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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園中等部

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退院と夏季休暇

 それから一ヶ月が経過した。本格的な夏が始まり、学園の夏季休暇が始まる。

 その前に行われた学園の期末テストを、セレーネとフェリシアは余裕で突破した。学期終わりの順位付けでは、セレーネが主席、フェリシアが次席となった。

 シフォンに関しては、病室で試験を受けて突破した。学園での授業を受けていない事に加えて、実技試験を受けられていない事から、順位は下になっている。こればかりは仕方のない事なので、補習対象にならなかっただけ良かったとシフォンは考えていた。

 研究の方はシフォンの病室で行っていた。基本的に紙とペンがあれば出来る研究なので、場所は選ばない。セレーネとフェリシアが持ってきた本などから、レイアーから出されている課題を終わらせる事が出来た。本格的な研究に関しては、次の学期までお預けとなった。

 シフォンが学園に通えずにいたので、せっかくの夏季休暇は友人との時間を過ごして欲しいというミルズの計らいだった。

 夏季休暇初日。それは、シフォンの退院日だった。

 セレーネは、マリアを連れて王立病院に来ていた。そのロビーでフェリシア、ジーニーと合流する。しばらく話して待っていると、カノンを連れたシフォンがやって来る。シフォンは、入院費などの手続きをしているので、シフォンだけセレーネ達の元にやって来る。


「セ、セレーネちゃん……に、入院費とかありがとうね……」

「気にしないで。元はと言えば、私達貴族のせいなわけだし。こうして無事に退院出来て良かったよ」

「そうね。今日からうちで働いて貰うけれど、最初から何でもさせるわけじゃないから安心しなさい」

「う、うん……あ、ありがとう……」

「良いのよ」


 セレーネとフェリシアが退院を祝っている間に、会計を済ませたカノンが合流する。カノンが来た事で、セレーネがカノンに抱きつく。カノンは、軽く受け止めて、セレーネを抱き上げた。


「それじゃあ、行きましょうか。今日は、水着を買いに行くのでしたね」

「うん! あっ、でも、シフォンが厳しいなら、また後でも良いよ。旅行に行く来週まで時間はあるから」

「う、ううん……だ、大丈夫……わ、私も少し動きたいから……」

「じゃあ、出発!」


 セレーネはカノンに抱き抱えられたまま、水着屋へと移動していく。


「そういえば、その店って、一年中水着を売ってるの?」


 今日行く店は、ウルトラマリン家御用達の店なので、セレーネはフェリシアにそう訊いた。


「基本的にはそうね。一年中温暖な気候の土地もあるから、そこで着る用の水着を買えるようにしているみたいよ。実際、人数に差はあるけれど、年中客が来るらしいし」

「ふ~ん……夏場にたっぷり儲けるタイプのお店って事なのかな」

「そうね。子供用の水着も多いみたいだから、私達に合う水着もあるわ。カノンさんやジーニーのもね」

「お嬢様、私には必要ないのでは?」


 フェリシアに対して、ジーニーがそう言う。ジーニー的には、自分は泳ぐつもりはないので、水着である必要はないのではと考えていた。


「必要よ。私一人で海に入れと言うの? ジーニーが一緒じゃないと危ないじゃない」

「なるほど。それもそうですね。動きやすいもの選びましょう」

「カノンもだよ?」

「分かっています」


 カノンがそう言うと、セレーネはカノンにくっついた。


「セレーネは、本当にカノンさんが好きなのね」


 カノンにべったりのセレーネを見て、フェリシアはそう言った。傍から見れば、ただの甘えん坊にしか見えないからだ。


「うん! シフォンと一緒で、病室でしか会えなかったんだもん。やっぱり、カノンにはずっと傍にいて欲しい!」

「ありがとうございます」


 甘えん坊なセレーネに、カノンも嬉しげな表情をしていた。セレーネが嬉しそうなので、

マリアも自然と笑顔になる。


(三角関係に見えるけれど、マリアさんとしては、セレーネが幸せならそれで良いという風な感じが受け取れるわね。セレーネもカノンさんにべったりに見えて、普通にマリアさんにべったりになる時もあるし、そもそも姉君であるテレサ様にもべったりだし……セレーネ自身も全員に愛が向いている気がするわ。でも、一番の謎はカノンさんよね。セレーネを愛しているように見えて、一定距離を保っているようにも見える。相関図が複雑だわ)


