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盟約の花嫁  作者: 徒然
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番外編2

 休日だというのに、家の中がやけに騒がしい。

 バタバタと廊下を歩き回る足音に目を開けると、寝室のドアがバタンと大きな音を立てて開けられた。

「お父さん、いつまで寝てるつもりなの?今日はフィリスお姉ちゃん達が遊びに来る日でしょ?早く起きて、準備手伝って!」

 腰に手を置いてそうまくし立てたエリーは、慌しく寝室を出て行った。

 代わりに部屋を覗き込んだのは、長男にして我が家で唯一の男仲間でもある、ロンだ。

「父さん、裏の倉庫から一応ベビーベッド出したけど・・・どうする?多分、まだ使えるとは思うけど」

「・・・ああ、ありがとう。どうかな、ちょっと見てみるか」

 寝起きでボーっとした頭が覚醒してくると、ようやく今日が何の日か思い出す。


 今から十五年ほど前、妻のハンナが出先から突然女の子を連れて帰って来た。

 その子はやけに細くて、一目で栄養が足りていない事が分かった。珍しい緑色の目は少しだけ赤くて、泣いたあとがあった。

 どことなく怯えたような、不安そうな表情が出会った頃のハンナを思い出させて、ハンナがその子を放っておけなかった気持ちが何となく分かった気がした。

 話を聞くと、両親は彼女が幼い頃に亡くなったという。ハンナとよく似た境遇に、俺も他人事とは思えなくなってしまった。

 翌日には城で彼女の面倒を見ていたジル君が迎えに来てくれて、何とか丸くおさまったのだが・・・・・。

 それ以降もフィリスとは交流があり、年に何度かはうちに遊びにきたり、ハンナや娘達とは手紙の交換もしたりしている。

 フィリスは竜王様が盟約の花嫁と式を挙げたのと同じ年に、ジル君と結婚した。

 竜王様と同じ年に結婚したがるカップルは多く、当時結婚式の会場は朝から晩までどこも予約でいっぱいだった。

 奇しくも盟約の花嫁の瞳の色がフィリスと同じ緑色だということで、フィリスとジル君の結婚式はそれはもう盛り上がったものだった。


「綺麗に拭いたし、アルコール消毒もしといたから。」

 居間に行くと、昔子供達が使っていたベビーベッドが置いてあった。

「おっ、意外と綺麗に残ってたな。これなら大丈夫だろう。」

 木枠に多少ひびが入っているが、今日一日使うくらいなら問題ないだろう。

「楽しみねえ。やっとフィリスの赤ちゃんが抱けるのね!」

 水仕事をしていたのか、タオルで手を拭きながらハンナが居間に入ってきた。

「・・・ああ、そうだな。本当に楽しみだ。」

 若くして結婚したフィリスだったが、残念ながら子宝にはなかなか恵まれなかった。

 幼い頃に両親と別れ、長い間一人だったフィリスに早く子供ができればと、家族が増えればいいのにと、ハンナは我が子の事のように心配していた。

 それがようやく妊娠したと手紙をもらったのが一昨年の事。

 その年は竜王様の花嫁も懐妊したと発表があり、結婚式も同じ年だったから何かの縁でもあるのかと不思議な気持ちになったものだ。

 ただ体調が悪く、医師からできるだけ動かないように言われているため、しばらく会いに行けないとも書かれていた。

 ハンナは何度か見舞いに行きたいと手紙を書いたが、事情があってどうしても来てもらえないと、生まれたら必ず子供の顔を見せに行きますという返事が返ってくるだけだった。

 もしかしたら、もう自分達に会うのは嫌なのかも知れないとも思った。

