Ep28 彼女は戦うために西に挑む
今から三日前、周辺調査に信頼できる何人かのプレーヤーを向かわせたらしい
そのうちの一人が何の連絡もないまま、まだ帰らないそうだ
そしてその場所が、サンドルク西にある森、通称からくり人形の森であった
角御門団長としては、すぐにでも救援を出したいのだが、ここがゲームで無くなった以上、不用意に危ない橋を渡ろうとするものがどうしても少なくなる
さらに都合が悪いのが行方不明になった人物である
彼は『旭の騎士団』の中でも上位に位置するジョブレベルとスキルレベルを持ったプレイヤーで、なおかつそのスキルは探索・調査向きであったらしいのだ
その彼が帰って来れないほどの、脅威がある可能性がある
その為、まだ出来て間もなく、結束力の弱い『旭の騎士団』は角御門団長を始め組織の幹部級が不用意に動けない
そんなところにたまたま通りかかった私たちだった
そして、サナがこの話を聞いたらどう行動するかなんて、付き合いが短い私でも容易に想像できた
すぐにでも突っ込んで行きそうなサナを体を張って止め
角御門団長から調査費用として、武器やアイテムを貰い
既に森の近くまで来ている
街を出るとき、そこそこ良さそうな剣を根こそぎ貰ってきたため、若干引きつった笑みの角御門団長は新鮮だった
「しばらく見ないうちに、風香は逞しくなったんだな」と
角御門団長には大きな恩があるが、命には変えられない
なんせサナは、ミネスの街で作ってもらっためっちゃ頑丈な剣を、三日とかからず折ってしまうようなやつなのである
これから行くからくり人形の森には相当な強敵がいる可能性があるのだ、そこで武器全部折れてましたなどシャレにならない
まぁ、サナなら素手でも戦いそうだが……
「でも本当にここにそんな強い魔物がいるんすかね?」
「ツナ吉君、この森来たことあるの?」
「はいβの時に姐さんとシーチと一度来たことがあるっす」
「えっ、そうだっけ」
「まぁ、βの時は街道からずっと外れて魔物を追っかけまわしてたっすからね」
「団長は魔物しか見えてない」
「何よシーチ、何か文句あるの?」
「別にない、私もいろんな食材集められて満足」
「そう、なら今日もご馳走ね」
「調理は任せて」
「いや、シーチも戦おうよ」
「ダメ兄うるさい」
「そうよ、あたしの獲物が減るじゃない」
どうやら、三人はβテストの時に一度来ているらしい
しかし、三人ともここに何しに来たか理解してるのだろうか
「あなた達、ちゃんと今回の目的覚えてる?」
「強い奴倒す」
「あわよくば、珍しい食材も」
「行方不明の人を探すんっすよね」
どがぁ
「痛いっす、姐さんなんで殴るんっすか」
サナのパンチがツナ吉右頬にクリーンヒットする
「なんとなく、一人だけ優等生回答して、風香の怒りから逃れようとしてるから、つい」
「狡い、だからダメ兄」
「別にいいじゃないっすか」
「ダメよ、人探しはあくまでオマケよ、オマケ」
「人探しても、お腹は膨れない」
はぁ
相変わらず、マイペースな三人に頭を抱える風香であった
これで本当に大丈夫なのかしら
余談
「なぁ、リーフ、木の精霊って何か他の精霊にはできない技とかってないのか」
「他の精霊にでしか?」
「ああ、例えば火の精霊とか水の精霊とかもいるわけだろ」
「もちろんいるでしよ」
「ならなおさら話は早い。いやほら、火の精霊なら火、水の精霊なら水ってわかりやすいんだが、木の精霊ってなぁ、もしかして体から木とか生えてくるのか?」
「いや流石にそれはできないでしが、植物にお願いができるでし」
「おお、なんか精霊っぽいな」
「例えば、どんなお願いだったら出来るんだ、道を開けろとか、蔓で相手を拘束しろとかか?」
「いやいや、師匠そこらへんに生えてる植物にそんなこと頼んだら、折れたり枯れたりしちゃうでしよ」
「そうなのか」
「そうでし、師匠だって首一周回せとか、腕を2m位伸ばせとか言われたらどうでしか?」
「それはヤバイな」
「植物も同じでし、せいぜい少し斜め方向に成長させるとか、実をつけるのを何日か遅らせることくらいでし」
「なんかすごい微妙だな」
「うるさいでし、だいたい、火の精霊だってめちゃめちゃ頑張って軽い火傷させたり、小さな火種起こしたりするのがせいぜいでし」
「何だそんなもんなのか」
「師匠は、精霊に対するハードルが高すぎでし」
「結構期待してたんだけどな」
「まぁ、上位の精霊になれば師匠の言うようなことができる精霊もいるでし」
「そうなのか」
「精霊も成長するでし」
「へぇ、じゃあ」
ばっしゃーん
「うにゃあ、師匠何するでしか、いきなり水ぶっかけるなんて」
「いや、早く成長できるように」
「リーは光合成で成長したりしないでし、そもそも光合成できないでし」
「なんだつまらんな」
「精霊はそんなびっくり生命体じゃないでしーーー!」




