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PKになった俺は孤立するしかなかった  作者: 北神悠
第五章 世界幼樹と天鳥の子
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Ep107 バクナの正体

弓を構えたエルフの兵士達とツナ吉のにらみ合いが続く。


「この状況でどうにかできると思っているのか?」


「できないって思ってるんっすか?」


 リーダーの表情はますます険しくなる。


 対するツナ吉は、シーチをかばいながら周囲に油断なく視線を巡らせる。


「どうやら、言ってもわからないようだな。全員狙え」


 リーダーが指示を出し片手を上げると、他のエルフ兵が弓を更に深く引き絞る。


 彼が手を下ろせば、四方からツナ吉たちへと矢が飛んでいくだろう


「シーチ、じっとしてるんだよ」


 シーチを更に自分に引き寄せ、腰の小剣をいつでも振るえるよう手を伸ばす。


「うーーーーーー!!!」


 突然遠くの方からカバ太の鳴き声と、猛然と近づいてくる大きな足音が聞こえる


「っ、なんだ」


 突然の出来事に、兵士達はカバ太声と足音がする方へと意識が向かってしまう。


 ピンッ


「なっ」


 一人の兵士の引き絞った弓の感覚が消える。

 後から追うように、弦が切られ反動で弓がしなる音が響く。


 全員がその存在に気付く頃には、3人の兵士の弓の弦が切られていた。


 弦が無ければ矢は撃てない。


「どこ見てるんっすか」


「ぐはぁ」


 弓が無事だったもう一人の兵士も、いつの間にか接近していたツナ吉に殴り倒された。

 ツナ吉は右足で兵士が手放した弓とついでに矢をへし折る。


「いやー、リーフ助かったっす」


「これくらい、朝飯前でし!」


 ツナ吉の視線の先には、片手にナイフを持った木の精霊が胸を張って立っていた。


「ちっ、何をやっているのだ、応戦しろ」


 リーダーは、腰の剣を抜き、伸びた弓を持って呆然とする兵士達に怒鳴る。

 その声に、慌てて他の彼らも腰の剣に手をかける。


「まだやるんっすか」


 ツナ吉も身をかがめ、小剣をぐっと握り直す




「やめんかぁ!!!!!」


 その声に全員の動きが止まる。


 そこには、肩で息をしながらも、怒りの形相を浮かべるバクナが、カバ太や風香の前に立っていた。


「お前たち、何をしている。ゴルヴィン貴様の仕事は周囲魔物から村を守ることではなかったのか?」


 バクナはリーダーのエルフを見据えて問いただす。


「ですから、村に敵対するこの人間達を捕まえようとしていたのではないですか」


「弓を構え、剣を抜いてか? ちゃんと話し合いはしたのか」


「も、もちろん我らは……」


「してない、いきなり弓を突き付けられた」


 リーダーの発言を遮って、シーチが証言する。


「勝手にしゃべるな、人間。警戒した結果だ」


「矢を撃つのも警戒?」


「ぐっ、それは、部下の手違いで」


「そうか、手を出したのもこちらからだったのだな」


「いえ、長老、この女が勝手にうろちょろしていたのが原因で」


「何か危害を加えられたのか」


「い、いえ、それは」


「もう一度聞く、何かされたのか」


 冷え切った声でバクナが問う


「その……、しかし我々は」


「言い訳はいらんっ!」


「ひぃ」


 バクナの怒りを一身に受けたゴルヴィンは、小さな悲鳴を上げて尻もちをついてしまう。


「状況は大体わかった。ここは私が預かるから、お前たちは仕事に戻れ」


 バクナは兵士たちに指示を出すが、先程の衝撃で全員微動だにしない。


「ゴルヴィン! お前たちも、何をボーっとしているんだ!」


「はっ、はい!」


 ゴルヴィンとエルフ兵はあわてて立ち去っていく。

 慌てすぎて、ゴルヴィンは途中で一回転んだが、他の兵士が支えあっという間に視界の範囲外に消えていった。




「仲間が迷惑をかけてしまったようですまなかったね。この村を代表して謝罪させてくれ」


 先ほどとは別人のような穏やかな声で、バクナはツナ吉達に頭を下げる。