 生まれた後も、まだ体の調子が良くないからとなかなか会いに来てくれなかったから。

 考えてみればこの十五年、フィリスやジル君の方から遊びに来てくれることはあっても、二人の家に招かれたことはなかった。

 みんな寂しく思っていた所に、先日嬉しい手紙が届いた。

 やっと許可が下りたので、子供を連れて遊びに行きます、と。

 許可が下りたというのは、医師の許可ということだろうか。だとしたら、本当に体調が悪かったのかも知れない。

 ハンナは三人産んで妊娠中も産後も元気だったから想像できないが、元々出産は命がけなのだ。

 フィリスは子供ができにくかったし、かなり危険な状態だったのだろうか・・・・。


「ねえお母さん、離乳食とか用意しとかなくていい?ほら、果汁とか・・・」

 台所から出てきたミリーは、出されたベビーベッドを見て嬉しそうな顔をした。

 ミリーは末っ子だからか、兄妹の中でも一番赤ん坊をだっこするのを楽しみにしている。

 ハンナと目を合わせて何となく微笑みあっていると、玄関からノックの音がした。

「お母さん、来たみたい!私、出るね!」

 エリーが声を弾ませて廊下を走っていく。その後ろを、表情を緩ませたロンが早足で追いかけていった。

 それを見たミリーが、遅れまいと慌てて二人を追いかけていく。

 三人とももういい大人だというのに、こういう落ち着きのない所は変わらない。

「いらっしゃいっ!うわぁ、可愛い!名前、なんていうの?」

「フィリスお姉ちゃん、ジルさん、久しぶり。」

「二人が来ると思って、今日は腕によりをかけてご馳走作ったの!楽しみにしててね!」

 エリーが第一声を発すると、返事が聞こえるより前にロンが話し出す。それに負けまいとしてか、ミリーも果敢に会話に入っていく。

 いつにもまして騒々しい子供達の後ろからハンナと顔をのぞかせると、久しぶりに会うフィリスが嬉しそうな笑みを見せた。

「ハンナさん、グラッドさん!お久しぶりです!」

「フィリス、ジル君、久しぶりね!さあ、中に入ってちょうだい。」

 ハンナの言葉に、フィリスとジル君は軽く頭を下げて家の中へと入った。


 ・・・・・それにしても会うたびに思うが、この二人は本当に見た目が変わらない。

 大人になればある程度そう簡単に顔が変わる事はないが、十五年前からさほど変わっていないような気がする。

「どうかしましたか?」

 気がつくと不躾に顔をジロジロと見てしまっていたのか、ジル君が首をかしげた。

「いや、失礼。二人とも相変わらず若いなと思って・・・。」

 当時子供だったエリーとロンはとっくに成人し、初めてフィリスに会った時は赤ん坊だったミリーももう来年には結婚できる年齢になる。

 フィリスはもう三十過ぎのはずだが、見た目はへたしたらエリーよりも若く見えた。

 ジル君はクスリと笑った。

「魔術師は、総じて見た目の老化が遅いんですよ。フィリスは元々童顔だから、そう見えるかも知れませんね。」

「へえ、そうなのか。魔術師っていうのは、得なんだな。確かに、フィリスは可愛らしい顔してるからな。子供はどっちかといえばお母さん似かな?」

 夫婦共に髪は茶色だから、当然子供も髪は茶色だった。ただ、目の色は母親に似たようで、綺麗な緑色の目をしていた。

「ええ、そうですね。よく言われます。」

 そう言って、ジル君は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 父親に似ていないと不満に思う男も多いが、ジル君は違うようだ。


