Ep106 兄ちゃんはヒーローになれるのか?
リーフとシーチを探すため、ツナ吉とカバ太はバクナの家の外に出た。
念のため、ツナ吉はナイフを何本か懐にしまい、カバ太の鎧も締め直してやる。
それから、キョロキョロと周囲を見回す。
パッと見た感じでは、二人の姿は見えない。
「カバ太、二人がどこ行ったか分かるっすか?」
「うー? うーーーーーうっ! うー!」
「おぉ、わかったっすか! って、ちょっと待ってほしいっす」
何かを察知したカバ太は、猛然と走りだし、出遅れたツナ吉は慌ててその後を追うのであった。
ガンガンガン
リーフは真剣なまなざしで、ひたすら魔法金属を叩いていた。
彼女の手に握られた石槌(ヒロ製作)が小気味良いリズムを周囲に響かせている。
その姿は既に一端の職人であった。
「……ぅぅぅぅうううううううーーーーーー!!!」
どん←カバ太ジャンプ
げし←カバ太タックル(愛情表現)
「ぎゃあああぁぁぁぁぁでしーーーー」←精霊飛翔(物理)
地面と激しいコンタクトをしたリーフは、起き上がるまでにはしばらく時間がかかった。
「ちょっと、何するんでしかカバ太! 死ぬかと思ったでし!」
「うーうーうーうー!」
「そりゃあ何も言わないで出ていったのは悪かったでしけど、勝手に穴に落ちた師匠と一緒にしないでほしいでし」
「うーうー」
「何言ってるでしか! 師匠だったら地底だろうが地獄だろうが楽しくモノ作りして、ニヤついてるに決まってるでし」
「うー、うぅーうー」
「そうでし、だからリー達は師匠に次会った時にビックリさせてやる為に頑張るんでし!」
「リーフってカバ太の言ってることわかるんっすか?」
「うわぁおでし、居るなら居るって先に言えでしダメ人間」
「ぐふっ、いや、それは悪かったっすけど……ダメ人間……」
「何落ち込んでるんでしかダメ人間」
「がはぁ、まさか他人からの口撃がこれほどのダメージだとは……」
「うーうー」
落ち込むツナ吉の裾をカバ太が引っ張る。
「? どうしたんっすか、カバ太」
「たぶん、何かやることとかが、あったんじゃないでしか?」
「ああ、そうっす! リーフは、うちの妹と一緒じゃなかったんすか?」
「妹……ああ、ダメ人間の妹でしね。知らないでしよ」
「そうなんっすか!? てっきり、二人でどっかにったものだと……」
「リーがこっそり抜ける時には、既にいなかったでしよ」
「じゃあもっと遠く行ったかもしれないってことか」
がっくりとツナ吉が溜息を吐く。
「しかたないでしね。リーが手伝ってやるでし」
そう言って、リーフが近くの木に近づいて片手を当てる。
それから何やらブツブツ言っている。
きっと精霊に伝わる呪文か何かだろう。
森の中では聞けなかったし、魔法が使えない世界なので気になったツナ吉はこっそりと近づき聞き耳を立てる。
「……でし。ピンクの髪したダメ人間の妹のいる場所を教えないと、へし折るでし。ピンクの髪したダメ人間の妹のいる場所を教えないと、へし折るでし。ピンクの髪したダメ人間の妹のいる場所を教えないと、へし折るでし……」
めちゃくちゃ脅迫していた。
心なしか、木がビビッて震えているようにも見える。
ツナ吉は聞かなかったことにして、リーフから離れるのであった。
それからしばらくして
「わかったでし!」
と、リーフの声が響いた。
彼女は笑顔を浮かべて、こちらへと戻ってきた。
その後リーフに先導されて里の中を進むと、森の近くで兵士に囲まれているシーチを見つけた。
シーチに向かって弓を構えている者もおり、何かトラブルがあったのだろう。
「カバ太、リーフ、申し訳ないっすけど、風香さん達を呼んできてもらえるっすか」
「うー」
「わかったでし!」
カバ太とリーフは来た道を駆け戻る。
そして、ツナ吉は一人シーチの元に向かって駆け出した。
