Ep25 第三の街サンドルクに行く予定なんだけど、着けなかった
「いやー、にしても武器みんな新調してもらえてよかったわね」
あっはっはと楽しげに笑いながらサナが先頭を進む
結局あのあと、店の商品を売りまくった私に対して店主が全員に見合った武器を贈ってくれた
サナはなんで作ってもらえる運びになったのかは謎だが、やたら重厚で頑丈そうな剣を持っている
私は短めの直剣と予備のナイフ、ツナ吉君は短剣を何本か、シーチちゃんは斧をそれぞれもらった
今まで私たちは(サナ以外)品質4レア度1の初期武器を使っていたので、だいぶ強化されたはずだ
それに加え、売った素材の代金で防具も整え直し、すぐに次の街に向かった
レベル的に不安はあるが、次の街サンドルクはβの時では最大の街である
スタートの街ではどちらかというと取り残されたプレーヤーが多く情報はあまり集められず、さっきまでいたミネスではNPC冒険者はいても、プレーヤーはほとんど見なかった
この世界に来て既に一週間、未だにログアウトできない
まるで小説の中での話みたいだが、夢や幻だと逃避するほど私は愚かじゃない
でも正直どうすればいいのか、全く答えが見いだせていない状況だ
だからこそ、少しでも情報が欲しい
そしてこれから向かうサンドルクが最も期待が持てる地なのである
当初はもっと前にたどり着いている予定だったのだが、私の同行者が考えなしの戦闘狂だったので
「ん? 風香なんか呼んだ?」
すると、突然サナが振り返る
私は慌ててなんでもないと否定する
「そー、ならいいや」
サナはふんふんと鼻歌を歌いながら、また前を向きなおす
普段は能天気そうなのに、この赤髪の少女は妙にカンが鋭い
私がサナと出会ったのは、βの時であるである
正確にはある事件のせいで、一方的に知られてしまったためだ
そしてその夜、突然彼女からメッセージが来た
ただ一言「風香と一緒にやったら楽しそうだから、パーティ組まないか」と
サナがあの「覇剣」と知ったのはそのあとメッセージを交わしていくうちだった
サナという少女は、太陽のような存在だ
元気で、快活で、明るくて
まるで私とは正反対
でも、そんな彼女だから気があったのかもしれない
結局、一緒にプレイすることになった
しかし、プレイしてからはあまりの破天荒さに振り回される日々だ
まず、驚かされたのが1Jと2J
これは本人に聞いた通りだと
1J:剣士
剣士:剣を扱う戦士
2J:狂戦士
狂戦士:戦狂い
それに加え、取得するスキルは全て戦闘に関するものばかりらしい
「覇剣」は大の戦い好きと聞いていたが、それ以上だった
ちなみに私は
1J:剣士
剣士:剣を扱う戦士
2J:策士
策士:策を使って戦いの流れを変える
ツナ吉くんが
1J:槍士
剣士:剣を扱う戦士
2J:影が薄い
影が薄い:目立たない
シーチちゃんが
1J:斧士
斧士:斧を扱う戦士
2J:食べ盛り
食べ盛り:まだまだ成長期
と、私以外まともな2Jホルダーがいない
βの時、私が知ってる人は、商人や傭兵、暗殺者などの普通のRPGの職業だったのに
いや、まだ狂戦士はわかる、できれば仲間には欲しくないけど
けど、影が薄いと食べ盛りって職業なの?
何の役に立つんだろうか
まぁ、二人共私たちが取得できていない、料理や隠密のスキルを初期から取得していたからきっと恩恵はあるんだろう
と、そんなことを考えていると、いつの間にか森の中だった
そして、大量の魔物に囲まれていた
どうしてこうなったの
「なにぼさっとしてるの風香、これから楽しい戦いよ」
「姐さん、風香さんバッチリ魔物を惹きつけてきたっす」
「料理は任せて」
「ああ、もうやってやるわよ」
今日も4人はいつも通りであった
余談
「リーフお前何か特技あるのか?」
「どうしたんでしか、師匠?」
「いや、オレ精霊に合うの初めてだからよくわかんなくてさ」
「それはそうでし、普通精霊は見えないでし」
「いや、お前見えてんじゃん」
「それは、完全に気が抜けているところを見られちゃったからでし、本来の精霊はそこに存在していても見えないでし」
「どういうことだ」
「師匠はそこらへんの石ころ一個一個をじっくり観察してるでしか?」
「なるほどな、つまり自然に溶け込んでると」
「そうでし、まぁ数も少ないんでしが、基本的に精霊はよほど波長が合う人以外は感じ取ることさえできないでし」
「へぇ、じゃあ今ならリーフも消えられるのか?」
「師匠とカバ太以外ならバッチリでし」
「俺らはダメなのか」
「リーをリーと認識しちゃわれると、とけ込めないでし」
「ふーん、でも服着てても大丈夫なのか?」
「リーの着ているものや持ち物くらいまでなら紛れさせることが可能でし」
「へぇ、じゃあ産業スパイとかやり放題だな」
「さんぎょうすぱいが何かはわからないでしが、あんまり派手なことをやったりして目立ったり、警戒して見られてるとばれることもあるでし」
「万能じゃないんだな」
「そうなんでし、でも精霊は他にも107つの技があるでしよ」
「まじか、凄いな」
「えっへんでし」
「じゃあ、全部見せてくれ」
「いやそれは……」
「なんだウソだったのか」
「うそじゃないでし」
そう言って、リーフはこのあと必死に107つの芸を披露するのであった
ちなみに12個目が羽で耳の裏が掻けるであったので察してあげて欲しい
68個目は鼻でスープを飲んでいた
107終わったあと、ぼそっと
「見栄を張るんじゃなかったでし」
とつぶやいていたのは、聞かなかったことにしてやろう




