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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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高等部入学

 二年生になって二ヶ月。セレーネ達は、ミルズの研究室に来ていた。その理由は、研究成果を見せるためだ。ミルズとレイアーでレポートを読んでいる。その間、セレーネ達は椅子に座って、ただ待ち続けた。

 先に読み終えたのは、レイアーの方だった。


「予想以上にスムーズに進んでいるようですね。まだ基礎魔術としては数えられなさそうですが、大分シンプルになっているとは思います。魔力の消費量をもう少し抑えられると良いのですが、中々に難しそうです」

「ふむ。そうだな。レイアーの意見に概ね同意だ。空間指定と斬撃を掛け合わせている訳では無く、空間を薄く断絶させて空間上にいる物質を断っているか。その一撃一撃が必殺になると」

「使って見て思ったんですが、構築から発動まで時間が掛かります。しかも、指定した空間には違和感を覚えますし、構築の時点で座標を固定するので、即座に変更する事が出来ないです。だから、そもそも当てる事自体が難しい魔術だと思います。それに、使えるタイミングが限られてると思います。内部にいるものは問答無用で攻撃対象になるので」


 セレーネがミルズに説明する。フェリシアの指導により、セレーネは最近丁寧な言葉遣いが出来るようになってきていた。


「ふむ……まぁ、実践するのは重要ではあるな。だが、魔力が通常の人族と比べて多いからって、何でも実践しようとするな。良いな?」

「は~い」


 怒られた内容はご尤もだったので、セレーネも素直に頷いた。


「半年でここまで出来るとは思わなかったな。これなら卒業までに終わる可能性が出て来たな。この調子で励め」

「は~い」

「はい」

「は、はい……」


 ミルズは、あまり口出しせずにセレーネ達の自主性に任せていた。頼りにされれば教えるつもりだが、この半年でミルズやレイアーに質問しに来た事は片手で数えられる数しかない。その他は、自分達で本を読み調べて行く事によって研究していた。

 この自主性にミルズは大いに満足していた。人を利用して知識を深めるのも一つの手だが、自分で調べてああでもないこうでもないと試行錯誤していく事自体が、良い学習法だと思っていたからだ。

 セレーネ達は、自分達でどんどんと研究を進めていく。長期休みには、クリムソンやウルトラマリンの別荘などに宿泊しながら遊びと研究のどちらもやっていき、授業なども良い成績を残していった。セレーネとフェリシアは、元々成績が良かったが、シフォンもジーニーによる教育で成績を大きく伸ばしていた。さらに、三人はしっかりと研究を進めているという事で、内申点が大幅に加点されている。

 これに触発されて、他の生徒もやる気も上昇している。そんな中心人物であるセレーネ達に絡もうと思う生徒は、もう居ないのであった。


────────────────────


 そうして、二年弱の月日が経った。セレーネ達は身長が伸び、もはや移動のためにカノンに抱っこされる事もなくなっていた。セレーネとしては、普通に抱っこして欲しいと思っており、屋敷の中ではせがむことが多い。カノンは、困った表情をしながらもセレーネを抱っこする事が多い。カノン自身もセレーネを抱っこするのは癒されるので構わないと思ってしまうのだ。

 マリアも成長しており、大分大人びていた。だが、カノンが胸も成長しているのに対して、自分はあまり成長せず危機感を覚えていた。

 そんな風に成長しながらも、セレーネ達の関係は変わらず仲良しのままだった。セレーネとフェリシアも通常の友達よりも遙かに近い関係性だが、一線は越えずにいた。

 そして、肝心の研究は完全に形になっていた。

 セレーネ達の考え通り、この魔術は指定範囲の空間を直線で断絶していくことで、空間内にいる対象を切断するという魔術だった。この断絶を無数に繰り返す事から、斬撃を無数に放つという風な勘違いが生まれたのだと考えられる。

 基礎魔術にまで落とした結果、一立方センチの空間に一度断絶を起こすというところまで下げる事が出来た。ただし、これだけでも他の基礎魔術よりも遙かに多い魔力を消費する。そこまでの解決は出来なかった。だが、本来の目的の基礎化は出来ているので、研究としては成功の部類に入る。