「いやいや、バクナさんは悪くないっすよ。ほら、シーチ」


「押さなくてもわかってる。私が軽率なことをしたのが悪かった、ごめんなさい」


「妹が迷惑をかけたっす。申し訳ないっす」


 今回の件では迷惑をかけたことを自覚しているのか、シーチも素直に頭を下げた。


「はいはい、こんな場所でいつまでもそうしてないで、バクナさんも、ツナ吉君達も帰りましょ」


 頭を下げたまま、しばらく動かない3人に対して、風香が声をかける。


「それもそうですね。お二人とも疲れたでしょう、大したものはないですが、食事とお茶をふるまいますよ」


「っ! さっきのお茶は絶品だった、料理も楽しみ」


 さっきまでの殊勝な態度はどこへやら、シーチはわくわくと期待に満ちた目で見上げていた


「シーチ、少しは遠慮ってものを」


「む、ダメ兄とは思えない正論」


「ははは、構いませんよ。それに、そのように言ってもらえると作り甲斐もあります」


「リーも楽しみでし!」


「うー!」


「まったく、シーチちゃんもリーフちゃんも、今度は勝手に出歩いちゃダメよ。次はお説教だからね」


「ひっ」


 その言葉に、シーチは顔を青くする。


「シーチはなんでビビってるんでしか?」


「知らない方が良いこともあるんっすよ」


「よくわかんないでし?」


「地獄よりきつい」


「あら、シーチちゃんは今受けたいのかしら?」


「そんなことはない、断固拒否」


 前に武器屋でこっぴどく絞られたことを思い出しながら、シーチは風香の視線から逃れるようにツナ吉の後ろに隠れる。


「俺を盾にしないで欲しいんだけど」


「それは無理。骨は拾ってあげる」


「いやいや、俺は何もしてないから」


「まぁ、今回は無事で良かったわ」


 ふぅっと息を吐いて、風香は表情を緩める。



 ドワーフの国ではシーチとツナ吉がさらわれ、今回はサナが穴に落ちて仲間がバラバラになる事がこのところ多い。

さっきもリーフとカバ太が呼びに来た時風香は最悪の事まで想定した。


 今回は何もなくてよかったが、何かあってからでは遅い。

 特にサナを助ける見通しが立たない中、これ以上のトラブルは起こしたくなかった。




 バクナの家に帰ると、簡単な料理が提供された。

 途中シーチが質問しまくったり、リーフが感動しすぎて椅子から滑り落ちたりしたが、全員しっかりとお腹を満たすことができた。




 慌ただしい食事が終わり、食後のお茶をすすってるタイミングで、風香がバクナに質問した。


「バクナさんは、さっき兵士に長老って言われてましたけど……」


「ええ、大したことはしてませんがそうですね。先ほどの事もありましたし、少しこの村の事情についてお話させてください」


 それから、バクナはこの村について語ってくれた。




 おまけ


「リーは、人間に察知されにくくなれるんでし」


 全員でバクナの家に戻る途中、ツナ吉は気になっていたことをリーフに聞いた。

 エルフ兵の弓の弦を切った時、自分は元より、エルフ兵たちもしばらくリーフの存在に気付いていなかった。

 いくらカバ太の声や足音に気を取られていたとはいえ、弓の弦を切るくらい接近されたり、動き回ったりされればもっと早く対処されそうなものである。


「リー達精霊は、精霊以外に認識されにくいんでし。まぁ、リーの事をしっかり認識していたり、周囲に干渉すると気づかれやすくなるんでしけど」


「そうなんっすね。あと、戻ってくるのも早かったすね」


 おかげで助かったすとツナ吉はリーフに感謝する。


 実際、リーフとカバ太がバクナの家に帰って、風香たちを連れてくるスピードはかなり速かった。


 元より、ヒロの重い鎧トレーニングにより、カバ太とリーフの足腰は強化されていた。特にリーフは、ツナ吉が鎧をバラバラに外してしまったため、元に戻せず軽装だったこともあり、昔の何倍も速くなっていた。


 その為、風香の即席の作戦で、先行して奇襲ができたのであった。


ちょっと更新が遅れ気味で申し訳ないでし!

よんでくれたありがとうでし!

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