Ep30 崖からおっとっと
「どりゃあ」
ゴーレムの弱点である胸の魔石ごと、ランク3のストーンゴーレムを蹴り飛ばす
ストーンゴーレム自体は、ウッドゴーレムとほとんど体格は変わらない2メートルから大きいやつで3メートルもない
それにもかかわらず、ランク2のウッドゴーレムと違ってランク3にクラス分けされている
その理由は単純で、硬さと重さである
そもそもゴーレムは動きが遅いので、序盤装備が整っていない状況でも攻撃を受けるということはあまりないが、それでも囲まれれば受けざるを得ない状況にもなる
仮にウッドゴーレムであれば、直撃をくらってもちゃんと防具を着込んでいれば、いきなり戦闘不能とはいかない
しかし、ストーンゴーレムの場合は全く違う
金属製の鎧でも軽々ひしゃげさせ、並の武器では全くダメージを与えられないどころか、逆に武器が壊される
その上、ウッドゴーレムは本能的に火を嫌がるが、ストーンゴーレムにそれはない
とまぁ、βの時は散々苦労させられたストーンゴーレムが、次々と葬られていく
サナ曰く、魔石の硬さは変わらないんだから、懐に飛び込んで叩き壊せばいいらしい
しかし、重さが何百キロあるかわからない石の腕をかいくぐりながら、一般人がそう簡単に飛び蹴りを食らわせられると思わないで欲しい
それに、相手の重心が後ろにある時を狙っているとはいえ、普通は蹴りで吹き飛ばせる相手でもない
というか、予備で渡した剣はどうしたのよ
そんなサナの横ではツナ吉君やシーチちゃんもうまく立ち回っている
強敵はサナが優先して狩っていくので、基本的に二人はサナの周囲の雑魚を倒している
身軽で素早い魔物はツナ吉君が、タフで頑丈な魔物はシーチちゃんが優先的に狙うようにしているようだ
流石はリアルでも兄妹なだけあって、二人の連携は流れるように無駄がない
私はその合間で厄介な魔物の排除とフォローをしている
このTFOには、魔法という概念はあるが人間には使うことができない
なので薬に頼ることになるのだが、流石に両手が離せない状況で薬を服用できない為、時折フォローを入れて回復させる余裕を作らないとならない
特に、今はHPがゼロになったらどうなるかわからないので、かなり早い段階で回復をさせるようにしている
いくら優れた戦闘センスを持つサナでも、ダメージはゆっくりとではあるが受けている
本人はHPの残量をあまり確認していないようなので、目を離すと半分を割り込んでることがあってヒヤヒヤさせられることもある程だ
多分、油断だった
あらかた周りの魔物を倒したので、休憩していた
最初に反応したのはサナだった
スパン
いきなりサナが剣を抜いたかと思うと、飛んできた矢を叩き落とす
「いつの間にか、囲まれたみたいね、こっちよ」
そう言って、サナが駆け出す
幸い軽い小休止のつもりだったので、すぐに動ける準備をしていた為、全員走り出す
後ろから、更に矢が飛んでくるが、ここは森の中だ
止まっているならともかく、動いてる私達に当てるのは至難の業だろう
私達が走り出すと、後ろからガサガサと追い立てる足音がする
「団長、反撃しないの」
「あの場所じゃ、分が悪いわ、それにどうやら追い込まれてるみたいね」
「こっちだけ意図的に包囲に穴を開けてるってこと」
「どうやらそうみたいよ、風香やシーチにはわからないかもしれないけど、ツナ吉、あなたも感じてるでしょ」
「そうっすね、こっちだけ気配がないっすね」
「それじゃあ」
「まぁ、とりあえず誘い込まれてみよ」
そう言いながら、サナは楽しそうに笑みを浮かべる
そして、間もなく、森が開けた
「なるほど、こういうことね」
目の前には崖、とても装備なしでは降りれそうにない程の高さがあった
「団長、このままじゃいい的」
「じわじわと、包囲が狭まってきてるっす」
「サナ、戦うの」
「それもいいわね、でもそれじゃあつまらないわ」
バキン
そこで、飛んできた矢を再び叩き落とし
「ここで戦ったら、何人か取り逃がしちゃうからね、今日は引いてあげるわ」
そう言って、私達の服を掴んで、崖の方に飛び出した
「ちょっ、サナ……」
「姐さん……」
「だんちょ……」
「ひゃっほーーーーーーーー」
「「「きゃーーーーーーーーーーーーーー」」」
私達は崖の下に落下していった
余談
「なあ、精霊って魔法使えるんだろ」
「そうでしよ」
「どんなのが使えるんだ」
「前も、話したでしけどリーだと植物やお花に簡単なお願いが出来る程度でし」
「それって、一日何回も使えるのか」
「内容にもよるでしが、リーに出来るくらいのことなら、違う植物であればいくらでもできるでし」
「ああ、そういえば上位の精霊になればすごいことができるって言ってたな」
「はいでし」
「じゃあ、やっぱし魔力的なものを使ってるのか」
「違うでし」
「ん、どういうことだ?」
「リーの聞いた話だと、めっちゃお願いするから頭が痛くなってくるんだそうでし」
「つまり、精神力とか集中力を使うと」
「多分そんな感じでし、それにそもそもリー達精霊は自然のエネルギーの集合体なので、それを放出しちゃうと命の危機でし」
「じゃあ、火の玉とかポンポン出たりしないのか」
「火の上位の精霊なら大気中の火のエネルギーを集めてぶっぱなすことくらいできると思うでしが、多分そのレベルの精霊なんてほとんど神様とおんなじレベルの存在でし」
「じゃあ、どうやって戦うんだ」
「何言ってるんでしか師匠、精霊は基本的に見えないでしから、戦うことなんてないんでしよ」
「つまり、働かないニートと一緒か」
「ニートが何なのか分かんないでしけど、ものすごく馬鹿にされてる気がするでし、断固抗議するでし」
そう言ってプンスカ怒るニートの精霊だった




