Ep38 森の奥の人形
みゅうみゅうさんから、この世界に来てからのことを話してもらった
基本的には私たちと同じように、公開と同時にスタートしてログアウトできなくなり、手がかりを求めて彷徨っていたらしい
「それでぇ、この森をフラフラしてたらPKの連中に襲われたんだけどぉ、返り打ちにしてあげたらなんだか私もPKやりたくなっちゃって、PK始めてみたのよぉ」
「いやいや、そういうことはノリで始めないでくださいっすよ」
「あら、お姉さんツナ吉君ならわかってもらえると思ったのになぁ」
ミュウミュウは綱吉を誘惑するかの様に頬に手を当てる
「ちょっ、みゅうみゅう姉さんっ」
顔を真っ赤にしながら、困惑するツナ吉に
げしっとシーチの蹴りがきまる
「ダメ兄は本当にダメ兄」
シーチが全くといった感じで頭を振る
「ふん、まぁいいわ、それでPKやってなにか収穫はあったの?」
吹っ飛んでいったツナ吉を気にもとめずに、サナが問う
「うーん、そうねぇ、特になかったわねぇ」
そこまで話して、あっと何かを思い出したかのように呟く
「でも、森の奥になんだかものすごく強そうな魔物がいたわよぉ」
「なんですって、なんでそれを先に言わないのよ」
「ちょっとサナ」
「風香ほら行くわよ、みゅうあなたも付いてきなさい」
サナはキラキラと目を輝かせながら、二人を急かす
「はぁ、もう」
「あらあら、サナちゃんは相変わらずねぇ」
既に諦めたような苦笑の風香に対して、みゅうみゅうは楽しそうに微笑みながらサナの後を付いていくのだった
「ダメ兄、早く起きないと置いてかれる」
げしっげしっ
「いやっ、シーチ、ちょっと待って蹴ったら立てないって、って姐さん、置いてかないでくださいっすよー!」
新たに、みゅうみゅうを加えサナたちは森の奥へと進んでいくのであった
「みゅうみゅう姉さん、いいんっすか?」
「あらぁ、急にどうしたの」
久しぶりの再開に喜びつつも、ツナ吉は勝手に仲間として連れてこられたみゅうみゅうを心配していた
「サナちゃんの、思いつきで生きてる感じは今更じゃないの、それに私は別にやりたいこともなかったから、問題ないわよぉ」
うふふとみゅうみゅうは笑いながら言う
「ダメ兄は心配しすぎ」
「いやでも」
「優しい男の子はモテるわよ、お姉さん嬉しいわぁ」
「いや、別にそういうわけでっ、痛いって、シーチ蹴んないでよ」
「あらあら、ごめんなさいねぇ、お兄ちゃんは取らないわよぉ」
「違う、身内として恥ずかしいだけ」
「あら、シーチちゃん可愛いわぁ」
そう言いながら、みゅうみゅうはシーチを抱きしめる
「苦しい、暑い、それとそこのダメ兄は羨ましそうに見るな、気持ち悪い」
「あらあら、今度はツナ吉君が嫉妬かなぁ」
「ち、違うっすよ」
「うふふふ、本当に可愛い兄妹よねぇ、あなた達」
そんな三人には聞こえないように、風香がそっとサナに話しかける
「ねぇ、サナいいの?」
「何が?」
「みゅうみゅうさんよ、いくら前の仲間とはいえPKしてたのよ」
「ああ、そのことね、みゅうなら問題ないわ」
「でも」
「風香の心配は杞憂よ。話は終わり、獲物よ」
風香の話を一方的に打ち切り、少し先にいたストーンゴーレムに突っ込んでいった
「まったく」
そう、一人でつぶやきながら、自分がしっかりしなきゃと気を引き締めなおす風香
他のみんなは昔の仲間としてみゅうみゅうを受け入れているものの、疑念が晴れない彼女は一人警戒を強めるのであった
みゅうみゅうの言っていた場所は、昨夜戦った場所からさらに一日程森の奥へ行ったところであった
途中、魔物はたくさん出てきた
しかし、最高でもランク3の魔物であったので特に問題もなく進むことができた
更に、サナとやりあえるだけの実力を持ったみゅうみゅうが加わったこともあり
森の魔物を狩り尽くす勢いで戦いまくったのは言うまでもない
「私が見たのは、この奥よぉ」
そう言いながら、そっと岩陰から覗き込む5人
その先は、小さな広場のようにひらけていた
そして、崩れかけた遺跡のむこうに一体のゴーレムが鎮座している
コマンダーゴーレム
<ランク5>
この森の中でまだ一回も出会っていないランク4を飛ばして、ランク5
サナとみゅうみゅう以外の三人は息を飲む
「ランク5とは腕がなるわね」
それに引き換え、サナの瞳には燃えるような闘志がメラメラと宿っていた
余談
森の中を歩いていた俺たちは、妙にピンクで紫で赤い毒々しいキノコを見つけた
原色が入り乱れたきつい見た目に、目が痛くなる
ただもしかして、何らかの薬になるかもしれないので、とりあえず木のトングで収穫して鑑定してみた
ギガポイズンキノコモドキ
<レア度3>
ドラゴンすらも下手したら死に追いやるギガポイズンキノコに似ているキノコ
めっちゃ旨いよ
なんとも、怪しい名前だが食えるらしい
というわけで、飯時に焼いてみた
毒々しい見た目は相変わらずだが、焼くにつれて香ばしく旨そうな臭いを漂わせている
ただ、流石に食う勇気はない
こういう時こそ弟子の出番だ
「よし、リーフとりあえず食ってみろ、師匠命令だ」
「絶対嫌でし」
「大丈夫、鑑定では旨いって書いてある」
「なら、師匠が食べればいいでし」
「何を言ってるんだ、俺はまだ死にたくない」
「師匠ずるいでし」
「ずるくない、むしろ旨いものを譲ってやってるんだ、弟子としてこんなにも優しい師匠と出会えたことに感謝すべきだろ」
そう言って、無理やりリーフに食わせようとする
「いーやーでーしー!」
それを全力で抗うリーフ
「ええい、往生際の悪い、木の精霊だろ、森の恵みを無駄にするんじゃない」
「リーもこんなとこで死にたくないでしー」
パク
「うー!」
リーフと言い争ってるうちに、食欲に負けたカバ太が食った
「うっ」
「「おい、カバ太大丈夫(でし)か?」」
「うっ」
カバ太がギュッと目を閉じる
「バカ野郎、早く吐き出せ、リーフ水だ」
「はいでし」
俺たちは慌ててカバ太に駆け寄った
「うっうー!」
ところが、カバ太が嬉しそうに鳴いた
どうやらめっちゃ旨かったらしい
感動で微妙に泣いている
その後、恐る恐る食ってみたら、本当に旨かった
ちょっとだけカバ太をすごいと思った一日だった




