Ep33 道は一人で歩くものって誰が決めたのよ
PKプレーヤーに襲われ崖から落っこちたあと二日かけて私たちはサンドルクまで帰ってきた
途中幾度となく魔物と遭遇してきたが、サナには思うことがあるらしく珍しく帰ることを優先して戦っていた
そして、サンドルクに着くなりそのまま旭の騎士団の本部までやってくると、すぐに角御門団長との面会を申し込んだ
ちょうどタイミングが良かったのか、角御門団長は本部にいたためすぐに会うことができ、今回のことを報告した
「PKプレイヤーとは、また厄介なものが現れたね」
私達の話を聞き終わると、角御門団長が呟くように言った
所謂MMORPGにおいてPKはよく話題に上がり、議論されてきた問題点である
肯定意見としては、リアリティ、自由さ、戦略性の高さを訴えるプレイヤーが多い
ロールプレイなのだからというわけだ
そして、反対意見は単純に迷惑だからである
あまりに過度にPKが進むと新規参入プレーヤーは最初の街から外に出られなくなったり、重要なアイテムが取れなかったりしてゲームが過疎る
狩場を占領されたり、重要なイベントで裏切られたりと言ったこともPKが絡むと更にややこしくなる
といった感じだ
ただ、現実としてはルールはあるもののPKを許容しているゲームはそこそこある
TFOもβの時の説明が正しいなら、街や一定のイベントポイント以外ではPK可能となっている
「けど、死んだらどうなるかわからない現状、正直PKは良くないっすね」
ツナ吉君の言うとおり、ゲームかどうかもわからないこの世界でPKは許容できない
最終的に頼れるのはこのゲームを始めたプレイヤー達だけなのだ、それをいたずらに間引く行為は許容し難い
「うん、そうだね。このことはすぐにでも旭の騎士団を通じて情報を伝えるよ」
「それがいいと思います。後はからくり人形の森への立ち入りを取り締まった方がいいでしょう」
どんっ
角御門団長と私達が話を進める中、一言も話さず黙って聞いていた彼女が突然机を叩く
「どうしたのよ、サナ?」
「甘いわね」
「しかし現状注意を呼びかけるしかないだろう」
「あたしが殺りに行くわ」
「ぐっ、しかしそれは」
「そうね、危険よ。でも、あたしがPKをする側なら規制されたら場所を変えればいいだけで、また違う場所で同じように犯行を繰り返すわ」
サナの言葉に角御門団長を始め、皆が沈黙する
「あたし達が奴らに会ってから今日で二日目、何もしないままならまた別の場所に行くでしょうね。それに、ちょっと気になることもあるの、だからあたしはまた森に行ってくるわ」
そう不敵に笑いながらサナが言う
そのまま出されたお茶を飲み干し、素振りでもしてくると言って出て行ってしまった
「姐さん勝手なことばっか言って申し訳ないっす、俺姐さん追っかけてくるっすね」
「ダメ兄、私も付いてく」
ツナ吉君とシーチちゃんもサナを追って出て行ってしまった
「すみません、みんな勝手で」
「いや構わないよ、それに風香も彼女達が心配なんだろう、だいたい必要な話は聞けたからね、追いかけに行っていいよ」
「はい、すみません、ありがとうございます」
妙にそわそわしていることに気を使ってくれたのか、角御門団長が背中をおしてくれた
私は一礼すると、慌ててサナたちを追った
風香達が出て行ったあと、角御門は大きく息を吐き椅子に深く腰掛ける
「『覇剣』は相変わらずか」
天井を見上げながらそう呟くのであった
その日に夜、サナは一人完全武装でサンドルクの西門に向かって歩いていた
そんな折、ふと気配を感じ歩みを止める
「別に付いてこなくてもいいのよ」
その視線の先には、同じく旅支度を終えたツナ吉とシーチ
「団長は勝手すぎ」
「そうっすよ、どこまでもついて行くっすよ姐さん」
「そう、なら止めないけど、本当に人を殺すことになるかもしんないのよ」
「そっちはまだ覚悟ないっすけど、俺は姐さんに付いていくって決めたっすから」
そうやって頬を掻きながら決まりの悪そうにツナ吉が言うと
「いずれ、うん、きっといずれそういうことがまたある、だから問題ない」
シーチがいつもより饒舌に淡々と話す
「でも、あんた達が死ぬことは許さないわよ」
そういって、サナが再び歩きだそうとする
「ちょっと、待ったぁ! はぁはぁ、私を……置いていこうなんて、はぁ、随分と、酷いことしてくれる、わね」
息を切らせながら、風香の声が響く
「む」
そんな風香を見てサナがバツの悪そうな顔をする
「はぁはぁ、私を見くびらないで欲しいな、それにこんなところで仲間はずれにされる方の気持ちも少しは考えなさいよ」
「ったく、揃いも揃ってこんな戦闘馬鹿についてくるなんてね」
「「わかってるなら少しは自重しなさいよ(してくださいっす)」」
風香とツナ吉がハモる
「それはできない相談ね」
それを楽しそうにサナが否定する
「団長らしい」
と、ふふふと誰からとでもなく笑い声が上がり最後は全員で笑い合っていた
「さて、それじゃあPK狩りに出かけるとしましょうか」
そう言って進むサナの足取りは、先ほどよりもよっぽど軽やかだった




