[幕間] 影と傭兵
これにて第三部終了です。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
幕間は、ほぼ会話のみの形式となっています。
アルビオンからエムレーアへの帰り道。
何回か野営を挟んだが、夜間はリアンとナハト共に過ごすことが多かった。
どちらもアイザックの眠る馬車を守るように陣取っていたからだ。
そこで様々な話をした。
時間はたっぷりあったため話題は多岐に渡る。
そんな中で特に印象に残った会話がある。
「ナハトはどうして傭兵になったんだ?」
「一言で言えば成り行きだな。もともと俺は弱小国家で兵士として働いてたんだ。国が戦争で負けた時、そのまま戦勝国の兵になるのが嫌で国を出たってとこ。」
「自分の国が好きだったんだな。」
「今思えばそうかもな。その時は無性に悔しくて飛び出してきちまったが。家族もみんな殺されて……そんな奴らの下で働く気にはなれなかった。」
「国に戻りたいとは思わないのか?」
「今戻ってもそれは俺の育ってきた故郷じゃない。故郷は俺の心の中に残っているから良いんだ。」
「そうか。ナハトは強いな。」
「流されてるだけさ。そう言うリアンはどうなんだよ。本当なら王子だってのに影武者やらされて何にも思わねーのか。」
「僕は今の生活に満足しているよ。いつ殺されてもおかしくなかった僕を助け、必要としてくれた兄上の力になれているからな。」
「国を出ていきたいとは思わないのか? リアンの力があれば何処でも生きていけるだろ。」
「あまり考えたことがないな。僕にとってはエムレーア王国が全てで、そこで兄上を国王にするため尽くす事が僕の存在価値だと思っている。そのためなら何だってする覚悟がある。」
「存在価値……ね。リアンを必要としているのは、アイザック殿下だけじゃねーと思うぜ。」
「うーん。だけどやっぱり僕にとっての1番は兄上だから。」
「分かった分かった、ブラコン王子様。」
「なっ……だから僕は王子じゃないって言ってるだろ。」
「ブラコンは認めるんだな。まあいいさ。アイザック殿下を守るお前を、俺が守ってやる。それなら文句ねーだろ。」
「それなら……。頼むよナハト。」
「任せとけ! 俺とアドルフは強いからな。」
リアンは、ブルック元伯爵との会話を思い出していた。
処刑される前に牢獄で交わした言葉。
――『私はあなたの下にならついてもいいと思いました。今は分からなくても問題ないです。同じような者が今後現れるはずですから。その時は私の言ったことを思い出して頂けると、あなたに腕を切られた甲斐もあるってものだ。』
あの時は何を言われているのか理解できなかったが、今なら少しだけ分かるような気がした。




