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PKになった俺は孤立するしかなかった  作者: 北神悠
第二章 苦労少女と守護人形
35/113

Ep34 普段理性的な人を怒らせると、そりゃもう大変ですよ

「ねぇ、風香」


「ダメよサナ、我慢しなさい」


 そわそわ


 そわそわ


 そわそわ


「そわそわしてもダメ」


 うずうずうず


「うずうずも禁止」


 じーーーーーーー


「そんなに見つめてもダメなものはダメ」


「団長も懲りない」


「うがーーーーーーーーー」


 サナは、静かに叫ぶという高等テクニックを駆使しながら、身悶えていた


 既にこのやりとりを何度となく繰り返している




 PK狩りに向かったサナたちは、二日かけて再び前落ちた崖下まで来ていた

 そして、森に入ってから一切戦闘をしていない

 

 それはつまり戦闘狂のサナにとって、ヘビースモーカーに喫煙をさせないと同等の効果があった

 しかし、不用意な戦闘音は相手に気づかれる可能性がある

 その為探索力が最も高いツナ吉君を先頭に、魔物を避けてここまで来た


「それじゃあサナ、頼んだわよ。それと……」


「わかったわよ、戦わないって、くそっ、PKの連中見つけたらギタギタにしてやるんだからね」


 そう言って、黒いオーラを発しながら崖を登り始めた



 今はすでに日も落ちて、空が曇っているため完全に真っ暗だ

 一応スキルの夜目を全員有効化しているので、見えないということはないがそれでも手元を確認するのがやっとといった状況である


 そんな中、サナは崖を己の体一つで登っていく

 いくらゲームで強化されているとは言え、この高さの崖を滑り落ちたらひとたまりもない

 風香たちは、闇の中で一人崖を登るサナを心配そうに見上げていた





 そもそも、なぜ崖を登ることになったのか

 それは、二日前の出発した直後に話は遡る


「それで、サナはどうやってPKプレーヤー達を狩ろうと思ってるの?」


「えっ、正面から突っ込んで手当たり次第にこうがしっと」


 そうやって剣を振りながら作戦とも言えない作戦を言う


「あなたねぇ、それだと取り逃がすからって崖から飛んだのは誰よ」


「あー、そういえばそんなこともあったわね」


 案の定何も考えていなかったサナにため息を付く


「いやいや、あの時はとっさのことでもあったし、それにさ一人妙な気配の奴が混じってたから」


「妙な気配? ツナ吉君も感じたの」


「えっ、いや俺はなにも感じなかったっすけど」


「ツナ吉、ちゃんと思い出しなさいよ、あの時崖とは別に気配が薄くて突破しやすそうな穴がずっとあったじゃない、その向こうよ」


「いやいや、姐さんあの状況でそこまで察知できないっすよ」


「やっぱりダメ兄」


「そういう、シーチだって人のこと言えないじゃないか」


「私は料理人、斥候役じゃない」


「はいはい、二人共喧嘩しないの」


 話が逸れてきたので、二人を仲裁する


「それで、サナはその妙な気配はまた会って分かるの?」


「うーん、ほかの連中よりも鋭い感じがしたから多分そこそこ近づけばわかるかな」


「はぁ、それはまた随分と曖昧ね、でももう一回罠に入り込むわけにはいかないでしょ」


「次はあたしが全員なぎ倒すから」


「その前に、私達が矢でダメージ負っておしまいよ、というかそういうことも考えて逃げたんじゃないの」


「えっ、矢くらいスパンって感じで叩き落とせるでしょ」


「そんなのできるのサナだけよっ」


「えっ? 俺も出来るっすけど」


「私も」


「嘘でしょ」


「いやー、前の時に姐さんに鍛えられたっすからね」


「同じく、何度死んだかわからない」


「じゃあ、なんで崖から飛んだのよ」


「ぶっちゃけそっちのほうが面白そうだったから」


 げしっ


「うはぁ、痛いって、なんで殴るのよ風香」


「私は、私はそんなくだらない理由で死ぬ思いしたなんて」


 風香の後ろに般若が浮かぶ


「ちょっと、風香まってまって、ほらちょっと落ち着こう」


 珍しくサナが狼狽えながら、風香をなだめようとするも


「サーナー」


 そんな要求が聞き入れられるわけなかった


「ツナ吉、シーチ何とかしなさい」


「いやいや俺っすか」


「自業自得」







 閑話休題




「というわけで、今回は私たち側が奇襲するわ」


「奇襲ってどっからするんっすか?」


「もちろんあの崖よ、あの後追っ手がなかったってことは、あそこはあまり警戒されてないはずよ」


「しかし風香さん、いくら警戒されてないって言っても、丸見えじゃないっすか」


「何言ってるの、夜登るに決まってるじゃない」


「風香、崖登りはそんな簡単じゃない」


「そうっすよ、風香さん」


「なに言ってるの、みんなで登るわけないじゃない。一人が先に登ってロープを結んで、私たちはそれを使って登ればいいのよ、ね、サナ」


「……はい」


「あと、途中戦闘も禁止だから」


「うっ、それは」


「何か文句でもあるのかな」


 にっこり(ゴゴゴゴゴ)


「……はい」


 三時間近く正座で説教させられたのが堪えたのか、体力無尽蔵の彼女が小さくなっていた


 その光景を見ながら、ツナ吉とシーチは「何があっても、風香を怒らせてはいけない」と心に固く誓ったそうな






 その結果、PKのテリトリーに夜明け前には潜入することに成功した





余談



「あのー、姐さんその弓と矢は何に使うんっすか」


「もちろん特訓に使うのよ」


「えっと、俺腰から下木にくくりつけられて全く動けないんっすけど」


「それが? ああもしかしてレベル低すぎた?」


「いやいやいや、これじゃあ避けれないじゃないっすか」


「うん、そのつもりだけど」


「なに、さも当然でしょ? みたいな顔して言ってるんっすか」


「大丈夫、そこにある木刀で叩き落とせばいいのよ」


「そんな、姐さんじゃないんっすから、無理っすって」


「じゃあいくわよー、あっ、ちなみに矢はオリハルコン製だからちゃんと綺麗に弾かないと木刀もろともブチ抜かれて死ぬわよ」


「それハードル上げすぎじゃないっすか」


「何言ってんの、この後あいつに作らせたガトリングボウガンとかバルカンアローとかデスブラスター砲とか残ってるんだから、これなんて可愛いものよ」


「生き残れる気がしないっすーーーーーーーー!!!!」


 ちなみに、これらの武器が開発された原因はサナが次々と木刀で防ぎきるもんだから、某人物が躍起になって開発したということは言うまでもない


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