Ep39 ゴーレム達の罠
私は強敵を目の前にして、今にも飛び出していきそうなサナに慌てて声をかけた
「ちょっ、ちょっとサナ、まさかあれに挑む気なの?」
「もちろん」
「即答っ!? いやいや、ランク5よ、βの時の最後の方でさえランク4をなんとか1パーティーで討伐できるかどうかだったのに、無謀だわ」
「そんなのやってみなきゃわかんないじゃない。それに、やばかったら逃げればいいのよ」
「逃げればって、そんな簡単に」
それができれば、全滅という言葉はもっと希少価値の高い言葉になっただろう
「大丈夫よ、あいつには私とみゅうで当たるから。風香達は退路を確保してるだけでいいから」
「えー、私も戦うのぉ」
こわーいと、身体をくねくねさせながらみゅうみゅうが言う
しかし、誰が見てもその顔は怯えているようには見えない
「当たり前でしょ、あたしが戦ってる間の露払いは任せたわよ」
「あらあらぁ、サナちゃん一人で美味しいところを持っていく気なのねぇ」
「それは譲れないわ」
偉そうに胸を張りながらのたまうサナ
相変わらずの戦闘狂っぷりである
「でも、やっぱりここは一回引いて」
ぽんぽん
「ああなったら、団長が言うこと聞くわけない」
既に諦め顔のシーチに肩を叩かれて止められる風香
「風香さん、最悪逃げればいいんっすから大丈夫なんじゃないっすかね。姐さんならそうそう無様にやられることもないっすし」
楽観的なツナ吉もサナの意見に賛成する
自分以外がおおよそ賛成だということもあり、後ろ髪引かれる思いはあったが、風香も最終的には頷いた
コマンダーゴーレム討伐の作戦はいたってシンプルだ
まず、サナとみゅうみゅうが森の左右よりできる限り見つからないように接近、その後サナが攻撃、みゅうみゅうが遊撃と集まってくる雑魚の処理
ツナ吉は警戒と、集まる雑魚が多ければみゅうみゅうのフォロー
風香とシーチは退路確保のため、森の中に気配を隠して待機となっている
サナはありったけの予備の剣をストレージから出し、討伐する気満々である
それを見た風香が、また武器代の出費がかさむと胃が痛くなったのは言うまでもない
そして、全員配置につき終わり、戦いの幕が上がった
弾丸のように両脇の森の中から飛び出すサナとみゅうみゅう
あっという間にコマンダーゴーレムとの距離を詰める
そして、後一歩で剣の間合いに入るかというところで、急にコマンダーゴーレムの目が光った
打ち込む間もなく振るわれる両腕
二人は腕の軌道を読み、最小動作で躱しサナは胴を、みゅうみゅうは腕の付け根をそれぞれ切りつけた
バキンッ
サナの剣が根元からポッキリ折れた
彼女はチッと舌打ちをし、次の剣を鞘から抜く
その間もコマンダーゴーレムの腕は縦横無尽にサナを捉えようと振り続けられている
みゅうみゅうの方も刀こそ折れなかったものの、傷ひとつ付けられず攻めあぐねていた
HPバーを見ても全く減っている気配がない
その状況に、サナはすぐに撤退を決意した
いくら何でも自分とみゅうみゅうの攻撃でダメージが通らないのでは分が悪い
目や関節部を狙えばダメージが通ると思いきや、どうもそこらへんも対策済みのようで、2本目の剣が折れる以外は状況になんの変化もなかった
それに対して、このゴーレムの攻撃はヤバイ
大したスピードもないので、まず攻撃が当たるということはないだろうが、一撃でももらえば戦闘不能になるぐらいの威力を腕が振られる度に肌で感じる
しかし、サナがコマンダーゴーレムから距離をとって指示を出そうと振り返ると、状況はかなり悪くなっていた
いつの間にか、隠れて待機していたはずの風香とシーチが数体のゴーレムに囲まれ、ツナ吉もその対応に追われていた
「みゅう! あたしがこいつを食い止めるから、あっちを助けに行きなさい」
「んー、わかったわぁ。でも、サナちゃん無理しちゃダメよぉ」
こういう時にみゅうみゅうの頭の回転の速さは助かる
正直、コイツの相手をひとりでするのはきついが、さっき一瞬見た感じだと向こうはもっと苦戦しているようだった
こんなところで大切な仲間を失うわけには行かない
ふぅと大きく息をつき、目の前に対峙するコマンダーゴーレムをキッと見据える
サナは自分のギアを一段あげたのだった
話は少し前に戻る
サナたちが後一歩で斬りかかれるところまで差し掛かった瞬間、コマンダーゴーレムの目が光った
そして、振るわれる大きな腕
サナもみゅうみゅうも難なく躱し攻撃するも、サナの剣は折れ、ダメージが全く入っているようには見えなかった
奇襲を仕掛けてダメージが与えられない、安全を考えるとここは撤退の一手だろう
そう思い、周囲に意識を向けた時には既に遅かった
さっきまで何の気配もなかったはずの場所に、突如としてゴーレムが現れた
見たことのないゴーレムに、慌てて鑑定を飛ばすと
ガーディアンゴーレム
<ランク4>
ランク4、それも5体
私は急いでシーチちゃんの手を引いて森から外へと出た
退路を確保する予定が、いつの間にか囲まれていた
私達の後を追うようにガーディアンゴーレム達も森からぞろぞろと出てくる
「風香さん、そっちもっすか」
いつの間にか、近くまで来ていたツナ吉君が声をかけてきた
そして、ツナ吉君のいた方からも2体のガーディアンゴーレムが迫ってきていた
ここまで戦いまくってきた私達は、ランク3のストーンゴーレムなら2、3体相手にしても連戦できるくらいには一人一人強くなっていた
しかし、そんな自信を吹き飛ばすほどにランク4のガーディアンゴーレム一体一体から強い力を感じる
ジリジリと七体のガーディアンゴーレムに包囲されていく
後ろにはランク5の魔物まで控えているというのに
「シーチちゃん、ツナ吉君、私から離れすぎちゃダメよ、囲まれて各個撃破されるわ、なるべく背を向け合うように、移動しながら戦いましょう。私とツナ吉君で相手の隙を引き出すから、シーチちゃんはそこを狙って、サナのとこまで行かせるわけにはいかないわ」
「わかった」
「了解っす」
三人で頷き合い武器を構える
どうやら、あまり素早い動きはできないようで、なんとか攻撃をかわしつつ動きを止める
そこにシーチちゃんが斧を振り下ろしてダメージを与える
私やツナ吉君の攻撃ではほとんど目に見えてダメージは通らないが、シーチちゃんの攻撃はなんとかダメージを与えているようだ
これなら、時間はかかるが倒せるのではないか
そんな一抹の希望が頭をよぎった
それがいけなかったのだろう
一瞬の隙をついて、ガーディアンゴーレムの一体が後ろに回り込んでいた
そしてその腕は、別のガーディアンゴーレムに斧を振りかざしていたシーチちゃんに振り降ろされていく
一番大きなダメージを出すシーチちゃんを最も危険と判断したらしい
「シーチちゃん、危ない」
そう叫んだ時には、既に回避できるほどの余裕はシーチになかった




