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34 大雨

物語の都合上、水害に関する表現があります。

気分が悪くなる方は閲覧をお控えくださるようお願い致します。

 リアンたちがエムリア中央教会に潜入した翌日。

王都ブレイジアは、教会に盗賊が侵入したという話題で持ちきりだった。

その噂は王宮まで届いており、フェンリーを介してリアンの耳にも届く。

盗まれた物が公表されていない事を考えると、教会が意図的に情報制限しているのだろう。

教会では警備が強化されたそうだ。


 あの日王宮まで戻ったリアンたちは、それぞれの戦利品を確認し合った。

フェンリーが書庫から持ち帰ったのは研究資料。

エレメンタルストーンの製造方法や、実験結果が記載されている。

それなりの量があるため、比較的時間の確保ができるリアンとナハトで確認する事となった。


 ナハトが審議の間から持ち帰ったのは不正出国者の証拠。

第二王子エリックとのやり取りに使用された書簡や、出国した信者たちの行方が記載されている。

こちらの扱いはアイザックに任せる事とした。


 教会では見つかってしまったが、成果はまずまずと言えよう。

教会がエレメンタルストーンの開発を実施していた証拠だけでなく、研究成果まで手に入れることができた。

後は手に入れた資料を確認し、エムリア教会の狙いを見極められれば対策を打つことができる。

リアンは、ナハトと分担して分厚い書類に目を通していくのであった。



 リアンがエレメンタルストーンの研究資料の確認に時間を費やしている頃。

エムレーア王国は本格的な雨季に突入し、毎日のように大雨が降り続いていた。

町の水を排出するため道路は川となり、王宮から放射状に広がっている。

人々は最低限しか家から出ないため、町は閑散としていた。


 それに反比例し、治水局の人間は忙しそうに走り回っている。

降水量の多い地域での河川監視や、洪水が発生した場合の対処、国民の避難誘導など、業務は多岐に渡る。

今年まで局長を務めていたオスカー=ブルックは優秀だったようで、それらを的確に処理していたようだ。

しかし碌な引き継ぎもできないまま局長交代となってしまった今、治水局は軽いパニック状態となっていた。


 決して現局長の能力が足りていないわけではない。

もし適切な引き継ぎと準備期間があれば、問題なく対処できていただろう。

それを危惧した国王は、補佐としてアイザックを宛がった。

現局長より立場が上で、人心掌握にも長けているアイザックであれば混乱を抑える事ができる。

国王の目論見通り治水局は徐々に落ち着きを取り戻していった。




 しかし、その知らせは突然届いた。

――ブレイジア北部の河川決壊。

溢れ出した水は町を飲み込み、さらに勢いを増しているという。

多くの国民が中州に取り残され、孤立しているとの情報もある。

知らせを受けたリアンは、すぐにアイザックの下へ呼び出された。


「情報はフェンリーから聞いていると思うが、すぐに影武者として決壊した河川に向かってほしい。」

開口一番、アイザックに告げられる。

いざという時のため、アイザックは王宮に残るそうだ。

王宮にいればフェンリーを通して治水局に指示も出せる。


「はい。到着したら国民の救助をすれば良いですか?」

洪水の場合、炎のエレメンタルで出来る事は限られる。

溢れ出した水を何とかするのは、水や土のエレメンタルを持つ者に任せる必要があるのだ。


「それで構わない。ウォード侯爵とランドルフ猊下にも現場へ向かうよう依頼している。」


「えっ?! 」

想定していなかった名前に思わず聞き返してしまった。

水の四大名家当主オーガスティン=ウォード。

最年少の四大名家当主ながら、水のエレメンタルで彼に並ぶ者はいないとされる。

それに枢機卿ランドルフ。

教会潜入時、会話を盗み聞きして以来だ。

枢機卿からすれば神炎の儀でのやり取りが最後であり、アイザックに対して良い感情は持っていないだろう。


「事が事だからね。今動かせる最大限の力で被害を最小限に抑える必要がある。現場での指示は頼んだよ。」


「かしこまりました。」




 アイザックと入れ替わったリアンは、治水局の者と合流して決壊した川へ急いだ。

川までは馬を使って1時間程。

大雨で地面がぬかるんでいるため、足元に最大限の注意を払いながらの移動となる。

移動中に詳細な情報を確認するが、被害は甚大なようだ。


 本来別々に流れていた川が増水により交わってしまい、結果として片側の河川に規定の倍以上の水が流入してしまった。

そこまでの水量を見込んでいなかった堤防は決壊。

決壊箇所から大量の水が流れ出し、町を飲み込んでしまった。

しかし幸いなことに住民は避難しており、人的は被害は少なかったようだ。

河川の水量が一定値を超えた時点で治水局から避難指示が出ていたという。

中州に取り残されているのは、逃げ遅れた者と避難中に巻き込まれた者だった。

 

「人命救助を最優先で頼んだよ。被害拡大防止は私の方で対応する。」

付き従った治水局に指示を出しながら現場へ急ぐ。

人物紹介

◆オーガスティン=ウォード(32)

水の四大名家ウォード家の現当主。

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