「フィリス、体の方は本当にもう大丈夫なの?無理してここまで来なくてもいいのよ?」

「もう大丈夫です。本当はもっと早く会いに来たかったんですけど・・・・。」

「いいのよそんなの、気にしないで。それで、この子の名前はなんて言うの?」

 居間につくと、さっそく赤ん坊の争奪戦が始まった。

 最初はもちろんハンナ、それからエリー、次がミリー。ロンは抱っこするのを怖がって、俺は少しだけ抱かせてもらった。

「アレスです。」

「アレス・・・そう、いい名前ね。」

 最近生まれた男子には、アレスという名は実は多い。

 竜王陛下のお子は、名をアイレオスと名付けられた。それにちなんで、アレスという名を子供につける親達が続出したのだ。

 エリーとミリーは倉庫から昔のオモチャまで持ち出してきて、可愛いアレス君の気を引こうと必死だ。

 そんな様子を、ロンと俺とジル君は少し離れた場所で眺めている。

 こういう場は女達が主役であって、男の俺たちはただ黙って女達が楽しそうにしているのを眺めているしかない。

「それにしても、フィリスも赤ん坊も元気そうでよかったよ。みんなで心配していたんだ。・・・ジル君、本当に、その・・・・・本当に大丈夫なのか?もし何か支援できることがあれば遠慮せず言ってくれ。」

 見た感じは何も問題なさそうだが、産後八ヶ月も容態が安定しないというのが気にかかる。

 フィリスに何か後遺症でも残っていないのか、子供は健康体なのか。直接聞く事ははばかられ、曖昧に問うた。

 ジル君は驚いたように目を丸くしたあと、ふっと息をはいて微笑んだ。

「二人とも健康そのものですよ。万が一がないよう、念のため休ませていただけですから。フィリスは早くハンナさんに子供の顔を見せたがっていましたが、俺が止めました。ご心配をお掛けしてすいません。」

「そうか。いや、それならいいんだ。変な事を言ってすまなかった、忘れてくれ。」

 ジル君も不思議な青年だ。まだ若いが、彼に任せておけば大丈夫だという、不思議な安心感を周囲に与えるようだ。

「でもさ、ジルさんが仕事の時はどうしてたの?フィリスお姉ちゃんと赤ちゃん二人だけ?」

 話を聞いていたロンが心配そうにジル君にたずねた。

「ああ・・・知り合いに頼んでいたから。」

 簡潔な返事に、これ以上突っ込んで欲しくないのだろうと思ってロンに目配せした。

 ロンは俺のサインに気付いてくれたのか、そうなんだ、と一言だけ答えるに留まった。


「アレス君、眠いみたい」

 ミリーの言葉に赤ん坊を見ると、うとうとと目を閉じたり開いたりしている。

 これだけ大勢で囲まれては、疲れるのも無理はない。

「少し寝かせてやろう。ロン、ベビーベッドを隣の部屋に運んでくれ。」

 何となく居間に置いていたが、こう賑やかだとゆっくり休めないだろう。

 ロンがソファーから立ち上がる前に、ジル君がサッと立ち上がってベビーベッドを持ち上げた。

 まるで空箱でも持ち上げるような軽い所作に、思わずジル君の腕を見てしまう。

 そう筋肉が付いているようにも見えないが、着やせするタイプなのだろうか?

