事件解決
テレサの眷属化が終わる。セレーネは、テレサの方から口を離して、テレサの顔を見る。
「お姉様、大丈夫?」
「ええ……大丈夫よ。これで、眷属になったのね。前よりもセレーネの事を強く感じるわ」
「私の血を飲めば、眷属としての繋がりが強くなるから、定期的に飲むようにしないとなの」
「そう。なら、定期的に別邸に通うことにするわ」
「本当!? やった!」
定期的にテレサと会えるという事で、セレーネは喜んでテレサに抱きつく。テレサは、そんなセレーネの頭を優しく撫でる。
そんな中、マリアが扉をノックして中に入ってくる。
「失礼します。テレサ様を眷属にしたの?」
マリアは、入ってすぐに確認する。セレーネの血を何度か飲んでいるので、新たな眷属の誕生に気付いたのだ。そして、眷属にする対象は一緒にいるテレサしかあり得ない。なので、マリアもすぐにそう言えた。
「うん。お姉様が望んだから」
「あまり簡単に増やしすぎないようにね。私、カノンさん、テレサ様だから良いけど、不死身の身体を利用して犯罪をしようとする人も中にはいるから」
「分かってるよ。だから、私が真祖だって事は、あまり広まらないようにしてるんでしょ?」
「そういう事。取り敢えず、気になって確認しに来ただけだから、仕事に戻るね。お母さんに怒られるから」
「うん。サマンサは怒ると怖いもんね」
マリアは、テレサに頭を下げると、そのまま出て行った。
「マリアから苦言が来るかと思ったけれど、普通に受け入れていたわね」
「マリアは、割と、そこら辺柔軟だから。でも、もう三人も眷属にしちゃった……ちゃんと制限しないと」
そう呟いたのと同時に、扉がノックされる。
「どうぞ」
テレサが答えると、入ってきたのはリーシアとミーシャだった。
「失礼します。お久しぶりですね。セレーネ、テレサ」
「リーシアちゃん! ミーシャちゃん!」
セレーネはテレサから降りて、リーシアに抱きついた。セレーネを受け止めたリーシアは、その頭を優しく撫でる。
「元気そうですね。テレサも……眷属になったのですか?」
「はい。昨今の事件などから、セレーネを守るために必要だと思いましたので。私は、セレーネがいれば、それで良いですので」
「なるほど。そういえば、セレーネの友人が巻き込まれた事件に関して、大きく進展がありましたよ」
「本当!?」
セレーネは、リーシアの胸の中からリーシアを見上げる。そんなセレーネを見て、リーシアは時の流れを感じていた。
「ええ。私が見つけた書類と今回の調査で得た書類から、今回の大元の元凶に近づけると思われます。後は、ラングリドの腕の見せ所ですね。セレーネ、今は学園には通っていないのですね?」
「うん。お父様が、危険だから控えろって。だから、お姉様とお話ししてた」
「そうでしたか。では、ミーシャに授業をして貰いますか? カノンさんも病室に待機しなくてはいけないようですから」
「ミーシャちゃんがやってくれるの?」
「セレーネ様がお望みであれば。カノンさんの授業に比べたら、お粗末なものになるかもしれませんが、何もしないよりはマシであると思われます」
「セレーネ。解決まで、どのくらい掛かるか分からないのだから、受けておいた方が良いわ」
「お姉様もそう言うなら受ける。ミーシャちゃん、よろしく」
「はい。かしこまりました。では、早速やりましょうか」
「うん!」
ミーシャと手を繋いだセレーネは、別の空き部屋へと移動する。そこでミーシャからの授業を受ける。そもそも学園の授業内容から大きく先を行っているが、ここで何も勉強しない時間が出来るよりマシという事で、授業を受ける事にした。
部屋を変えたのは、テレサもテレサでアカデミーの予習があると考えられたからだ。
