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PKになった俺は孤立するしかなかった  作者: 北神悠
第二章 苦労少女と守護人形
41/113

Ep40 お姉さんは頑張りますよぉ

 ガーディアンゴーレムの腕がシーチに迫る

 彼女はその腕をただ見つめることしかできなかった

 時間が引き伸ばされ、ゆっくりと拳が大きくなっていく


「シーチ!」

「シーチちゃん!」


 聞き慣れたはずの仲間の声もあまりよく聞こえない


 あっ


 もうダメか、少女はそう思った


「あらあらぁ、シーチちゃん諦めるの早すぎよぉ」


 シーチは突然横から現れた黒い影に体の向きを無理やり変えさせられる

 当たるはずだったガーディアンゴーレムの腕はシーチの顔の真横を通りすぎていった


 

「ふぅ、間一髪ってところかしらねぇ」


 右手で刀を、左手でシーチを抱えたみゅうみゅうが楽しそうに言う


 その姿に、風香とツナ吉は安堵した


「ほらほらぁ、二人共まだ気を抜く場面じゃないわよぅ。シーチちゃんも自分で立てるわね?」


「ん、みゅうみゅう助かった、ありがと」


「あらあらあらぁ、いいのよ私はお姉さんだからねぇ」


 



 さて、とみゅうみゅうが周囲を改めて確認する


 風香、ツナ吉、シーチと全員まだまだHPは十分にあり、装備も問題なさそうだ

 そして、周りにはランク4のガーディアンゴーレムが7体

 それぞれダメージに差があるものの、9割以上HPが残っている


 安全を考えるなら力押しで一点突破、そのまま逃走が上策である

 運がいいことにガーディアンゴーレムは体が大きく、動きが遅いため森の中まで逃げ切れば追いつかれることはない


 しかし、その場合サナは完全に孤立することになる

 彼女の実力であればそこから逃げ出すことは出来るかもしれないが、かなりの確率で失敗すると思われる


 それに長い付き合いの、ツナ吉やシーチがそれを良しとするはずがない

 たぶん風香も賛成しないだろう


「……本当にサナちゃんは人望厚いんだから」


 誰にも聞こえないようにみゅうみゅうがボソっとこぼす

 であるならば仕方がない

 いつもよりも少しばかり真面目な顔をする

 といっても、誰もそんなことを気にする状況にないのだが


「全員よく聞きなさい、お姉さんがちょっとばかし本気で戦ってあげるからぁ、その間誰一人死んじゃダメよぉ」


 そう言って、みゅうみゅうは腰の2本の刀を抜いて、一番近くにいたガーディアンゴーレムに身を低くして近づく


 無論、ガーディアンゴーレムも黙って接近を許すわけがない

 みゅうみゅうのHPを刈り取らんと、無骨な腕を振り回してくる


 しかし、サナと互角に立ち回る彼女にそんな大振りの攻撃が当たるはずもなく、軽々懐へと飛び込み攻撃を加えていく




 間一髪のところでみゅうみゅうさんがシーチちゃんを助けた

 ほんの少しでも遅かったらシーチちゃんがどうなっていたか、想像するだけでも恐ろしい

 サナのことは心配だが、みゅうみゅうさんが来てくれてこれで4対7だ


 未だに状況は悪いが、さっきよりはよくなったと願いたい

 

 しかし、全員で共闘するのかと思っていたら、死なないように耐えてと言ってみゅうみゅうさんは一番近くにいたガーディアンゴーレムへと突っ込んでいってしまった


 そんな、無茶だ

 彼女の刀がどれくらいの物かはわからないが、シーチちゃんの斧でもほとんどダメージが与えられない相手だ

 破壊力の低い刀ではまともにダメージを与えられるとは思えない


 懐にうまく入り込む技量は流石だと思う

 けれど、やはりまともにダメージを与えられてはいない


 一体何を考えているのだろうか


 詰め寄って問いただしたいところではあるが、私の方にも一体のガーディアンゴーレムが迫っている

 意識をそちらに向け、剣で牽制しつつ、後ろに回り込みやり過ごす


 ランク4というだけあって、防御力もパワーも今まで戦ってきた魔物よりもはるかに強い

 私達がなんとかやられずに済んでいるのは、動きが遅いことに加え、単調な攻撃しかしてこないからである

 