「全く心配ばかりかける妹だ」
「おい、人間の娘、こんなところで何をやっている!」
シーチを囲んだ兵士のリーダー格のエルフがきつい口調でシーチに問いかける。
「昼に出されたご飯の食材を探してた」
「なんだと? 余計な行動はするなと言わなかったか?」
「してない」
「勝手に出歩いた時点で、余計なんだよ」
「そんなこと言われていない。ここのルールならもっとちゃんと示すべき」
「いちいち口答えすんじゃねぇ!」
「事実を答えてるだけ」
だんだんと激高する男をよそに、リーフはいつもの口調で淡々と言葉を返す」
「おい人間、減らず口もいい加減にしやがあっ」
近くで弓を構えていたエルフも我慢できなくなったのか、声を上げてシーチを糾弾するが、気持ちが高ぶりすぎたのか手が滑り、抑えていた矢がシーチめがけて放たれてしまった。
狙いをつけていたため、矢はシーチの胴に向かって一直線に飛んで行く。
「えっ」
「おいっ」
シーチもリーダー格のエルフも周りの兵士も、シーチに吸い込まれていく矢をただ茫然と見る事しかできなかった。
ぱしっ
しかし、シーチに刺さるはずの矢は寸でのところで止められる。
「シーチ、無事か?」
「ダメ……兄?」
「仲間に、妹に手を出したっすね。しかも、武器を持たない女の子に」
ペキ
ツナ吉の右手に握られた矢が折れる。
「まずは、弓を撃ったあんたっすね」
「ひぃ」
それはいつものヘラヘラした金髪の青年ではなかった。
目を鋭く細め、周囲を警戒しつつも、鋭い殺気を兵士に向かって放っている。
「おい、状況を分かっているのか!」
多少ツナ吉に気おされつつも、リーダーはツナ吉に強気に言う。
シーチに矢を飛ばした兵士以外にも3人、ツナ吉たちに向けて弓を引き絞っていた。
「脅しっすか?」
「警告だ!」
「そうっすか」
ツナ吉はぐっとシーチを自分に引き寄せる。
「っ兄……」
「おれが絶対守ってやる。この間みたいなのはもうこりごりだ」
おまけ
「リーフって、なんか色々兄貴に似てるっすよね。流石弟子ってとこっすかね」
「リーが師匠とでしか? そうなんでしかね?」
不思議そうな顔をしているが、どことなく嬉しそうな雰囲気を醸し出すリーフ。背中の羽が小刻みにピクピク動いている。
目の前のことに一直線だったり、手段を選ばなかったり、集中すると周りが見えなくなったり、ホントにヒロの兄貴そっくりっす。まぁ、姐さんも同じ感じっすけど。
せっかく再開したのに、二人と別れてしまいちょっと感傷に浸っていたツナ吉であった。
その横で
「うーん」
ガーンと擬音が聞こえてきそうなぐらい、カバ太が蹲って落ち込んでいた。
「うわっ、カバ太どうしたんっすか」
「あー、ツナ吉がカバ太をいじめたでし」
「いやいやいや、何もしてないっすよ」
「うーうーうーうーうー!」
がばっと起き上がったカバ太は、ツナ吉の方を前足で差して涙目で訴える。
「えっと、俺が何かしたんっすか」
「あー、リーと師匠が似てるって言われて、ショックを受けたみたいっすね」
「うーうーうーうー」
首をぶんぶん縦に振ってカバ太は肯定する。
「いやいや、別に似てなくても」
がぷり
「ちょっ、ちょっとカバ太止めるっす、俺はおいしくないっすよー」
「相変わらず、ダメ兄はダメ兄。完全に失言」
カバ太に襲われるツナ吉から避難した、リーフに風香が質問する。
「ところで、リーフちゃんはカバ太の言葉わかるの?」
「全然わからないでしよ」
「じゃあ、なんで言いたいことわかるの?」
「さぁ? でも、なんとなくわかるでし」
「えーと、そうなんだ」
風香は苦笑いである。
変なところで、着実にヒロの影響を受けているリーフであった。
Ep23のおまけから成長したリーフでした。
読んでくれてありがとうでし―!




