表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/423

セレーネ、フェリシアの研究

 翌日。学園に来たセレーネは、フェリシア達と研究に関して話していた。


「空間魔術で収納を作る……とてつもなく難しい事をしようとしているのね」

「で、でも……出来たら便利だね……」

「うん。だから、頑張ろうと思ってる。一応、アイデアは色々と出してるけど、まだちゃんとまとまってないんだよねぇ」


 セレーネは机に上体を投げ出してため息をつく。カノン達に止められるまで、考えられるものは全て書き出していたが、それらはまとまりのないものでしかなかった。なので、これからどう整えて形にするかを考えなければいけなかった。

 そのアイデアを貰うために、昨日の紙はそのまま学園に持ってきて、レイアーに渡しておいた。基礎的な科目はカノンが授業を担当するので、レイアーにも授業を準備する時間の他に多少空いている時間がある。そこで読んでもらおうと思ったのだった。


「フェリシア達は?」

「私は迷っているところね。一応、候補として回復魔術に興味があるから、そこを調べてみようかと思っているわ」

「わ、私は、守るための魔術の開発を頑張ってみようかなって……」

「ふ~ん……シフォンらしいね。でも、二人も難しそう。既存魔術が沢山ある領域に手を出そうとしているんでしょ? 私は諦められている研究だから、真っ直ぐ研究出来るけど、色々と調べる事が多そう」


 セレーネがそんな事を言うので、フェリシアは呆れたような表情で、シフォンは苦笑いしながらセレーネを見ていた。


「諦められている研究を進めようとしているセレーネが一番おかしいわよ」

「そう? 他の人が諦めたからって、そこで終わりとは限らないでしょ」

「その前向きさが羨ましいわ。まぁ、何かあれば互いに協力しましょう」

「う、うん……そうだね……ぶ、分野が違うけど、参考に出来るかも……」

「確かにね。何がヒントになるか分からないもんね」


 セレーネ達が互いに協力し合う約束をしていると、カノンが教壇に立った。そして、同時に予鈴がなり、授業が始まる。研究を進めるためにも、基礎科目の知識を深めるのも大切だった。そして、カノンの授業が終わり、魔術の授業となってレイアーが教室に来た。

 レイアーはセレーネの元に来ると、渡してあった紙束を机に置く。


「取り敢えず、一通り読みました」

「どうだった?」

「可能性としては、ゼロではないとだけ。まずは、先行研究を読んでみるのが良いと思います。マリアさんが申請していらっしゃったので、そこは大丈夫だと思います。失敗する可能性もありますが、やってみても良いかと」

「やった。頑張ってみる」

「はい」


 レイアーからも後押しされた事によって、セレーネは、研究を本格的に進めていく事を決める。レイアーによる実戦的な魔術の授業、カノンの基礎科目の授業を受けつつ、図書室などに通って知識を蓄えていく。

 セレーネはマリアが用意してくれた先行研究の論文もしっかりと読み込んでいた。それを受けても、セレーネは絶対に無理だとは思えなかった。何故なら、全部の研究が理論だけで終わっており、実験的な事までもいっていなかったからだった。それだけ無理な理由が揃っているとも言えるが、それが諦める理由にはならなかった。

 そうして一ヶ月経ったが、セレーネはまだ形も出来ていなかった。自室のベッドで寝転がりながら、空間魔術の一つである【座標指定(ざひょうしてい)】を使っていた。

 【座標指定】は、空間内の一定範囲を指定して半透明な箱を作り出す魔術。次に発動する魔術が、その箱の中に放たれる事になる。しかし、消費する魔力が通常よりも多くなる。消費する魔力の量は、指定する座標の大きさによって変動する。


「座標を追従させる方法は出来たんだけどなぁ……」


 セレーネがゴロゴロ転がると、座標もそれに合わせて動く。自分からの距離を指定して作り出す事で、【座標指定】が動くようにしたのだ。


「問題は別空間かぁ……う~ん……」


 セレーネがゴロゴロとしているのを遊んでいると考えたのか、クロが前脚を使ってセレーネのゴロゴロを加速させていった。セレーネは、ゴロゴロするのを止めてクロの背中に乗って撫でる。