 そうして、中等部を成績上位で卒業して、高等部へと進学する日がやってきた。制服も替わり、新しい日々がやって来る。


「フェリシア!」

「わっ!? セレーネ」


 高等部の入学式でフェリシアを見つけたセレーネは、即座に抱きついた。フェリシアは、少し驚きつつもしっかりとセレーネを受け止めている。


「フェリシア、高等部の制服も似合ってるね。可愛い」

「セレーネも可愛いわよ。でも、もう少しお淑やかにならないものかしらね」


 三年の付き合いになれば、フェリシアもこの程度では赤面しない。だが、嬉しい気持ちはあるので自然と笑みを浮かべる。

 逆にフェリシアからお淑やかにと言われたセレーネは、少し頬を膨らませる。


「私はこれで良いもん。フェリシアは、こういう私じゃ嫌だ?」

「はぁ……そんなわけないでしょ」

「えへへ!」


 セレーネは嬉しそうにフェリシアに抱きついていた。


「け、結局、二人が変わる事はなかったですね……」

「そうだね。まぁ、変わらず仲良しなのは、良い事だよ」


 シフォンとマリアは、相変わらずな二人にそんな感想しか出てこなかった。カノンは、ただ苦笑いするだけで、ジーニーも相変わらず無表情だ。全員変わっていないように見えて、シフォンだけは、出会った当初よりも狼狽える事が少なくなっていた。セレーネとフェリシアと過ごしている内に、精神的にも成長していったのだ。既に弱々しいシフォンの姿は無くなっていた。

 高等部の入学式が終わり、クラス分けによって配属された先の教室へと向かう。その教室には、セレーネ、フェリシア、シフォンの三人しかいなかった。


「このクラス分けって、ミスって訳じゃなかったの?」

「ミスにしても全員が同じ紙を貰っている時点で、先生達がミスに気付かないわけがないじゃない」

「えぇ~……じゃあ、なんで三人だけなの? 高等部だとよくある事?」

「よくはないわね。でも、私達は入学試験も全て良い成績を残しているわ。だから、特待生として迎えられたのだと思うわ。そう思うと、三人だけというのにも納得がいくもの」


 三人は、それぞれカノンやジーニーによる授業を受けており、それは高等部の内容に入っていた。既に、高等部一年の内容のほとんどは学び終えていた。特に三人が揃っている時には、カノンが授業をしていたので、全員が好成績を残せるだけの学力を持っている。

 なので、入学試験なども満点を取っている。その事が考慮されて、特待生として受け入れられたのではとフェリシアは考えていた。

 そんな三人の元に担任となる教師が教室に入ってきた。その教師は、三人もよく知ったレイアーだった。


「あれ? 先生だ。じゃあ、担任はミルズ先生?」


 またミルズが二日酔いで死亡状態になっているのではと思い、セレーネがそう言うと、レイアーは苦笑いしていた。


「いえ、ここの担任は私です」

「やった!!」


 セレーネは両手を挙げて喜んだ。レイアーの授業をしっかりと受けられると知ったからだ。


「申し訳ないのですが、セレーネ様のご期待通りにはいかないかと」

「どういう事?」

「セレーネ様、フェリシア様、シフォンさんは、特待生として迎えられました。それだけの学力があるという風に判断されました。私もそう思います。なので、学園側は一つの提案をしてきました。どうぞ」


 レイアーが声を掛けると、カノンが教室に入ってくる。それだけでなく、マリア、ジーニーも入ってきた。


「ん? カノン、マリア」

「ジーニーまで、一体どういう事なの?」

「基礎的な科目は、今後カノンさんが授業されます」

「えっ、良いの?」


 セレーネはカノンに向かって訊く。


「はい。お嬢様達だけですし、お嬢様のお世話という仕事も問題なく出来ますから」


 学園側としては、ここで教師業を経験させて、そのまま教師を続けて貰おうという目論見があった。カノンは教師業を続ける気はないので、全く意味はないが、それでも可能性に縋り付いていた。


「ふ~ん……じゃあ、先生は魔術について授業してくれるって事?」

「はい。魔術の授業をしながら、セレーネ様達が研究する内容のアドバイスをする事になります。かなりの特別措置ですね。珍しい事ですが、この方がセレーネ様達に合っていると判断されてのことです。取り敢えず、今日の授業はこれで終わりになります。明日からの授業を頑張りましょう」


 こうして高等部での生活が始まる。

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