[幕間] 従者とメイドと傭兵
これにて第四部終了です。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
幕間は、ほぼ会話のみの形式となっています。
とある昼下がり。
モナは、ナハトの部屋を訪れていた。
手元には、気持ち良さそうにブラッシングされるアドルフが収まっている。
アドルフの毛並みを気に入ったモナは、こうして暇を見つけてはやって来るのだ。
ナハトも悪い気はしないようで、モナの好きにさせていた。
「このツヤツヤな毛並み……。いつ触っても癒されます。」
「当然。それにしてもこんな昼間っからサボってて良いのか?」
「なっ! これはサボりではありません。リアン様から正式に休憩を頂いています。」
「へー。そう言うリアンはどこ行ったんだ?」
「リアン様なら出掛けて行きました。地下回廊の点検をするとか。」
「あー、前に言ってた洪水の件か。王族はまどろっこしい事が多いな。」
「それでも最近のリアン様は楽しそうにしておられますよ。私もそれほどお付き合いは長くありませんが、初めてお会いした時より活き活きしているように見えます。」
「そういうもんか。それにしても昔のリアンね。」
「気になるようでしたら、フェンリー様に尋ねてはどうでしょう。お二人は乳母兄弟と伺っていますし。」
「そんな都合良く……
――コン、コン
扉を叩く音に、2人は顔を見合わせた。
あまりにタイミングが良い。
噴き出しそうになるのを堪えて扉を開ければ、案の定フェンリーの姿があった。
モナに用があると言うので部屋へ迎え入れる。
「やはりここにいましたか、モナ。休憩時間が終わってからで構わないので、この書類の整理をお願いできますか?」
「かしこまりました。いつも通り片付けておきますね。」
「お願いします。それでは、ナハト殿もごゆっくり。」
「待って、フェンリーも今から休憩時間か?」
「そうですが、何か御用でしょうか?」
「フェンリーに聞きたいことがあるんだ。せっかくだからここで休憩していかないか? たまには俺がお茶でも入れるぜ。」
「それでしたら、お言葉に甘えさせて頂きます。」
ナハトがフェンリーに椅子を進め、お茶の準備をした。
傭兵生活を送っていたこともあり、一通りの事はできるつもりだ。
フェンリーやモナには敵わないが、飲める程度のものは出せるだろう。
3人でテーブルを囲い、一息ついた。
「それで聞きたい事と言うのは?」
「昔のリアンについてだ。フェンリーとリアンが乳母兄弟って聞いてな。」
「そう言うことでしたか。幼い頃のリアン様は、素直で可愛らしい子供でしたよ。いつもアイザック様の後ろを付いて回っていました。」
「それじゃ、今とそんな変わらないって事か。ブラコンはその頃からなんだな。」
「……あの、出会った頃のリアン様は今より影があったと言いますか。どこか諦めたような目をしていたと思うのですが。」
「……さすがにモナは誤魔化せませんね。ご存じの通り、リアン様は特殊な環境でお育ちになったので色々とありまして。私の口からこれ以上申し上げる事はできませんので、あとはリアン様に直接お尋ねください。ただ1つだけ言える事は、リアン様はお二人と出会われて変わったと思いますよ。幼馴染としては大変感謝しています。」
しばらく談笑した後、「ごちそうさまでした」と言い残してフェンリーは去って行った。
短い滞在時間だったが、カップのお茶は全て飲み干されている。
「私たちにも、いつか過去の事を話して頂けるんでしょうか。」
「リアンの心境次第だろうな。まあ、どんな過去があったとしても、今のあいつを気に入ってる事は変わらねーから良しとするか。」
「それは私もです。リアン様には返しきれない恩がありますので。」
ナハトとモナは再び顔を見合わせた。
そして、どちらともなく笑い出す。
いつも通りの平和な昼下がりであった。




