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47 凶報

これにて第五部終了です。

お付き合い頂き、ありがとうございました。

 連合軍を退けたリアンとニコラは、フラメル公国の大公リシャールと面会を果たしていた。

状況も状況だったため、略式での謁見である。

豪華な応接間に通された2人は、正面に座る大公と向き合った。


「アイザック殿下、ニコラ殿下。この度はフラメル公国を救って頂き、誠にありがとうございます。」

大公が頭を下げた。

1ヶ月籠城していたこともあり、その顔には疲れが滲み出ている。


「同盟国として当然のことです。それよりも大公がご無事で良かった。」


「これもお二人のお陰です。それに今回はエヴァ殿下にもお世話になりました。」

一足先に居城に到達したエヴァは自ら負傷者の手当てにあたり、フラメル公国の兵たちを鼓舞したそうだ。

暗い雰囲気の漂っていた城内に活気が戻ったという。


「妹が力になれたようで何よりです。大公は今回の襲撃に心当たりはありませんか?」


「それが全く……。襲撃してきた三国と特別に友好関係を築いてはいませんが、襲撃されるほど険悪な関係でもありませんでした。それにあまりにも唐突だったため私たちも困惑しています。」

その言葉を聞いたリアンは落胆した。

何か手掛かりになるような情報があればと思っていたが、心当たりはなさそうだ。

大公は、「お力になれず申し訳ありません」と続ける。


「そうですか……私たちもしばらく居城に残ろうかと考えています。滞在の許可を頂けないでしょうか。」

相手の目的が分からない以上、再び襲撃される可能性もある。

牽制の意味も込めて、しばらくはエムレーアの兵が常駐した方が良いだろう。

その旨を告げれば、大公も同じ考えだったようで、非常に感謝された。



 大公との面会を終えたリアンと二コラは客間に通され、フラメル公国第一王女アリスと顔を合わせていた。

先程から一緒にいたようで、エヴァも隣に座っている。

何度も会っている事もあり、傍から見ても仲の良さが伺えた。

エヴァの表情も柔らかい。


「お久しぶりです、アイザック様。幼少の頃に私がエムレーア王国を訪問した時以来でしょうか。」

リアンの正面に座っていたアリスが口を開いた。


「そうなりますね。二コラやエヴァがいつもお世話になってます。」


「いえ、お二人には私の方がお世話になりっぱなしで……。二コラ様はいつも頼りになりますし、博識なエヴァ様は様々な事を教えてくださります。」

アリスが微笑んだ。

どことなく幼さが残る可愛らしい笑みは庇護欲を誘う。

それは第一王女としての凛とした雰囲気と相まり、大変魅力的に見えた。

なるほど、二コラはこの笑みにやられたのか。


 気付かれないよう隣に座る二コラに視線を向ければ、赤くなって俯いていた。

いつも毅然とした態度の二コラからは掛け離れた姿に、少しだけ悪戯心が湧いてきてしまう。

弟の恋を後押しするのも兄の役割だろう。


「アリス様はしばらくお会いしない間に、大変美しくなられましたね。」

二コラはアリスの手を取ると、真っすぐに目を合わせた。

突然の行動に驚いたアリスはオロオロと助けを求めるように視線を彷徨わせる。


「兄上っ! 一体何を……。」

いち早く反応したニコラが立ち上がって抗議した。

状況を察したエヴァはニコニコと状況を見守っている。


「私も独身男性だからね。美しい女性を見て口説いて何が悪い。それよりもアリス様、今度ブレイジアに遊びに来ませんか? ぜひ私にエスコートさせてください。」


「えっ……ですが。」

困り果てたアリスの視線は、リアンと二コラを行ったり来たりしている。

そして助けを求めるようにエヴァへ顔を向けた。


「良いではありませんか、アリス様。アイザック兄様はエムレーア王国でも大人気の殿方ですよ。それとも他にエスコートしてほしい方がいらっしゃるとか?」

その言葉を聞いたアリスは顔を真っ赤に染めた。

先程から口をパクパクさせているが、言葉にならず伝わってこない。

そんな中、意を決した二コラがアリスに近づき、空いていた方の手を取った。

そして忠誠を誓う騎士の如く跪く。


「アリス様。そのエスコートは、私にお任せ頂けないでしょうか。」

2人の視線が絡み合うこと数秒。

沈黙の後、アリスが自然と頷いていた。

初々しい様子に心が温かくなる。


「どうやら二コラに負けてしまったようだね。」

リアンはアリスの手を放し、肩を落とした。

そして大袈裟に失恋のポーズをとる。

そんな様子にエヴァが笑い出した。

二コラとアリスは何が起こったのか分かっていなかったが、時間が経つに連れ状況を理解したようだ。

2人は顔を真っ赤にし抗議したが、それを見たリアンも笑い出してしまう。



 客間には、しばらく笑い声が響いていた。

しかし、そんな楽しい一時も長くは続かない。



 ――王都ブレイジアの占拠。

伝令によってもたらされた知らせは、エムレーア王国の存続を揺るがすようなものだった。


そして悪い知らせは、それだけではなかった。


「フラメル公国に向かって大軍が侵攻しています。その数10万! 明日にはこの居城に到達する見込みです。」

人物設定

◆エリアス=リシャール(36)

フラメル公国の大公。


◆アリス=リシャール(15)

フラメル公国の第一王女。

二コラの思い人。

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