Ep99 デッドオアチキン、新たなる弟子はピヨ助
「はんっ、大したことないわね」
サナの周囲では大量の魔物が積み上げあれていた。
ランクは3~5なので、彼女の敵ではなかった。
戦いの最中武器がぶっ壊れても、後ろで解体をしているヒロから即補充される為、いつも以上に暴れたい放題暴れていた。
ヒロはヒロで、最強の素材生産マシーンが近くにいるので、序盤以外は戦いそっちのけで素材を集めては色々試していた。
サナの武器はどうせ壊れるので、高ランクの硬そうな部分を適当に研磨して剣っぽくしたやつを片手間に作って、そこら辺にぶっ刺してある。
「お腹すいたわね、ねぇヒロ、なんか持ってないの?」
魔物を一掃して暇になったサナはヒロに声をかけたが、返答はなかった。
「ったく、あのバカ。まぁいいわ、適当に火でも起こして焼き肉パーティーね。んー、でも肉だけじゃ物足りないわね……何かないかしら」
食料は全てシーチや風香が持っていたため、サナは何も持っていなかった。
きょろきょろと周囲を見回すと、白い半球状の物が地面から顔を出していた。
「何かしら、これ?」
サナがやっと抱えられそうな大きさの白い物体を地面から引き抜く。
「んー、何かの卵みたいね」
この大きさなら、でっかいフライパンが必要と考えたサナは、ヒロに作らせようと卵を置こうとした瞬間
ピキピキピキ
と、音をたてながら卵にひびが入る。
「へぇ、生まれるのね」
目玉焼きから、焼き鳥に変更ね、鳥かわからないけど。
そんなことをサナが考えている間にも、卵のひびはどんどん大きくなり、オレンジのくちばしがてっぺんを突き破る。
「ピーーーー!!!」
大きな甲高い鳴き声が響き渡った。
鳥が生まれるところなど見たことないサナは、興味深くその姿を観察していた。
わくわく
しかし10秒後、くちばしが出た以降中々出てこないヒナにだんだんとストレスが溜まってくる。
イライラ
「出てくるなら、早く出てきなさい」
バキンッ
サナの右ストレートが卵に突き刺さった。
そして、そのまま殴った周囲がパラパラと崩れ落ちる。
「ピヨ?」
サナとヒナの目が合う。
「ピヨーーーーー!!!」
「うわっ、ちょっと」
サナの事を親と勘違いしたヒナはサナに抱き着いた。
「ピヨー、ピヨー、ピヨー」
甘えるようにサナに頬ずりする。
「あーうるさい、熱い、とにかく離れなさい!」
「ピヨ?」
サナはうざそうに引きはがすが、ヒナは不思議そうに首を傾げるだけである。
この鳥どうしようかしら。
珍しくサナは悩んでいた。敵意があれば戦う、戦って勝てば美味しくいただく。これがサナの基本的な思考回路であり、自分になつくヒナをこのまま食べるのは戦闘狂の美学が拒否している気がする。
とりあえず、すっかり忘れていた識別をヒナにする。
フレースベルグのヒナ
ランク7
大鷲っぽいでっかい鳥、育つと強い、特殊攻撃も中々厄介だな。
よし、育てよう。
一瞬でサナは決断した。
「そうと決まれば、名前ね」
「ピヨ!」
「ピヨ助ね」
「ピー!」
フレースベルグのヒナは嬉しそうだ。
誰も突っ込まないが、サナに名付けのセンスはない。
くー
ピヨ助のお腹が鳴る。
「ピー、ピヨッ!」
ピヨ助は、周囲に転がる魔物の肉を啄もうと、くちばしを伸ばすが
「ダメよ!」
サナが止める
「ピー?」
なんで、と言いたげにサナを見る。
「獲物は自分で狩るのよ。そうしないと強くならないわ」
メシは自分で取ってくるのが戦闘狂の流儀だ。
「さぁ、狩りの時間よ、ついてきなさい!」
「ピー!」
獲物を探してサナが歩き出し、それに合わせて後ろをトテトテとピヨ助が追いかけていく。
しばらく歩くと、サナの目の前には3匹のでっかい芋虫がいた。
ビッグワーム
ランク3
成虫になるとそこそこ強いが、こいつは雑魚。食べれた。
初の実戦にはちょうどいいわね。
「まずは見本よ」
そう言って、サナは芋虫をぶん殴る。
ばしっと鋭い音がして、そのまま芋虫は壁に突き刺さった。
「こうよ」
「ピヨ!」
生まれたての為、ピヨ助は何の疑いもなく羽を器用に使って、芋虫を殴る。
ペチッ
どしん
「ピヨーーーーー」
芋虫の反撃を受けてピヨ助は後ろへすっ飛ばされた。
「何やられているのよ」
「ピヨピヨピヨピヨ」
サナの怒声に対して、ピヨ助も羽じゃ無理でしょと必死にアピールする。
「気合よ」
「ピヨ!」
なるほどと頷き、ピヨ助は再び芋虫にアタックする。
ペチペチッ
どしん
「ピヨーーーーー」
「気合が足りないわ」
「ピヨピヨピヨピヨピヨ」
僕生まれたてだけど、そんなレベルじゃ越えられない壁がある気がするよ、といった感じで、ピヨ助はサナにアピールする。
「ったく、しょうがないわね、あなたの武器は羽だけなの?」
「ピー、ピヨッ!」
そ、そうか、羽にこだわる必要なんかなかったんだねと、新しい気付きを得た顔をしたピヨ助は、意気揚々と芋虫に三度突っ込む。
「ピヨー!」
パッ←ピヨ助がジャンプする
スカッ←ピヨ助の最強の右足(自称)が短すぎて届かない
ぼてっ←重力さんは今日もしっかりお仕事をした
どしん←二度あることは三度ある
「ピヨーーーーー」
「もう一回」
「ピヨピヨピヨピヨピヨ」
もっと、もっと弱い相手が良いと思う、ほら僕生まれたてだしといった感じで、ピヨ助が弁明するが、サナがそんな言い訳聞くわけもなく……
「ここであいつを倒すか、私達の夕飯になるかどっちかよ。デッドオアチキンね」
それだとどちらに転んでも死亡は回避できないが、ピヨ助にそんなことは分からないので、意を決して4度目の突撃をした。
それから、15分。
くちばしで突っつけばいいんじゃないか、ということに気が付いたピヨ助は、念願の初ご飯にありつけた。
「そうよ、そうやって強い敵を倒して強くなるのよ!」
「ピヨ!」
こうして、人知れず戦闘狂の弟子が増えた。
一方ヒロの方でも、
「なんだ、苗木か?」
しかし、こんな暗闇で木なんて……そうか、あのドラゴンの巣も落ちてるのか。
これは、レアアイテムの香りがしてきたぜ。
おまけ
「凄い複雑っすけど、これで」
ツナ吉が、最後の留め金を外すと、パキンと音がしてリーフの鎧が取れた。
「はー、やっと取れたでし、ありがとでし」
むわーん
「うっ」
「うー」
リーフの周りにいたツナ吉やカバ太は、何歩か後ずさる
「汗臭い」
シーチがズバリ感想を言う。
「ひどいでし―、リーはそんなに、くんくん、くっさーでし」
サナ達と引き離された仲間たちは、自己紹介もままならないまま、水場探しをすることになった。
ピヨ助は現時点でランク7の為、生まれたてでも意思疎通可能レベルです。
サナは動物的カンで、ピヨ助の言ってることを大体理解しています。
結果的に会話できているように見えますが、はたから見ると、サナにピヨ助がじゃれているようにしか見えません。




