Ep101 飴で釣れる精霊に人を越えし四本足
「はー、水が気持ちいでし!」
川の中でリーフが気持ちよさそうな声を上げる。
「鎧洗うの、手伝ってあげるわ」
「む、人間なんでし」
裾をまくって近くまで来ていた風香に、リーフは警戒感をあらわにする。
「そんなに警戒しなくて大丈夫よ。私は風香、ヒロ君の友達の仲間よ」
「むー、ホントに、ホントにでしか?」
「ええ、本当よ、ほら、武器もしまうから」
じっとこちらを睨んで警戒しているリーフを安心させるために、風香は剣をストレージにしまう。
「でも、あの赤髪の仲間なんでしよね?」
「ああ、サナの事ね、そうよ」
「じゃあ、信用できないでし。あの赤髪は、リーの敵でし」
ぷいっと、リーフは顔をそむけてしまう。
サナ……いったい何したのよ。
風香は今後の為にも、どうしたらリーフと仲良くなれるか考える。
「サナに、何かされたの?」
「殺されそうにうなったでし」
完全にリーフの自業自得であるが、様子を知らない風香は頭を抱える。
しかし、嫌われたままではまずいので、少しでも警戒心を解いてもらおうと王都で買った飴をリーフに渡す。
「そう、それは申し訳ないことをしたわね。ほら、これあげるから、少しはお話させてくれないかな?」
「ふんっ、怪しい食べ物は貰わないんでし」
「怪しくないわよ、ほらっ……うん、甘い」
風香は一つ口に入れて、安全であることをアピールする。
「べ、べつに欲しくないんでし」
そう言いながらも、甘いお菓子と聞いて、リーフは飴をガン見して、羽がピクピクそわそわしている。
「そう? でも、私ひとりじゃ食べきれないから、貰ってくれると嬉しいんだけどな」
「それじゃあ、しょうがないんでし。もったいないから、リーが貰ってやるんでし」
さっと、風香の手から飴をひったくると、一つを摘まんで口に入れる。
「うっはぁー、めっちゃ甘いでし、おいしいでし!」
リーフはクルクルと飛び上がり、両手を頬に当てておいしさを全身で表現する。
「喜んでくれたかしら?」
「風香はめっちゃ良い奴でし、リーの事はリーフって呼んで良いでし」
飴で、木の精霊が釣れた。
正直、少しはこっちに良い感情を持ってくれれば程度の打算で飴を渡したのだが、ここまでチョロいと逆に色々心配になる風香であった。
「リーは、木の精霊で、師匠の弟子でし」
「へぇ、ヒロ君に色々習ってるんだね」
「そうなんでし」
しばらくして落ち着いたリーフと、川辺で風香は話していた。
「じゃあ、私もその鎧洗うの手伝うわね」
「ありがとうでし、風香はホントに良い奴でし」
リーフは片手でまだ洗ってないパーツを、風香に渡す。
「気にしないでぇわぁあ」
ざっぱぁん
「? 風香どうしたんでしか?」
渡された瞬間、風香は受け取ったパーツごと川に落ちた。
「ちょっと、リーフちゃん、これ重すぎない?」
「そうなんでし、師匠がどんどん重くするから動くのすっごい大変なんでし」
いやいやいや、動くとかそんなレベルの重さじゃない。
風香が持っているパーツ一つでも20キロくらいはある。
そういえば、さっき片手で渡してたわね。
「ねぇ、木の精霊って力持ちなの?」
「ん? そんなことないでしよ。師匠のしごきに耐えてきた成果でし」
「そうなんだ……」
笑顔で話すリーフを見ながら、ヒロもサナの同じ人種であることを改めて再認識するのであった。
因みにリーフの着ていた鎧は、性能は6倍、耐久に至っては約23倍風香の鎧より優れている。決してただの筋トレ道具ではない。
敵に認識されづらく、飛べる木の精霊にそこまでの耐久力が必要かは不明である。
「うー」
「うん、その火加減で良い。じゃあ、これ焼いて」
「うー」
「ダメ兄、早く薪の追加、遅い」
「はいはい」
「カバ太、次はこっち」
「うー」
「カバ太は良い子、ダメ兄はカス」
「なんか酷くない!?」
「事実、カバ太の方がダメ兄よりも動きが良い」
「いや、流石に……」
四足歩行の動物に負けるわけがない、と言おうと思ったが、シーチの後ろでカバ太がすごい勢いで網の上の野菜と肉をひっくり返し、次々と焼いている。焼いた食材は、綺麗に焼かれており、生焼けも焦げ過ぎの物もなかった。
「ウソだよね」
「これが現実」
こちらはこちらで3人楽しく調理をしているのであった。
風香たち4人と1匹は食事を終え、今後の行動について相談する。
「すぐに助けに行かないんっすか」
「それは難しいわね、今の私たちだけだと銀輝竜は厳しいわ」
「でも、姐さん武器しか持って無いっすけど」
「食材も薬もテントも無い」
「それなのよね……」
「それは大丈夫でし」
「リーフちゃんどうして?」
「師匠がたぶん全部持ってるでし。無くても勝手に作るでし」
「うー」
カバ太も頷く。
サナに関して言えば、生か焼いて食える生き物がいれば原始人みたいな生活をして生きていけるだろうが、武器や防具などは手入れをしてもいつかは朽ちる。
しかし、今は武器・物資製造マシーンであるヒロが居て、ストレージに大量に素材がストックしてある。その上、サナが勝手に素材を集めてくるので、無限ループ状態だ。
でも、強い魔物が出たらと風香は思ったが、よく考えてみれば、二人で銀輝竜を倒しそうだったし、何よりちゃんと武器があるサナが負けるイメージが想像できない。
「むしろ、姐さんと兄貴が何か問題起こさないかが心配っす」
「あの二人なら、きっと問題が起きる」
「……そうね」
「う?」
「よくわかんないでしが、リー達はこれからどうするんでしか?」
「うーん、一回エルフの隠れ里に向かってみようと思ってるわ」
「あー、リー達が行こうとしてたところでし」
「ええ、そこで武器とか情報を集めて、もう一度挑みましょう。助けるためのロープとかも揃えなきゃでしょ」
「そうっすね」
「賛成」
「わかったでし」
「うー!」
一行は一路エルフの隠れ里を目指すこととなった。




