Ep96 黒い名前の新事実により、またもや置いてかれる
ただ固いだけの素材で剣を作っても頑丈な剣は出来ない。
スパっと切ってくれるのであれば、素材が固い方が薄くできるので、切れ味も上昇しやすいが、あいつはそんな使い方しない。どちらかと言うと、剣の形をした棍棒を作る感じだ。
しかし、棍棒にすると剣関連のスキルが死ぬ可能性があるので、剣のカテゴリーに落とし込めるようにしないといけない。
職人として、使い手の実力を制限する武器は極力作りたくないからな。
という訳で、持ってる素材の中で一番粘りのありそうな、ビッグヤングトレントを芯材とする。
因みにレア度は5で、良い場所を選んで削ったので品質は8
その周りに、最近手に入れた魔法金属のうち、最高レアは品質が納得いかないので、レア度5品質9の魔法鉄を叩いて伸ばして、張り付けてから、研磨する。
結果、出来たのがこんな感じだ
ビックヤングトレントの魔法鉄棍棒(剣)(武器)
切れ味:5.9 破壊力:24.5 耐久:1800
品質:7 レア度:5 頑強補正+2
ビックヤングトレントと魔法鉄を合成して作った棍棒だけど、まぁ剣でもいいよ、形はそれっぽいし、形はね
鑑定の説明をオフにする機能はないのだろうか。俺のメンタルに対して殺意がありすぎないか?
因みに、昔作ったあいつの剣が
レッサーデビルトレントの剣改(武器)
切れ味:3.8 破壊力:29.5 耐久:2350
品質:10 レア度:6 頑強補正+3 自己修復+1
だったから、それに比べればまだまだ劣るが、間に合わせで作ったにしては中々の出来だろう。もちろん、全く満足は出来ないが。
早く設備の整った工房が欲しい。
「おい、出来たぞって、うぉおおおお」
サナを呼ぼうと顔を上げたら、目の前に顔面があって驚いた
「兄貴!」
「ヒロ兄!」
男と女の声が重なる。
近くで叫ぶんじゃない、耳が痛いじゃないか。
「って、その感じ、ツナ吉と……シーチか」
「私を忘れるなんて、ヒロ兄酷い」
ツナ吉との間に微妙に間が開いたのに、シーチは目ざとく気付いたらしい。
人の名前を覚えるのは苦手なんだ。興味ないし。
しかし、ツナ吉は相変わらず下っ端臭が凄いな
「兄貴、ひどいっす!」
「ん? ああ、声に出てたか、悪いな」
「全然悪びれてないっす」
「で、なんで二人がいるんだ?」
「それは、こっちのセリフっす。どうして集合場所に来なかったんすか?」
「ん、ああ……」
と言いかけて、俺は自分がPKしたことを思い出した
「はっ、そう言えば、俺を見てもなんともないのか?」
向こうにサナがいる以上、逃げ切るのは無理だ。
まずは情報収集だな。
「ヒロ兄は、いつも通り」
「特に気になることはないっすけど」
誰も気づいてないのか?
「あー、出来たんなら声かけなさいよ」
「今出来たばっかだよ……って、サナ、お前の名前!」
「何よ?」
サナを見ると、彼女も表示が黒くなっていた。ツナ吉とシーチは普通の色だ。
「お前の名前表示、なんで黒いんだ?」
「えっ、あら、黒いわね。まぁ、別にいいでしょ。ほら、それよりも武器武器!」
「あ、あぁ」
俺の手から奪い取るように、サナが武器に目を通すと満足げに頷く。
「とりあえず、これなら早々折れなさそうね」
「凄い耐久値っす」
「ヒロ兄凄い」
「ちょっと、サナ私にもっ……なにこれ、この前の剣もすごかったけど、こんな簡単そうな構造の剣がなんでこんなに数値高いの」
「いや別にそこそこの素材使ったらこんなものだろ? というか、あんた誰だ?」
「ああ、そう言えば風香を紹介してなかったわね。あたし達の仲間よ。それじゃあ適当に挨拶しておいて。あたしはさっそく狩に……ぐえっ」
「待ちなさい!」
そのまま戦いに行こうとするサナのマントを引っ張って止める
「げほっ、急に引っ張るなんて酷いじゃない」
「久しぶりの再会なんでしょ、色々情報交換もしたいし、少し我慢しなさい」
「ぶー、風香がやればいいじゃない」
「さーなー」
「ああ、わかったわよ!」
そう言って、サナは不機嫌そうにその場に胡坐をかいた。
「改めまして、私は風香、Jは騎士と戦術家よ」
そう言って風香は手を差し出す。
ジョブ名まで言うとは、ある程度こちらを信用しているということだろう。
まぁ、サナのパーティーメンバーだからな。信用は出来る。
下心や悪意があって、あいつのハチャメチャについていくのは不可能だ。きっと苦労した事だろう。
「プレーヤー名はヒロ。Jは、生産廃人と墓荒らし、それに鬼薬師だな」
「生産廃人、相変わらずっすねぇ」
「墓荒らし……ヒロ兄なら素材の為にそれくらいしそう」
なんか外野からさんざん言われてるな。いいじゃないか、便利なんだし。どうせ、サナだって戦闘馬鹿とかバトルマシーンとかだろ。
「3つ!? ヒロ君も3つJを持ってるの?」
風香が驚いたようにこっちを見ている。というか、俺も?
「風香も、3Jがあるのか?」
「私じゃないわ」
「あたしよ。あたしは殺戮者、戦闘中毒者、それに最近『戦いの求道者』って言う3つ目のJを手に入れたわ」
そこまで聞いて、俺は一つの結論に行きつく。
「なぁ、全員俺のネーム表示何色に見える?」
「えっ、白ね」
「白っす」
「白」
「黒よ」
他三人が白と答える中、サナだけが黒と答えた。その答えに全員がサナの方に注目する。
「やっぱりか」
「もしかして」
風香は俺と同じ考えに行きついたみたいだな。よくわかってないサナ達は、クエッションマークが頭の上に浮かんでいる。
「どうやら、3J持ちだけが黒く見えるみたいだ」
なんだよ、じゃあPK全然関係ないじゃん。俺はこれまで何をしてきたんだ。
その事実に、ヒロはがっくりとうなだれる。
「ふーん、つまり、他にも黒い奴が居たら3J持ち、つまり強い可能性があるわけね!」
「サナ、あなたねぇ」
風香があきれたようにサナを見る。
「ししょー! やっと、追いついたでしーーーー!!」
リーフの声が遠くから聞こえた。
やっと追いついてきたか。
そんな時、山頂がピカッと光った。
その光に即座に反応したのは二人。
「ドラゴン!」
「素材!」
まだ何かもわかってないが、欲望の元にあっという間に駆け出した。
「ちょっとサナ」
「姐さん、兄貴。早すぎっす」
「ヒロ兄も団長も相変わらず」
「うーーーーー!」
他の3人と1匹も慌てて二人を追いかける
「なっ、そんな、置いかないで欲しいんでしーーーーーー!」
リーフの声がむなしく山に響くのであった。
読んくれてありがとなんでし。
置いて行くなんてひどいでし!




