事件の終わり
翌日。学園から帰ってきたセレーネ達の元にラングリドからの報告書が届いていた。セレーネ達は、部屋に戻ってその報告書を読む。
依頼したと思わしき対象全ての捕縛に成功。
その後の調査で、更に他の犯罪集団に依頼を企てていた事も判明。後日、犯罪組織は壊滅させるに至った。
動機としては、先の報告書にもあった通り、動機はセレーネ、フェリシア、シフォンへの復讐。自分達が選ばれし者なのだという主張を常に続けている。自らの行動の正当性を喚いているため、それが証言になり得る。
これまで住んでいた場所の調査により爆弾の製造をしていた事が判明。爆弾は、他にも造り売りさばいていた模様。そちらの調査は引き続き行うものとする。
またセレーネが真祖であるという情報を得たルートに関しても判明。学園の教師が情報を提供していた模様。教師に関しても捕縛し聴取したところ、学園でセレーネの会話を盗み聞いたとの事。こちらは学園の責任問題としても追及していく事になる。
また今回の犯人達に反省の色はなく、情状酌量も認められないと判断している。また、多くの死者、負傷者を出し、国民の暮らしや国益に繋がる重要な輸送路を一時的に使用不能状態にさせた事から、終身刑もしくは極刑とする可能性が高い。
報告書に書かれていたのは、大体そのような事だった。
「終身刑か極刑……妥当な罰?」
「そうですね。魔動列車による輸送網の寸断により、物資の輸送が遅れるなど、多くの場所で被害が出ました。加えて、魔動列車そのものの破壊及び乗客への大きな被害もあります。全員極刑になる可能性が高いでしょう」
カノンの考えとしては、終身刑もないというものだった。そのくらい起こした事件の被害が大きすぎるためである。乗客にもたらした被害もそうだが、それ以降に起こっている被害に関しても甚大なものが多い。建設などの資材、薬などの材料、誰もが消費する事になる食料など、流通が滞った事で出る被害はこれらに及ぶ。これにより、馬車などでの輸送が必要となり、一時的な物価の上昇なども起こる。
復讐によって引き起こした被害は、かなり大きなものだった。
「罪を平等に裁くとする以上、そこは免れないと考えるのが良いのね。寧ろ、極刑になってホッとしている自分がいるわ」
「それは、ここにいる全員が同じだと思いますよ」
自分の考えが間違っているのではと思ってしまい、フェリシアの声が暗くなった事に気付いたマリアが安心させるようにそう言う。実際、ここにいる全員が同じ気持ちだった。相手が同級生だろうとそう思う気持ち変わりは無い。セレーネとフェリシアからすれば、恨みこそあれ同情する余地など全くないからだ。
「これで解決?」
「はい。多少気になる事がありますが、この事件に関しては、これで終わりです。私達が手を出す必要もありません。仮に終身刑になったとしても、一生牢獄から出る事は出来ないので、極刑とそこまで変わり有りません。寿命で死ぬまで生き残るという問題があるだけです」
「それを問題と言ってしまうのね……」
「まぁ、早く死んで欲しいと思っているわけですから仕方ないですよ」
「確かにそうね」
元同級生だろうが、容赦のないフェリシアだった。
そんな中で、報告書をベッドの上に捨てたセレーネが立ち上がる。
「それじゃあ、シフォンとジーニーに報告しに行こう」
セレーネはそう言って笑った。事件の首謀者、実行犯共に捕縛し、セレーネ達を狙う者はいなくなった。シフォンとジーニーの死のきっかけになった馬鹿達も死ぬ事になる可能性が高い。
全てが終わった。だから、改めてゆっくり眠って大丈夫だという事を伝える必要がある。
「そうね。なら、花も買っていかないといけないわね」
「では、外着に着替えましょう」
「クロ、外出するよ」
「にゃ~」
カノンがセレーネとフェリシアの服を用意し、マリアが寝ているクロを起こすために身体を撫で回す。起こされたクロは返事をしながら、マリアの膝に頭を乗せる。撫でるなら頭を撫でろという事だった。取り敢えず、起きた事には変わりないので、マリアはクロを撫でながらセレーネとフェリシアが着替え終わるのを待つ。
そして、着替えが終わったのと同時に、花屋に寄ってから、二人のお墓参りに向かう。クロを連れて移動しているので、周囲からの視線が集中しているが、セレーネ達は大して気にしていなかった。
二人のお墓に花を供えてから、皆で祈る。
「事件が解決したよ。だから、もう心配しないで大丈夫。ちょっと何かが残っているみたいだけど、私達の事件とは関係ないってさ」
「二人には安らかに眠って欲しいけれど、時々見守っていて。その方が安心出来るから」
セレーネとフェリシアは、シフォンとジーニーにそう語りかける。二人からの返事はない。だが、セレーネとフェリシアは、二人が微笑んでいるような気がしていた。二人への祈りを終えた四人は立ち上がって、二人の墓から離れる。
「にゃ~」
クロは二人のお墓に顔を擦り付けて、虚空を見つめる。そこで、セレーネはクロが付いてきていない事に気付いた。
「クロ~! 帰るよ~!」
「にゃ~」
クロは虚空に向かって鳴いてから、セレーネの元に戻ってきた。セレーネは、クロの首を撫でて迎える。そして、クロが止まっていた理由を訊く。
「何かあったの?」
「にゃ~」
クロは首を振りながら鳴く。セレーネはそれを否定と捉える。横に振っている時点で否定以外にはあり得ないからだ。止まっていた理由にはならないので、そこに疑問が残るが、セレーネには訊きようがないので、そのまま受け入れつつ、ちらっとカノンを見る。
視線に気付いたカノンは、セレーネに分かるように小さく頷いた。つまり、クロは何でもないと言った事になる。自分で確かめる方法はないが、カノンを介して確認する事は出来る。
「そう? でも遅くなっちゃ駄目だよ」
「にゃ~」
クロは分かったと言うように首を縦に振ると、セレーネに顔を押し付ける。セレーネが一頻り撫でると満足したようにセレーネを咥えて背中に乗せた。
「フェリシアも乗る?」
「私も乗って大丈夫?」
「にゃ~」
クロは大丈夫という風に頷いてから、身体を伏せてフェリシアが乗りやすいようにする。セレーネも手を伸ばしてフェリシアを引っ張り上げた。そして、自分の前に乗せる。二人が乗ったのを確認して、クロも立ち上がりカノン達の後ろを歩く。
セレーネは前に座っているフェリシアに抱きつきながら、クロに乗って屋敷まで帰って行った。




