってきた
「スケルトンよ、見てわかんないの?」
「そういうことが言いたいんじゃねぇよ、なんでスケルトンなんだよ」
「ああ、そういうことね、このスケルトンはねぇ、何を隠そう幽霊船で働いていたスケルトンよ」
「お前テイマーの素養あったっけ」
「拳で話し合ったわ」
(ああ、カチカチ言ってると思ったら、サナにビビってたんだな、死んでもこき使われるなんて可愛そうに)
「つまり、そいつらに船を動かさせると」
「そういうことよ、さぁ、早くもう一回船作りなさい」
「また材料から頼むぞ」
「どういうことよ、たくさんあげたじゃない」
「色々工夫したり、改造するのに全部使っちまったんだよ」
(本当は全部練習に消えたんだがな、おかげで恐ろしいスピードで造船スキルが成長した。……まだ足りないけど)
「わかったわ、ほらあんた達も行くわよ」
スケルトン達が一瞬ビクッとなり、サナの後ろをわらわら付いていく
(死人に鞭打つとはこういうことを言うんだな)
そして、その後もスピードが足りないので、クラーケン捕まえてきたり
レーダーがわりにサバキン捕まえてきたり
より遠くてキツい場所に生えてる木を採りに行かせたりしているうちに、やっとまともな船ができるようになった
しかし、結局サナは泳いでクリアしたらしい
なんで戦艦作らせた!?って聞いたら
ロマンよ、ってオレを巻き込むんじゃねぇよ
勝手に幽霊船でも奪ってやってくれ




