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PKになった俺は孤立するしかなかった  作者: 北神悠
第三章 赤き老兵と豚の将軍
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Ep47 まぁ、なんかバレんかったらしい

「マイエンジェルに手を出した輩に裁きをっ!!!」


 と叫びながら、斧を持ったオッサンが突っ込んで来る

 言ってることに反して、殺気がものすごい

 黙ってみすみすやられるわけにもいかないので、反撃しようと身を浮かす


 しかしお互いがぶつかり合う前に、黒い影が間に割り込んだ


「戦っちゃダメ、おとーさん。この人とカバ太は私のことを助けてくれたの」


「なんだとっ、だがしかし」


「ダメ、言うこと聞いてくれないと嫌いになっちゃうよ」


「うぐ、わかった、まずは話を聞こう」


 怒りをおさめたオッサンに、シエータはさっきの話をする




 話を聞き終えたオッサンは、さっきとは一転笑顔で感謝を述べた

 そして、驚きなことにシエータとこのオッサンは本当に父と娘らしい


「いやぁ、すまんかった。シエータマイエンジェルの命の恩人に知らぬとは言え、斬りかかってしまって」


「いや別に構わん、それだけこの娘が大切だってことだろ」


「そう言ってくれるとありがたい」


「しかしなんでそんなに大切な娘が危険な山の中を歩いてるんだ」


「あっ、おかーさん!」


 そこではっと思い出したようにシエータが叫ぶ


「ダメだ、いくらシエータマイエンジェルの頼みでもそれはいかん」


「やだやだ、あれがないとおかーさんが」


「いい加減にしなさい! 街の戦士でもダメだったんだ」


「やあああああああああ!」


 ついにシエータが泣き出してしまう


「すまない、この状態じゃあまともに話もできん、一先ず儂の街まで案内しよう」


 泣きじゃくって暴れるシエータをしっかり抱きながら、オッサンは来た道を戻り始めた


 オレ達も黙ってあとに続く



 リーフがぼそっと「仲間はずれにされてるでし」って1人落ち込んでいた





 オッサンについていくこと30分位だろうか

 山の中に大きなトンネルが見えてきた

 トンネルを抜けると、そこがオッサンとシエータが暮らすドノッポイの街らしい

 