 ドォン


 突然、大きな音がしたので、周囲に警戒しつつもそちらの方へと視線を向ける

 確か、こっちの方ってみゅうみゅうさんが


 その光景を見て、私は絶句した

 みゅうみゅうさんが戦っていたガーディアンゴーレムの片腕がなくなっていたのである

 そして、それに合わせるようにHPは半分くらいまで減っていた




 ふぅ

 ガーディアンゴーレムの壊れた腕を見ながら、とりあえず目論見通りいったことに息をつく

 HPも結構削れた様だが、それ以上に片腕を破壊できたことの方が重要だ


 これで、かなり戦い易くなったことだろう

 それじゃあ、もう片方の腕も頂くとしましょうかしらねぇ


 と、周りを見ると、今まで私たち4人をまんべんなく包囲しながら攻撃していたガーディアンゴーレム達のうち3体が私の方にやってきた

 今しがた腕を破壊したのを合わせて4体


 あらぁ、モテモテねぇ私




 ガーディアンゴーレムは魔物といっても、擬似生命体であり、動物のような思考はせずプログラムに沿って戦っているに過ぎない

 今回彼らに与えられていた任務は自分たちの司令官コマンダーの命令により、周囲にいる敵の排除だった


 指令が下るまではスリープモードで待機していた彼らは、並の探知では引っかからない

 初見で発見するのは、ほぼ不可能であるといっていい

 

 3人のターゲットが完全にこちらにたして無警戒であったため、森から広場へと追い出すことに成功する

 ターゲットたちは反撃しつつも、お互いに近づきあった

 合流すると、連携をして攻撃し始めた


 戦っているうちに、最も驚異となるのは斧を持ったピンク髪ということがわかった


 ピンク髪の武器であれば、戦いが長引いた場合大きな損害を受けることとなる

 その為真っ先に戦闘不能へと追い込むように行動した


 そして、決定的な場面で邪魔が入った

 あろうことか、ピンク髪への攻撃が外れてしまったのである

 乱入してきた1人の女のせいで


 結果ターゲットが4人へと増えた

 再び、ガーディアンゴーレムたちは危険度の測定へとはいる

 乱入してきた女は、なかなかに素早いが、その攻撃は驚異に感じるものではない

 やはりピンク髪の処理が最優先となった


 しかし、イレギュラーが起きた

 あろうことか乱入してきた女によって致命的な損害が出た


 あの女は危険だ


 ガーディアンゴーレム達は残りのターゲット3人にそれぞれ一体ずつ逃げないように付き、残り4体で女をまず排除するために動いた








 刀は刀身が細いため、繊細な太刀捌きを怠ると簡単に折れてしまう

 その替わり、鋭い切れ味と他の武器に比べリーチがある割に取り回しやすいのが特徴である


 しかし、今回の様な硬い魔物を相手にするには非常に相性が悪いと言える

 刀の方が良いものであればスパッと切断することもできるかもしれないが、本当に余程の場合だけだ


 現にみゅうみゅうの持っている刀では、理想的に当たったとしても数センチめり込む程度だろう


 では、みゅうみゅうはどうやってガーディアンゴーレムの腕を壊したのだろうか




 実は、そんなに複雑なことをやったわけではない

 単純に言えば同じところを攻撃し続けただけだ


 みゅうみゅうはガーディアンゴーレムの攻撃を躱しながら、最も手応えがあるところを探った


 最初、目や心臓を攻撃してみたが効果が出ず、唯一ダメージが通ったのが関節部だった

 そこで、右肩の付け根に狙いをつけた


 後は、刀の攻撃で最も威力が出る突きを一点集中で放つ


 それも、ただ突いたわけではなく、スキルも併用してである



 防御力変移:対象の触れた場所の防御力を低化させ、それ以外を強化する

       範囲が狭ければ狭いほど効果が上昇する



 そして蓄積したダメージにより、支えきれなくなったガーディアンゴーレムの腕は肩からもげたというわけである




 攻略法がわかれば、サナと打ち合えるだけの実力があるみゅうみゅうだ

 4体のゴーレムに囲まれても、なんとか直撃を避けながら戦うことはできる


 しかし流石に4体もいるため、中々ダメージを蓄積させることができない


 シーチやツナ吉達も一体を相手にするので手一杯なようで、みゅうみゅうのフォローには回れないでいた



 そんな時、サナの方で凄まじい轟音が響いたのである 

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