「どこに運べばいいですか?」

「じゃあ。こっちに頼むよ。」

 ジル君が運んだベッドに、ハンナが赤ん坊を横たえる。

「抱っこから降ろすと起きちゃったりするんだけど、この子は大人しいわね。」

「はい。でも、寝起きがちょっと機嫌悪くて・・・・・。」

 ハンナとフィリスのような会話を、そう遠くない未来にエリーやミリーがすることになるのだろうか。

 そう思うと、寂しいような、嬉しいような、何ともいえない気持ちになる。


 手紙でやりとりしていたとはいえ、一年以上会っていなかったため話すことは多い。

 気がつけば、夕日が窓から差し込んでいた。

「おっと、もうこんな時間か。」

 赤ん坊連れだし、あまり遅くならないうちに帰った方がいいだろう。そう思った俺は、用を足しに部屋を出たついでに、アレス君の様子を見に隣の部屋へと入った。

 よく眠っているようなら、そっと抱っこして連れて帰った方がいい。移動の途中で泣かれると辛いのは、俺も三人の子供達で経験済みだ。

 慎重にドアを閉めて、ベビーベッドをのぞきこむ。

 まるで気配に気付いたように、小さなまぶたがピクピクと動いた。薄く開いた両目に、今にも起きそうな様子を見せる。

 この子は寝起きが悪いそうだから、一応フィリスを呼んで来た方がいいだろう。

 そう、思った時だった。


 何度かの瞬きの後、赤ん坊の表情が歪み泣き声をあげた瞬間、赤ん坊の体の輪郭がぼんやりと薄くなり、次の瞬間・・・・・赤ん坊よりも一回り大きな、真っ黒な生き物が現われた。

「ンギャーッ!ンギャーッ!」

 その姿に、俺は腰を抜かした。

「なっ、なっ、なっ、なんだこれはっ!?」

 驚きすぎて、一声出すにも息が詰まるようだった。

 全身にびっしりとついた鱗、バタバタと動く皮膜のついた羽。

 ・・・・・間違いない。竜だ!!

 座り込んだままの俺は、後ろから部屋に入ってきたジル君に気がつかなかった。

「こらっ、アレス!落ち着け!」

 ためらいもなく竜の体を持ち上げたジル君は、焦った声でたしなめた。

 それでも、竜の子は興奮したままだ。

「まったく・・・やはり、まだ外に連れ出すのは早かったか」

 苦々しくそう言った後、ジル君は俺の方を気まずそうにチラリと見た後、一瞬の間に姿を変えた。

 ・・・・黒い髪に、見たこともないほど整った容姿。

 竜の子を見るその瞳が、金色の光彩に彩られていく。

「アイレオス、気を落ち着けるんだ。ここでその姿になってはいけない。母さんを困らせることになる。人間の姿に戻れ。父の言う事が分かるな?」

 竜の子の目をじっと見詰めながら、ゆっくりと、言い聞かせるように低い声でジル君が語りかけると、竜の子は次第に落ち着き、暴れるのをやめた。

 ジル君が背中をすっと撫でると、それに呼応するようにその姿がぶれる。

 人間の赤ん坊の姿に戻ったアレス君は、嬉しそうに笑いながらジル君の頬に手を伸ばした。


 ・・・俺の子供達が赤ん坊だった頃は、どんなに俺があやしても母親でなければ手に負えなかった。

 ジル君はすごいな・・・・・。って、そうじゃなくて!

 現実逃避しかけた自分に心の中で突っ込んで、冷静に考えるよう自分に言い聞かせる。

「グラッドさん、このことは、ここだけの秘密にしてもらえませんか?フィリスは、あなた方を本当の家族のように慕っている。遊びに来れなくなってしまったら、きっと悲しむだろうから。」

 顔立ちも声も変わってしまったが、そう言った彼は紛れもなくいつものジル君そのもので・・・・・。

 やっと、全てが頭の中で繋がった。

 初めてフィリスがこの家にやってきた時、どうして城の兵士達がフィリスを探していたのか。

 どうして、フィリスは自分の家に俺達を呼ぼうとはしなかったのか。

 考えてみれば都合のいい話だ。緑の目をした年頃の娘なんて、そう何人もいない。

 それなのに、たまたま緑の目で、たまたま年頃の娘で、たまたま竜王の花嫁と同じ年に子供を産むなんて・・・。


 来れなかったはずだ。フィリスのお腹にいたのは、竜王の子なのだから。

 妊娠中だって、きっと普通の人間と同じではなかっただろう。

 産まれた後だって、泣けばすぐに竜に姿を変えてしまうような赤子を、簡単に外に連れて出ることもできなかっただろう。

 それを、たった八ヶ月で無理を押して会いにきてくれたのは、フィリスが本当に俺たち家族の事を思ってくれているからではないのか。

 そう思うと、心が温かくなって、自然と気持ちが落ち着いてきた。

「・・・心臓が止まるかと思いました。」

 やっとそれだけを口にすると、ジル君はいつもの茶色い髪の青年に戻り、苦笑した。

「今まで通りにしてください。あなた方は、フィリスにとって本当の家族のようなものだと思っています。俺にとっては義理の両親も同然です。」

 そんな風に言われて、今度はあまりに畏れ多くて心臓が止まりそうになる。

「わ、わかりました・・・いや、わかった。この事は誰にも言わない。墓場まで持っていくと約束する。俺たちも、フィリスに会えなくなると寂しい。特にハンナは・・・・・。」

