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46 一騎打ち

戦闘シーンあります。

残酷描写が苦手な方はご注意ください。

 伝令を辿って特定した総指揮官の居場所に向かい、リアンは怒涛の勢いで進んで行った。

しかし進めば進むほど敵兵の数は多くなり、いよいよ近付き難くなってしまう。


「アイザック殿下、このままでは囲まれてしまいます! 一旦下がりましょう。」

近くにいた兵が進言してきた。


「不安になる気持ちが分かるが、ここは私を信じて進んでくれないか?」

意識して微笑めば納得してくれたようで、「出過ぎたことを申しました」と言って持ち場へ戻って行った。

ここまで来て、引くわけにはいかないのだ。

とは言え、彼が言ったことも事実。

このまま力付くで押し通ることは難しい。


 状況を打開する手段がないかと周囲に目を配らせた時だった。

視線の奥を横切る黒い影が見えた。

影は周囲の敵兵に次々と飛び掛かっていく。

そして混乱状態となった連合軍の側面に、遊撃隊が奇襲をかけた。


 完璧なタイミングだ。

心の中でナハトに賞賛を送る。

手薄な側面を襲撃されたことにより、連合軍の指揮は乱れた。

このチャンスを逃すまいと、リアンは敵兵の中を突き進んでいく。

サポートするよう放たれるエレメンタルにより、あっという間に目的地に辿り着くことができた。



 少し開けた所に出たリアンは、総指揮官らしき人物を発見した。

防具や剣1つ1つに豪華な装飾が施されていることから、高い地位にある人物だと推測できる。


「私はエムレーア王国第一王子アイザック=ブレイズ。貴殿を連合軍の総指揮官とお見受けし、一騎打ちを申し込みたい。」

リアンは声を張り上げた。

周囲にいた兵たちは戦いを止め、固唾を呑んでその光景を見守っている。

余程無能でない限り、総指揮官が出せる答えは1つだけだ。

ここで一騎討ちを断れば、逃げ出した指揮官として一生汚名を被って生きていく事になる。

辺りを、戦場とは思えないほどの静寂が支配した。


「いかにも私が連合軍の総指揮官である。その一騎打ち……受けてたとう。」

逡巡した後、総指揮官が答えた。

そうせざるを得ない状況を作ったとは言え、思い通り事が進んだことにリアンは笑みを浮かべる。


「貴殿の決断に感謝する。」

そう言って、リアンは剣を構えた。

相対するように総指揮官も剣を抜き、美しい装飾の施された剣を正面に構える。

しかしその手は震え、目には怯えが見て取れた。

このような状況になることを想定していなかったのだろう。

同情する部分はあるが、ここで見逃すほどリアンは優しい性格をしていない。


 ――勝負は一瞬だった。

意を決して総指揮官が切り込んで来た瞬間、リアンは剣を下から救い上げるように振り切り、剣を弾き飛ばす。

そして、がら空きとなった総指揮官の懐に飛び込み、そのまま首を切り落した。

何が起こったのか把握する前に命を落としたのだろう。

その顔は、切りかかってきた時と同じ表情を浮かべていた。

痛みを感じる事なく逝ったのなら、それだけが救いだ。

リアンは、開いたままになっていた瞳をそっと閉じた。



 総指揮官を失った連合軍は総崩れとなった。

恐慌状態となった兵たちは、我先に逃げ出していく。

追い打ちをかけるように王宮で待機していた第二師団が挟み撃ちにしたことで、勝負は決まった。


「勝鬨を上げろ! エムレーアの勝利だ!」

リアンが指示を出せば、戦場には歓声が広がっていく。

ふと振り返れば、満面の笑みを浮かべたナハトと目があった。

どちらともなく拳を付き合わせ、お互いを称え合う。




 残った敵兵を倒した後、リアンたちは王城を解放した。

出迎えたエヴァはニコラの怪我を見て涙ぐんだが、命に別状がないと分かり胸を撫で下ろしていた。


「本当にありがとうございます、アイザック兄様。」


「弟を助けるのは兄として当然の事だからね。」


「今の王宮でそのように考えてくださるのは、アイザック兄様だけです。ただ……仮面を被っていた時は、失礼な態度を取ってしまい申し訳ありません。」

エヴァは申し訳なさそうに眉を下げた。


「君たちに伝えなかった私に非がある。だから、気にすることはないさ。」


「それは良いのです。何か理由があっての事だと言うのは分かりますから。」


「……理由は聞かないんだね。ニコラも尋ねてこなかったし、君たち兄妹は似ているな。」


「それだけ信頼していると言うことです。」

それを聞いたリアンの心は、少しだけ温かくなった。

王位継承争いで離れてしまったと思っていた兄弟だが、まだ繋がっている部分はあったようだ。

と同時に、そこに自分が含まれないのだと思うと寂しくもある。


 ここが片付いたら、一刻も早く兄上を探しに行きたい。

そう思わずにはいられなかった。

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