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PKになった俺は孤立するしかなかった  作者: 北神悠
第一章 白い珍獣と悪魔の樹
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Ep13 努力と才能と冒険と

 午前中は色々とあったが、昼食後カバ太はさらに精力的に鎖鎌を振り回していた


 正直、軽く牽制になればラッキー程度にしか考えていなかったオレは、その成長っぷりに驚かされていた

 今も、フォレストディアーを鎖鎌で引き倒し、さらに一撃入れて倒していた


 トレント系が住む森は、他の森に比べて、木々の間隔が広い

 そのため、狭いところでは扱いにくい鎖鎌でも、十分に戦えるだけのスペースがある

 ただし、それは武器を扱える人間が前提の話だ

 作ったオレ自身、白いカバみたいな謎生物が、口にくわえた鎖鎌でここまで戦えるようになるとは思わなかった


 思い返してみればトングも短期間で使えるようになっていたし、さっきの昼飯の時は普通に使いこなしていた


 かなり器用なんだろうな

 むしろこれだけ器用なのに、なんで手が進化しなかったんだろうか

 それとも、カバ太が白カバ達の中でも異常に器用なだけなのだろうか

 本当に謎の生命体だ



 流石に、ビギナートレントには大したダメージを当てることはできていないが、1対1の状況なら回避しつつ鎖鎌を扱えるようになっている

 本人は不満そうだが、別に一人で倒さなくても、オレがいるから問題ない


 しかし、もう少し成長したら単独で倒せるようになるかもしれない

 そんな想像さえしてしまう程、カバ太は急激に成長している


 まぁそれ以上にカバ太に鎖鎌を持たせようと考えた、オレの才能が凄いんだがな




 


 それともう一つ、途中まで鎖鎌捌きに驚きすぎて気がつかなかったが、カバ太の動きが良くなってきている

 ずっと見ているから、なかなか違和感を覚えなかったのだが、明らかに速く動けるようになっている


 例えばフォレストディアーとの戦いで言うと

 最初は軽々と躱され、逆に角で反撃を受けてすっ転ばされていたカバ太だったが

 今は、十分に追いかけっこ出来るだけの速さがある

 しかも、木製の重い防具を背負ってである


 機動性で言うならまだオレの方が速いが、かけっこなら防具なしのカバ太の方が早いかもしれない

 さすがは四足

 心なしか、精悍せいかんな体つきになったようにも思える




「うーーーっ」

 ペロペロペロ


 がしかし、心はそう簡単に成長しないようで、相変わらず嬉しくなるとオレを押し倒して舐めまくってくる

 もはや舐められるのは気にならなくなったが、いずれアバラの10本くらいは踏み抜かれるかもしれない



 



 想像以上にカバ太が戦力になってきたので、オレはカバ太に提案をしてみる


「なぁカバ太、そろそろビッグビギナートレントに挑んでみないか? 」


 まだ後でもいいが、いずれは戦うつもりだ、負けても逃げてくればいい

 カバ太が嫌がるなら明日にしても構わない

 もともと、今日はいけると思っていなかったし


「うーーーー」

 どうやら迷っているみたいだ


「嫌なら、今日じゃなくてもいい、別に急いでいるわけじゃないし」

 実際、まだ作りたいものも、実験したいアイデアも残ってるからな

 このペースで行けば、明日は一人で狩りに行かせてもいい

 オレにはしばらくの間引き篭って製作するだけの材料も計画もあるからな


「うーうー」

 カバ太は首を横に振る

 行きたくないんだろうか


「そうだよな、まだ早いか」


「うーうー」

 更に、横に首を振る

 オレはカバ太の意見を尊重してみたのだが、どうやら違うらしい

 