「別に墓場まではいいですよ。時機を見て、いつかは話した方がいいと考えていました。ただ今は、その時ではないと考えています。」

「そうか・・・・・ハンナも事情を知れば、安心するでしょう。」

 敬語が入り混じった言葉に困った顔をしながら、ジル君は頷いた。

「それにしても、こんなに騒いだのにどうしてみんな来ないんだ?」

 竜の声はかなり大きかったし、一軒家とはいえそう大きくない家だ。隣室にいるハンナ達に声が聞こえないのはおかしかった。

「万一の場合を考えて、魔術で音が外にもれないよう、部屋に結界を張りました。起きる前に俺が起こしに来ればいいと思っていたので・・・。」

 なるほど、その前に俺が部屋に入ってしまって、話をややこしくしてしまったのか。

 それにしても、本当に普通の赤ん坊にしか見えないのにな・・・・。そんな事を考えながらなんとなくアレス君をぼんやり見ていると、部屋の扉が開いてフィリスが姿を見せた。

 


「アレス、起きたのね。・・・泣いてなかった?」

 フィリスは心配するように一瞬俺を見てから、ジル君から赤ん坊を受け取った。

「ちょっと泣いたけど、大丈夫だったよ。フィリス、そろそろおいとましよう。」

「うん。グラッドさん、今日はありがとうございました。」

 ジル君の言葉に何もなかったと安心したのか、フィリスはほっと息を吐くと俺に向き直って頭を下げた。

「こっちこそ、アレス君を連れてきてくれてありがとう。子供達が赤ん坊の頃を思い出して、楽しかったよ。」

 

 いつものように、家族で家の外までフィリス達を見送る。

「今日は本当にありがとう。フィリス、無理はしなくていいから、また気が向いたらアレス君と顔を見せにきてちょうだいね。」

「はい、必ずまた遊びに来ます。」

 フィリスが盟約の花嫁だと知ったら、ハンナはきっと驚くだろうな・・・・。

 もし俺のようにアレス君が突然竜の姿に変わる所なんて見てしまったら、心臓麻痺を起こしてしまうかも知れない。

 俺もそうだが、ハンナももう若いとはいえないのだ。

「じゃあフィリスお姉ちゃん、アレス君も、またね!」

 エリーがアレス君の小さな手と握手すると、続いてミリーとロンもアレス君と握手を交わした。


 小さくなっていく後姿に手を振っていた子供達は、フィリス達の姿が見えなくなると満足したように家に入っていった。

「フィリスも赤ん坊も元気そうで良かったわね。・・・次はエリーの番かしら。それとも、ロンの方が早かったりして。」

「まだ二人とも、そういう話は聞かないからなあ。でも、孫ができたらこんな感じなんだろうな。」

 竜王陛下の御子を孫のように思うのは、不遜かも知れないが。

「孫が女の子なら、アレス君にもらってもらおうかしら?フィリスなら嫁姑の心配もなさそうだし、家族づきあいも楽よね。」

 そう言って笑うハンナに、引きつった笑みを返す。

 知らないという事は本当に無邪気で恐ろしい。冗談でも笑えない自分に、いつか教えてもらえるならそれまでは知らないままでいたかったと思ってしまう。

「・・・まだまだ先の話さ。」

 ハンナは俺の言葉におかしそうに笑って、目を細めた。

 

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