「ク~ロ~!?」

「にゃ~」


 セレーネが背中に乗った事で、クロは嬉しそうにセレーネの部屋を歩き回る。


(いや、遊ぼうとしていたわけじゃないんだけど……まぁ、良いか)


 楽しそうなクロを見て、しばらくクロに乗って考えようと決めたセレーネは、クロを撫でながら移動している【座標指定】を見ていた。


(ここまで動き回っても問題なし。そもそも指定しているだけだから、物体干渉もない。つまり、入口の設定を自分の近くに設定すれば、中身が置いて行かれる可能性は減る。そこからの問題は別空間の生成。既に別空間があればまだしも、自分だけの別空間となると色々と話が変わってくる。この別空間が厄介過ぎる……魔力を空間に置き換えるのが難しい……はぁ……)


 内心ため息をつきつつも、クロを撫でているからか心は落ち着いていた。ひたすら歩いて満足したクロはその場で横になるので、セレーネも床に投げ出される。

 クロは、そんなセレーネの身体に頭を乗っけて、ゴロゴロと鳴く。そんなクロを撫でてあげながら、セレーネは頭の中で、これまでに出したアイデアの再考をしていくのだった。


────────────────────


 同時間。フェリシアは、自室の机に向かって本を読んでいた。その本は、回復魔術に関する論文などだ。最新のものから古いものまで、フェリシアは全体的に目を通していた。

 論文を読み終えると、机から少し離れて身体を伸ばす。


「ふぅ……回復魔術もかなり難しいわね……正直、現状の魔術で完璧と言えば完璧なのよねぇ……」


 自分達の命に関わる事という事もあり、回復魔術に関してはかなり研究が進んでいた。そのため、ほとんどの魔術が最適化されているのである。


「選んだのは失敗だったかしら……」


 まだ一年生なので、ここから研究内容を変えても問題はない。フェリシアには、回復魔術に固執する理由がないからだ。


(便利なものなだけに、かなり研究が進んでいるのよね……もう少し別のアプローチをするべきかしら。セレーネみたいな……空間……空間内を回復魔術で満たす……)


 そこまで考えてから、フェリシアは本棚に向かい、回復魔術の一覧が載っている本を取り出す。


「回復魔術の性質上、人体などに直接影響させる事が重視されてる。水属性なら液体に触れた対象。光属性はもっと狭くて、使用者が掛けている対象。火属性は炙っている対象。空間魔術トの組み合わせは特にない。当たり前よね。空間全体に指定するって事は、かなりの魔力が持っていかれるもの。それこそ、上位属性である神聖属性の領域になるわ。神聖属性は、空間を聖域に指定する事で成り立つと言われている。聖域指定は、そのまま空間魔術の【座標指定】に似ているわよね。つまり、神聖属性……いや、神聖魔術の本質は、回復魔術と空間魔術の組み合わせというところかしら。確かに、それなら上位属性になるのも頷ける。普通は、魔力の消費量も多くなる……ん? でも、神聖魔術の効果は空間よりも個人に与えられているわよね。空間内の人に対して行う魔術だったはず。聖域指定は、あくまで神聖魔術を使う下準備。その後、聖域内の人に絞って回復させているという事かしら。それじゃあ、やっぱり空間全体に広げる魔術はない?」


 フェリシアは、そこまで考えてから紙を取り出してメモを取っていく。今考えた事の全てを書き終えると、メイドに簡略化したメモを渡して、これに該当する本を調べて貰う。


「空間浄化はあるのよね。これは殺菌という意味が強いのかしら。この空間内の全てを回復する事がどういう事になるのか……消費魔力に関する心配は置いておいて、もっと考えられる事があるはず……」


 本が見つかるまでは、フェリシアも推測をしていくしかない。だが、研究をしているこの時が、フェリシアにとって幸せな時間の一つである事は間違いなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