部屋に残ったリーシアは、部屋に置かれている椅子に座る。そこでテレサと話すためだ。話す内容は、普通に世間話。孫娘が何をしているのかを聞く祖母のように、テレサから語られる内容を、楽しげに聞いていく。
しばらくリーシアは本邸で過ごす事になっている。セレーネが退屈する事はないだろう。
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それから一週間が経った。ラングリドが主導する調査もどんどんと進み、王城内の会議にて、該当貴族の告発に至った。証拠を完全に掴んだラングリドは、一切の遠慮する事なく罪の追及をしていった。
証拠も並べられ、逃げ場もなく該当貴族は即座に王都の牢獄に拘留される。拘留された貴族の数は、十以上に上った。
その日の内に、拘留された貴族達の屋敷が調査される。その中には、シフォンをリンチにしていた貴族の家も含まれていた。
そこまでいくと、ラングリドが関わる段階を超えるので、後は任せるしかなかった。だが
ラングリド的には、今回調べられた結果だけが、この事件の全貌ではないと考えていた。
事件の首謀者は、今回掴んだ証拠から捕まえる事が出来ているが、その首謀者の裏側にも誰かがいると睨んでいるのだ。だが、その証拠は一つも出ない。屋敷の調査からも、そんな証拠は出なかった。他の貴族との繋がりは見つかっていても、その貴族が人身売買組織等と繋がっている証拠にはならない。そこを繋げるには、また別の証拠が必要になるのだ。
ラングリドの調査は終わらないが、これで今回の事件は完全に解決した。おかげで、セレーネの外出許可も出た。
マリアを連れたセレーネは、すぐに王立病院へと急ぐ。その道中で、同じく王立病院へと向かうフェリシアと遭遇した。
「フェリシア!」
フェリシアを見つけたセレーネは、すぐにフェリシアに飛びつく。フェリシアは、驚きつつもセレーネを受け止めた。
「セレーネ、あなたも無事だったのね」
「うん。色々と危なかったけどね。そっちはジーニーが頑張ってくれたんでしょ?」
そう言って、セレーネはフェリシアと一緒に来ていたジーニーを見る。ジーニーは、軽く頭を下げて挨拶をした。
「そうね。私は寝ていたから、よく分からないのだけど」
「えぇ~……家の中まで侵入してきたのに?」
「え? うちは、そんな事なかったわよ。ねぇ、ジーニー?」
「いえ、侵入はされましたが、お嬢様の部屋までは来ていないだけです。その後、侵入の証拠は全て隠させて頂いたので、お嬢様が気付く事はなかったかと」
「えっと……そうらしいわ」
「良いなぁ……うちなんて、私の部屋に飛び込んできたんだよ? クロが気付いてくれなかったら、本当に危なかったよ。マリアがどうにかしてくれたかもだけど」
そんなセレーネの話を聞いて、フェリシアは一つ疑問に思う部分があった。
「クロというのは、誰なの?」
セレーネの使用人は、カノンとマリアしか知らないので、フェリシアからしたら、急に知らない人の名前を出されたという認識だった。
「大黒猫のクロだよ。私の飼い猫」
「大黒猫? 珍しい動物を飼っているのね。話は聞いた事があるけど、私は見たことがないわ」
「そうなの? じゃあ、うちに来て見てみる? 可愛いよ」
「そうね。機会があればお邪魔させて貰おうかしら。シフォンも一緒にね」
「そうだね」
セレーネとフェリシアは、互いに見合って笑う。事件が解決した以上、後はシフォンが目を覚まし、元の日常に戻れるようになるだけだと考えているからだ。因みに、二人ともシフォンの意識が戻った事は知らない。
まだ、カノンが周囲に知らせていないからだ。事件が解決しても、まだ警戒はしておいた方が良いというカノンの考えによるものだった。
なので、セレーネとフェリシアは、今日こそシフォンが目を覚ましてくれると良いなと思いながら病院へと向かっていた。