「もしかして、戦ってみたいのか」


「うー、うーーーっ!」

 一瞬思案するも、大きく一回頷く

 その目は力強いものだった


「そうか、じゃあリベンジしに行くか」


「うーーーーーっ!」

 カバ太は己を奮起させるように、大きく鳴いた






 南の方に歩いていくと、ビックビギナートレントはすぐに見つかった

 他の木よりも頭一つでかい上、周囲は栄養を吸われて広場になってるからな

 隠れる気はないのだろうか


 よくよく考え得ると、不思議な魔物だ

 最初は木に擬態することで、身を隠して襲いかかってたはずなのに、いろんな意味で自己主張が激しすぎる

 ちょっとした空間に、一本巨大な木が立っていたら普通怪しむだろう


 しかし、実際カバ太は襲われてたし

 意外と大丈夫なんだろうな


 そういえば、未だにランク1の魔物もオレに襲い掛かってくるし

 この森にいる奴らはもう少し知恵を身につけたほうがいいんじゃないだろうか


 いやまぁ、お陰でオレは楽に狩りが出来てるんだが






「いいかカバ太、まだお前の鎖鎌じゃあ大したダメージにならないから、今回は回避に専念するんだ」


 オレは、カバ太と近くの草むらで作戦会議をしていた


 現状、ビッグビギナートレントにカバ太がまともにダメージを与えるには、オレが作った臼砲しかないだろう

 だが、臼砲ではカバ太の経験にはならない

 今は動かないトレントだからいいが、普通の魔物相手に臼砲は役に立たない可能性が高い


 それに前回は、オレは臼砲と破裂ドングリを使ったとはいえ、ランクが低いビギナートレント装備でこいつに勝利している

 多少レベルも上がっただろうし、何より武器と防具の質が違う

 その上更にカバ太の援護があれば十分に戦えるだろう、という勝算もある

 根を一本でも受け持ってもらえるだけでだいぶ違うからな


「いいか、やばかったら逃げて構わないからな、今の自分では手に負えないと思ったら一度引き返して、万全の装備で挑むのが素材集めというものだ」

 

「うーーーっ!」


「よし、いい返事だ、それじゃあ作戦開始だ」




 作戦を立てたといっても、別に複雑なものではない

 お互いビッグビギナートレントを挟んで、丁度反対に位置するように時計回りで戦う

 まぁ、時計を説明しても理解できなかったので、木を見ながら左の方に移動すればいいと言ってある

 というか、右と左はわかるんだな

 さすがは謎生物だ





 まずは、カバ太が接近して、ビッグビギナートレントの注意を引く

 前回はあっけなく捕まっていたカバ太であるが、成長したおかげか根の射程範囲ギリギリでうまく回避している

 防具も強化したおかげで、何度か攻撃を受けているが、怯んだ様子は見せていない



 


 オレは、ビッグビギナートレントの注意が完全にカバ太にいったことを確認して、反対側から一気に距離を詰める

 

 そして、そのまま無防備な幹に斧を振り下ろす

 筋力が強化され、スキルのレベルが上がり、重くなった斧は深々とビックビギナートレントに突き刺さる


 続けざまに三度攻撃したところで、枝が振り下ろされるが斧で防ぎ、攻撃を加えていく


 根の方は、オレに向かおうとするやカバ太が鎖鎌で牽制しているため、3本以上はこちらに来ない

 なので、だいぶ幹に近いところで戦闘を続けることができる



 さすがはランク3の魔物だけはあって、だいぶしぶとかったが、オレが2本目の根を切り落とす頃には、HPの8割がなくなっていた

 カバ太のHPもいくらか減ってはいるが、まだまだ心配するレベルではない


 オレは、多少のダメージを覚悟して一気に幹に近づき攻撃を重ねていく


 そして、何度目かの振り下ろしを入れた瞬間、ビッグビギナートレントから力が抜けた

 攻撃していた枝は垂れ下がり、根も地面に転がっていた



 「よっしゃ「うーーーーーーっ!」」


 ドゲシ


 「ぐはぁ」


 ペロペロペロペロ


 勝利の味は土の味だった


 いつかオレカバ太に殺られるんじゃないだろうか


 



 

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