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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園中等部

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カノンとテレサの会話

 カノンが無事に戻り、旅行三日目が始まる。今日も今日とて、セレーネ達は海へと来ていた。今日は合流したテレサもいる。テレサは、白いビキニにサングラスを頭に掛けていた。

 セレーネと一通り遊んだテレサは、ビーチチェアで横になっていた。そこに、カノンが飲み物を持ってくる。


「お疲れ様です」

「ええ、ありがとう。さすがは、子供ね。いつでも元気一杯だわ」

「セレーネ様にとっては、本当に楽しみしていたものですから、全力で楽しみたいのでしょう」

「そうね。そういえば、さっきマリアから聞いたのだけど、あの子がセレーネの思い人なの?」


 テレサは、フェリシアを見ながら訊く。マリアは、唐突にバレるよりも裏で伝えておくのが、一番穏便に済むと考えてテレサに伝えていた。テレサは、内心驚いていたが、今は落ち着きを取り戻している。


「はい。初めてのご友人であり、自分に対して遠慮がない方ですから。最初こそ、お嬢様が侯爵令嬢と知って焦ってはいましたが、すぐに対等な友人として接して頂けています。フェリシア様の対応力に加えて適応力などが、お嬢様には心地よかったのでしょう。私とマリアさんは、お嬢様の従者という立場が強いですから」

「そう……まぁ、そうね。あの子も恋を知る年頃……いや、少し早いわよね?」


 テレサは、セレーネの年齢を思い出してそう言う。七歳という年齢で考えれば、恋をし始めるのは、少し早い気がしているのだ。それに対して、カノンは首を横に振る。


「元々お嬢様には大人びた部分がありましたから、自分の気持ちを自覚出来るのも早かったのでしょう。幸いな事に、フェリシア様はお嬢様の傍にいらっしゃる事が多かったですから」

「小さい頃から教育を受ける貴族の子供にありがちな話ね。あの子は、どう想っているの?」

「フェリシア様もお慕いしておられるようです。ですが、互いの立場がありますので」

「うちは問題ないと思うけれど、向こうの家は婚約者を用意しているでしょうね」

「はい。なので、フェリシア様に何かあれば、自分の元に来て欲しいとおっしゃっておりました」

「…………カノン。盗聴は良くないわ」


 カノンが事細かに説明するので、テレサもカノンが盗聴していた事に気付いた。そんなテレサの指摘をカノンは、涼しい顔で受け流す。


「お嬢様を守るには必要な事ですので」

「一理あるのが困るわね。そういえば、セレーネ達の研究は順調なの?」

「シフォンさんの件があって、本格的な研究は次の学期にお預けになりました。ですが、課題の方は、全て終えていますので、順調と言えば順調かと」

「そう。役立ってくれると良いのだけど」

「と言いますと?」

「セレーネ達が解析する魔導武器は、私が提供したものなの。偶々見つけて、セレーネの役に立つのならと思って提供したのよ」

「初耳です」


 これに関しては、カノンは本当に初めて聞いた事だった。そして、これが意味する事がもう一つある。


「では、テレサ様は冒険者として活動を?」

「ええ。お父様には内緒よ。面倒くさい事になるかもしれないから」

「かしこまりました。そういえば、ルリナさんはご一緒ではないのですか?」


 ルリナ・セレストは、テレサの専属メイドだ。カノンは周囲を見回すが、その姿は見当たらない。


「あの子は、課題が終わっていないから置いてきたわ。終わり次第来るように言ってあるから、そろそろ来ると思うわ」


 ルリナは、テレサと同い年の女性だ。テレサの世話をするために同じアカデミーに通っているが、テレサの方が頭が良いため、テレサが終わった後もアカデミーでの課題に追われていた。早くセレーネの元に来たかったテレサは、そんなルリナを置いてきていた。


「ルリナさんも大変ですね」

「あの子は、要領が良いから慣れてくれば大丈夫よ」


 テレサの専属が大変そうという話だったのだが、テレサはアカデミーが大変そうという風に受け取っていた。その言葉には、テレサなりのルリナへの信頼が見て取れるが、もう少しルリナに配慮してあげても良いのではと思ってしまうカノンであった。