 ドノッポイは周囲をぐるりと山々に囲まれ、木々が生い茂り天然の要塞となっている

 オッサンに聞いた話だと、入口はさっき通ってきたトンネルの他にもう2ヶ所同じような場所があるらしい

 人口は1000人程で、ほとんどがドワーフなんだそうだ



 畑を抜け、街の中心の方へと歩いていく

 そして、大きな煙突がある一軒の家の前でオッサンが止まった


「ここが儂の家だ、遠慮せず入ってくれ」


 オッサンがドアを開け入るように促す

 シエータは泣き疲れたのかいつの間にか眠ってしまっていた




 オレ達は4人がけのテーブルがある部屋(たぶんダイニング的なところだろう)に案内され、オッサンはシエータを寝かせに、一度出ていった


 にしても、いい作りの家だ

 見える範囲に限って言えば、柱となる木はランク3のヤングトレント、壁はストーンゴーレムの石をブロック状に削って積んである

 外から見た感じだと2階建てであろうこの建物は、相当な風が吹いてもビクともしないはずだ

 床や壁の材料もかなり丁寧に作ったらしく、規則正しくはめ込まれていた


 こんな山奥でこれだけの建築をするんだ、この世界でもドワーフは職人が多いらしい




「ああっ」


「うわぁ、急に大きな声出してどうしたんでしか?」


「うー?」


 オレは大切なことを思い出した

 そういえば、オレってPK表示のままだった

 ヤバい、いくら強くなったとは言え、この状況で囲まれたら死ねる

 というか、周囲にランク3とかランク4の魔物がうじゃうじゃいるんだから、ここにはそれと戦えるだけの戦力があるってことだ

 最近NPCやプレーヤーに合わなかったからすっかり忘れていた


 とりあえず、カバ太達にはなんでもないと言い思考を巡らす

 クールになるんだオレ


 今ここで逃げ出したりするのは得策ではない

 出口も少ないし、封鎖されたら逃げる手がなくなる


 じゃあ、どうする

 ここに立て篭るか

 それはまずい

 地の利もない上、戦力的にきつい


 そういや、オッサン帰ってくるの遅くねえか

 もしかして、通報しに行ったとか

 くそ、恩をあだで返しやがって

 あそこで叩き切っておくべきだったか



 ヒロが1人悶々と思考を巡らせているとき、部屋のドアが空いた


「すまんな、時間がかかってしまって、ほれお茶だ、のどが渇いているだろう」


 オッサンが湯飲みを持って戻ってきた

 もしや睡眠薬でも入ってるんじゃ


 オレが警戒している中、リーフとカバ太は普通にお茶をぐびぐび飲んでいた

 カバ太は器用に前足を使って湯飲みを持ってる

 すげぇな


 って違う、今はそんな場合じゃない


「どうした、お主は飲まないのか?」


 今そういう気分じゃない、と言って断る

 最悪の場合はカバ太とリーフは置いていこう

 こんなところで死ぬ訳にはいかないからな


 その後お茶請けとしてクッキーまで出てきやがった

 全力でオレを狩りに来てるな

 しかし、その程度のトラップに引っかかる俺じゃない

 全てリーフの口に突っ込んでやった

 


 リーフと、カバ太がお茶を飲み終えると、オッサンは話を始めた


 オッサンの名前はガーランド=ベッケル

 純潔のドワーフらしい


 そして、娘はシエータ=ベッケル

 エルフの娘らしい

 しかも、ハーフではなく純潔の


 なんでも、オッサンの結婚相手の連れ子だそうだ

 ってことは、奥さんエルフってことかよ

 この世界のエルフがどんなものかは知らないが、シエータを見る限り奥さんは相当美人だろう

 美人エルフの未亡人に手を出すとは、毛むくじゃらの癖にやるな

 見直したぞオッサン



 それで、今その奥さんが重い病にかかっているらしい

 シエータはその薬を取りに、こっそり1人で街を抜け出したそうだ


「薬あんのか?」


「ああ、お主たちと会った場所からさらに北へ行くと、ミュリーナ草という草が生えておってな、それが特効薬になる」


 ミュリーナ草と聞いた瞬間、頭に言葉が浮かぶ


 ミュリーナ草

 ミュリ病と呼ばれる風土病に対する特効薬

 ミュリ病は高熱と食欲減退が特徴で、だんだんと体力がなくなっていき最後には死を迎える

 薬の精製法はシンプルで、お湯で数時間煮出してエキスを抽出したものをだいたい20工程ほど手を加えれば完成である


 薬を作る方は説明がおかしなことになっているが、とりあえずどういうものかはわかった



「村に在庫はないのか?」


「製造法が難しい上、保存がほとんど効かんからな。それにドワーフはまずこの病気にならない」


「風土病に適応してるってことか」


「お主ミュリ病を知っておるのか。まぁ、そういうことだ」


「なら、取りに行けばいいだろ」


「もちろん手は打ったさ、街の代表に頼んで戦士団を派遣してもらった」


「なんだ、歯切れが悪いな」


「そうだな、戦士団は昨日全身傷だらけで帰ってきた。ミュリーナ草は得られずにな」


 オッサンが悔しそうに呻く

 相当強い魔物でもいるのだろう

 そういや結構話し込んじまったが、リーフやカバ太に変化がない

 と言うか、さっきからオッサンにもおかしなところが見受けられない


「なぁ、オッサン、話の途中で悪いが、オレを見てもなにも思わないのか?」


「ん? 質問の意図が見えんが、普通の人間にしか見えんぞ……」


 そこで、オレはある仮説に気がついた

 もしかして、オレのレベルがだいぶ上がったから隠蔽出来ているのか

 それなら何もないことにも納得ができる


 油断はできないが、もし隠蔽に成功してるなら、隠れて過ごす必要がなくなるかもしれない

 これは思わぬところで、ラッキーな情報をゲットできたな


「ああ、すまん、ありがとう」


「ん、変な男だな。まぁいい、それで思いつめたシエータマイエンジェルは1人で家を抜け出し、森に入ってしまったのだ。シエータマイエンジェルを助けてもらってホントに感謝してる」


 オッサンが深く頭を下げる

 一回一回娘の呼び方が気持ち悪いが、相当溺愛してるんだな

 

 とりあえずPKプレーヤーってことがバレずに済んでオレも嬉しい

 だが、オレの幸運はここで終わらなかった


 緊張が溶けたオレは、ランク4の魔物にも対応できるだろう戦士団を撃退した魔物が気になった

 そこで、おっさんにどんな魔物だったのかを聞いてみた


「ええと、そうだな。確か、強烈な実を飛ばしてくる木で、バーストツリーとか言ってたな」


 それは、最近在庫が減ってきた上、威力に不満が出てきたバレットツリーの上位種の情報だった

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