情報を求めてダンジョンへ
そうして、カノンが調査に向かう日がやって来た。セレーネは、ギリギリまでカノンの抱きついて離れなかった。
「お嬢様。いないと言っても、一ヶ月程です。ちゃんと帰ってきますから」
「むぅ……」
カノンが頭を撫でながらそう言っていると、ゆっくりとセレーネが離れる。そして、近くにいるフェリシアの腕に抱きついた。
「無事に帰ってね」
「はい。では、行って参ります」
「気を付けて」
セレーネ、フェリシア、マリアに見送られて、カノンは屋敷を後にする。カノンを見送った後も、セレーネはその場から動こうとしなかった。いざこの日が来ると、寂しさと不安が胸の中に出て来ているのだ。
そんなセレーネの頭をマリアが撫でる。
「ほら、部屋に戻るよ。ここで待っていてもカノンさんはすぐに帰って来ないからね」
「むぅ……」
「むぅ、じゃないでしょ。カノンさんに心配掛けるつもり?」
「……分かった」
素直に頷くセレーネをフェリシアが撫でると、そのまま自分の部屋へと向かっていった。寂しさと不安は消えない。だが、それでもカノンに心配を掛けたくないという一心で、セレーネは我慢する事にした。
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セレーネが動き始めたのを、眷属としての感覚ではなく猫人族としての感覚で確認したカノンは、そのまま騎士団の本部へと向かう。
本部には何人かの騎士や冒険者が集まっていた。その中で、すぐにスピカを見つけたカノンは、すぐにスピカの元に来た。
「スピカ」
「カノン。早いね」
「大分ギリギリだと思うけど」
カノンは集合予定時間の五分前に着いているので、そこまで早く来ていないのではと考えていた。だが、他の冒険者がまだ集まってきていないので、どちらかと言えば、早い方になる。
「お嬢様が放してくれなくて」
「慕われている証拠でしょ? 私は良い事だと思うな」
「まぁね。そこがお嬢様の可愛いところだしね」
「嬢ちゃんがどうかしたのか?」
二人の元にベネットが合流する。騎士団の装備を纏ったベネットは、いつもよりも重装備になっていた。
「お嬢様が可愛いって話。それよりその装備で行くの?」
「ああ。今回は盾役だからな。後ろからナタリアがチクチク魔術を撃つだろ」
「人を陰湿な人みたいに言わないでくれる?」
苛立たしげにそう言いながら、ナタリアがやって来た。その手には紙束が握られている。
「ダンジョンの情報と敵の情報を貰ったから、それぞれで読んでおいて」
ナタリアは、全員に紙を渡していく。そして、改めてダンジョンの構造と敵の数の予想などを確認していった。
「全三十層のダンジョンで、そこの安全層である十五層に本拠地があるみたい。私達はそこまでの最短ルートを通って、本拠地を襲撃。なるべく大人数を捕らえて、情報源を残す。その後、情報探しは騎士団に任せて、私達は敵の殲滅に掛かる。この時には十分な数を捕縛出来ているものとした予定。この通りにならない事もあり得るから、その時は捕縛優先。魔物との戦闘は最小限にして消耗を減らす。良い?」
「おう」
「うん」
「分かった。捕縛は物理? 口を利ければそれで良い感じ?」
カノンの質問にナタリアは苦笑する。
「上からは、口が利ければそれで良いってさ。でも、なるべくなら生かしておきたいから、魔術で捕縛する。ちょうど意識を封印する魔術が出来たばかりだから」
「なんだそりゃ?」
「意識を眠った状態のまま維持するって事。私が封印を解かない限りは、永遠の眠りになるかな。カノンとスピカにも教えておくから、それで捕縛していくよ。これが一番安全な方法だと思うしね」
「まぁ、そうだな。つまり、俺はその間に守っていれば良いって事だな」
「そういう事。カノンは臨機応変に、どちらかの援護をして」
「分かった」
「よし。それじゃあ、出発!」
ナタリアの号令で、カノン達は件のダンジョンへと向かう。その魔動列車の復旧がまだなので、その行程は馬になる。魔動車による移動も検討されたが、数が揃えられないために却下された。ベネット、ナタリア、カノンが馬を操り、スピカがカノンの馬に乗る。街を経由する毎に馬を変えていき、ダンジョンまで着くのに二日を掛けた。
近くの街で休みを挟んでから、ダンジョンの中に入っていく。ダンジョンの構造は、遺跡のようなもので、石のレンガが積み重なって形成されているようだった。
「一番乗りは、俺達か?」
「一番先に出発したからね。元々そういう予定だったし。ベネット先頭。カノンとスピカが中で、私が最後尾ね」
「うん」
「分かった。取り敢えず、この先の通路に三体のゴブリン。駆け抜けるなら、絶対に鉢合わせるよ」
「一気に十五層まで駆け抜けるから、倒して進もう」
ナタリアの判断に従い、カノンは短剣を抜く。戦闘を即行で終わらせるのなら、魔術の使用はない。全員で走っている間に、カノンが先行して、緑色の肌に尖った耳をした小人のような魔物であるゴブリンの首を刎ねていく。ゴブリン達は何が起きたのかも分からずに倒れて、灰になった。
(ダンジョン特有の現象。死んだものの身体を分解して魔力を吸収する。改めて見ると、怖いな)
ダンジョン内部で生物が死亡した場合、その遺体は残らない。ダンジョンが魔力を吸うタイミングで、その身体が灰へと変化するからだ。そうして残った装備などがダンジョンに取り込まれて、宝箱に入れられる。ここに吸収した魔力を当てる事で、魔導武器などに変化する。それがダンジョンというものだった。
ゴブリンを倒したカノンの元にナタリア達が合流する。そして、再びベネットを先頭にして移動へと移る。カノン達が進むルートは、十五層への最短ルート。ベネットは、そのルートを既に頭に入れているので、地図を確認する事なく移動を続ける。
「この程度の魔物だったら、私でも十分に倒せるから、魔物がいたら先行する」
「了解。このダンジョンの魔物は、ゴブリン、スライム、吸血蝙蝠の三種が基本だから」
「うん。分かってる」
そこら辺の情報は、ここに来るまでに全員頭の中に入れている。なので、カノンも油断はない。カノンの索敵と先回りにより、足を止める事なく進み続けて十層目に辿り着いた。
そこには大型の魔物であるジャイアントスライムが道を塞いでいた。カノン、ナタリアは、容赦なく魔術を放ってジャイアントスライムを消し飛ばした。
スライムを倒すには、内部の核を砕くか魔術によって身体を消し飛ばすしかない。楽な方法がどちらかと言えば、確実に魔術を使う方なので、ここでは迷いなく魔術を使って倒していた。
そうしてダンジョンの十五層まで一気に降りる。