「噂をすれば来たわよ」

「そのようですね。ですが、ルリナさんだけではないようです」


 そう言われて、テレサはルリナが来ているであろう方向を見る。そこには、ルリナの斜め前を歩くライルの姿があった。ルリナは、空色の髪と瞳の犬人族だ。垂れた空色の耳とふさふさな空色の尻尾が特徴的だ。だが、見慣れたテレサが見るのは、そんな可愛らしいルリナではなくライルである。


「兄さん?」

「テレサ。ルリナをあまり困らせるな」

「特に困らせてはいないと思うけれど」

「主人に先に行かれたら困るだろう。昔から、お前は変なところで抜けている。気を付けろ」

「分かりました。ルリナ、屋敷の二階の右奥が私に宛がわれた部屋よ。そこで、水着に着替えてきなさい」

「は、はい。お嬢様。ライル様、失礼します」

「ああ。すまんな」


 ルリナは、急いで屋敷の方へと向かって行く。それを見送ってから、テレサはビーチチェアに寄り掛からず座ってライルを見る。


「それで、ルリナを送りに来たって訳では無いのでしょう?」

「ああ。カノン、お前に用があってきた。ベネットと対応した事に関してだ。詰め所の方まで来てもらいたい」

「詰め所ですか……分かりました。お嬢様に話して参ります」


 そう言って、カノンはセレーネの元に向かう。今朝約束した通り、離れる際には一声掛けるためだ。カノンを見送った後、ライルはテレサを見た。


「少し際どくないか?」

「妹をそういう目で見てるの?」

「んなわけあるか。他の男の目を気にしろって事だ。まぁ、ここにはいないようだがな」

「じゃあ、良いじゃない。兄さんの方こそ、暑くないの?」


 ライルの服装は夏場でも長袖のジャケットだ。見ているだけで暑苦しいとテレサは思っていた。


「…………これが騎士団の制服だ」

「夏着を作れば良いんじゃないかしら?」

「検討しよう」

「そういえば、カノンが対処した件は大丈夫そう?」

「一応な。カノンからも話を聞いて、情報を完成させたいというだけだ。後は、騎士団の腐敗を正す」

「頑張って」


 テレサはそう言いながら、ビーチチェアに寄り掛かる。そこにカノンを連れたセレーネがやって来た。


「お兄様!」

「セレーネ、カノンを借りる」

「うん。事情は聞いたから良いよ。必要なんだもんね」

「ああ、終わり次第送り届ける」

「うん。それより見て見て。似合う?」


 セレーネはライルの前でくるくると回る。そんなセレーネの頭をライルは優しく撫でる。


「ああ、似合っている。可愛らしいな」

「えへへ! じゃあ、お仕事頑張って! カノンも早く帰ってきてね!」

「ああ」

「はい」


 セレーネはフェリシアの元に走っていき抱きつく。セレーネを受け止めきれず、フェリシアが倒れて大きな水飛沫を上げた。そんなセレーネと入れ替わりに、ジーニーがやって来る。


「ジーニーさん、私は森での事を報告しに街に向かいます。その間、お嬢様をよろしくお願いします」

「すまない。妹達をよろしく頼む。」

「はい。お任せ下さい」


 カノンは、水着から着替えるために屋敷へと戻る。カノンを待つ間、ライルはテレサとポツポツと会話していた。セレーネが元気一杯に話すのと比べて、二人の会話は基本的にローテンションで行われる。兄妹間の一番の違いは、そこになるだろう。

 そこにルリナがビーチパラソルを持ってくる。


「お嬢様……せめて日影で休んで下さい」

「陽射しを浴びるのも良いものよ?」

「日光浴には日が強すぎます」


 ルリナは、テキパキとビーチパラソルを用意して、冷たい飲み物を渡す。

 そこに着替えたカノンが戻って来た。


「ルリナさん。お嬢様をお願いします」

「は、はい。頑張ります!」


 年齢的には、カノンの方が上なので、ルリナは少し緊張しながら返事をした。だが、尻尾が横に揺れているところから怖がっているという事はないと分かる。

 ルリナにお願いしてから、カノンはライルと共に街の方へと戻っていった。セレーネは、その後ろ姿を見て、シフォンによる水攻撃を避けきれず受ける。それに怒ったセレーネの猛攻によりシフォンは沈んだ。

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