 最近、恋愛小説を読み始めたフェリシアは、セレーネ達の関係性を脳内で組み立てていた。実際にやってみると、全員の気持ちが全く分からないので、相関図が複雑になってしまい内心困っていたが、それを整理する事に楽しみを見出していた。

 フェリシアがハマっているものを知っているジーニーは、フェリシアが頭の中で何をしているのかお見通しだった。


(きっと、お嬢様は自分を中に入れていないのでしょうね。登場人物になれるだけの関係性はあるというのに)


 そんな事を思いながらも、フェリシアには決して進言しないジーニーであった。

 そんな事をしながら、ウルトラマリン御用達の水着屋に着いた。中は割と広く、売り出しているものは全て水着のみだった。そのため水着のバリエーションは、かなり多い。


「ねぇ、カノン。あのピンクのカーテンの向こうは何?」


 店員のみが出入り出来る扉には、その事が書かれた看板が付けられているが、セレーネが訊いているピンクのカーテンには何も掛けられていなかった。その向こう側を、カノンは瞬時に理解した。


「大人専用の場所です。お嬢様方には、まだ早いですね」


 カノンがそう言うと、フェリシアとシフォンが顔を赤くする。だが、セレーネは、何があるのか分からず、首を傾げていた。


「入ってみたい」

「駄目です。絶対に。お嬢様には早いですから。ほら、お嬢様の水着を探しに行きましょう」

「えぇ~……むぅ……」


 カノンから降りたセレーネは、カノンと手を繋いで、自分の水着を探しに向かう。フェリシアとシフォンも一緒に水着を見始める。ジーニーは、そんな二人に付いていった。マリアはマリアで、セレーネに似合いそうな水着を探す。


「う~ん……これは?」

「駄目です」

「前に本で見たのになぁ」


 セレーネが出したビキニを、カノンが即答で却下する。


「こちらのようなワンピースタイプにしてください。ウルトラマリン家のプライベートビーチとはいえ、そのような水着は絶対に駄目です。お嬢様の年齢であれば、こちらの方が遙かに似合います」

「そうですよ。カノンさんの言うとおりです。というわけで、こちらの水着は如何ですか?」


 そう言ってマリアが持ってきたのは、タンクトップビキニだった。布面積が大きく、ワンピースタイプに見えなくもない。見えたとしても、へそ辺りになるだろうと思われる。セレーネが気に入りやすいようにフリルが多くあしらわれている。


「わぁ……! 可愛い!」

「そうでしょう。これなら、カノンさんも納得なのでは?」

「う~ん……へそ出しですか……」


 カノンは少し迷っていた。その迷いはへそ出しが有りか無しか。カノン自身の考えで言えば有りなのだが、これは貴族令嬢として有りかどうかという事だった。


(くっ……本音を言えば、ビキニでもお嬢様は可愛い。このタンキニも有り! 可愛いし、お嬢様には似合っている。でも、貴族のお嬢様としては!? そう。そこをしっかりと考えないといけない! へそ出し……お嬢様のへそ出し……可愛い……このくらいの露出なら……有り!)


 カノンは葛藤の末に答えを出した。


「良しとしましょう」

「私、花柄が良い!」

「花柄ですか? じゃあ、可愛いの探してきますね」


 そう言って、マリアは再び水着の海に飲まれていった。セレーネは、カノンと一緒に自分が気に入る水着を探していく。

 こうして水着などの旅行に必要なものを買い揃えていき、セレーネ達の旅行が始まる。

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