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27 捜索

戦闘シーンあります。

残酷描写が苦手な方はご注意ください。

 剣にナイフ、いざという時の火薬まで。

万全の準備を整えたリアンは、皇太子ユリスが行方不明となった山へ向かった。

木々は生い茂り、美しい花が咲き誇っている。


 ユリス殿下は、熊の目撃情報の多い沢へ向かって進んだそうだ。

ユリス殿下の捜索に来た兵たちも、沢付近で熊に遭遇したと証言している。

手がかりを掴むため、まずはそこへ向かうのが良いだろう。

出発前にアイザックから説明された道筋を思い出しながら進んでいく。

帰り道が分からなくならないよう、所々で木に印をつける事は忘れない。


 空は晴れ渡り、気持ちの良い日だった。

深呼吸をすれば、肺いっぱいに草木の良い香りが入り込む。

木陰で読書なんてしたら素晴らしい気分だろう。

そんな誘惑に駆られながらも、山を進んでいく。


 しばらく進んだ頃だろうか。

微かに水の流れる音が聞こえた。

空気の流れも変わったようだ。

目的の沢が近いのかと、気を引き締めて慎重に近づいていく。



 ――バシャッ バシャッ

 水の撥ねる音に、思わず剣を抜いた。

何かがこちらに近づいてきているようだ。それもかなり早い。

いつ熊が飛び出してきてもいいよう、周囲への警戒を強める。


 その瞬間、目の前に黒い影が飛び出した。

切りつけようとした瞬間、鋭い何かによって防がれてしまう。

影を目で追えば、黒狼がこちらに牙を向けていた。

何でアドルフがこんなところに……。

辺りを見渡せば案の定、金髪の男が追いかけてきた。


「なんでナハトがこんな所にいる。」

リアンの存在に気付いたナハトは一瞬驚いた顔を見せた。

そして、牙を向けるアドルフを一撫でして落ち着かせる。


「それはこっちのセリフだっつーの。町で熊退治の依頼を受けたんだよ。」

俺は傭兵だからな、とナハトは続けた。

戦争や護衛以外の仕事も引き受けているようだ。


「僕も熊退治と、それからユリス殿下の捜索を依頼されたんだ。」


「ユリス殿下の捜索……って事は町で聞いた話は本当だったのか。」

リアンは肯定すると、他にも王宮で聞いた情報を伝えた。

ユリス殿下が1週間戻っていないという事を伝えると、ナハトは険しい表情をして黙りこんだ。

かなり厳しい状況であることは間違いない。


「なるほどな。それで? ユリス殿下の手掛かりはあるのか?」


「いや、沢付近で熊の目撃情報があった事くらいしか。」

そう伝えると、ナハトはため息を吐く。


「そんな闇雲に探しても見つからねーぞ。……仕方ない。これも何かの縁だと思って手伝ってやるよ。ただし、熊は俺の取り分だからな。」


「ナハトは手がかりがあるのか?」


「バカ。俺にはアドルフがいるから人探しは得意だ。見て分かるだろ。」

アドルフの頭を撫でながら、ナハトは呆れたように呟いた。

確かに狼の嗅覚は人間の100万倍というから、手伝ってもらえるなら心強い。


「ありがとう、助かる。」

そう伝えれば、今回だけだからな、とぶっきらぼうに返された。

素直じゃない。




 アドルフの嗅覚を頼りに辺りを捜索すると、沢から程近くの洞窟を発見した。

アドルフは洞窟の前に立ち止まり、唸り声をあげている。

この中にユリス殿下がいるのだろうか。

それにしても、この興奮具合……。


「この中にユリス殿下がいるのは間違いないが、人食い熊も一緒にいるみたいだぜ。」

ナハトがアドルフを落ち着かせようと試みるが、興奮は収まらない。

今にも飛び出して行きそうだ。


「行くしかないだろう。アドルフは大丈夫か?」


「怯えてるわけじゃねーから問題ない。」


「そうか。」

リアンは剣を抜くと、刀身に炎を纏わせた。

炎の明かりを頼りに洞窟を進んでいく。

洞窟は思っていたより大きいようで、奥へ奥へと誘われた。


 人食い熊が住み着いているのか、ほんのりと血の臭いが漂っている。

それに所々で巨大な足跡が見てとれた。

アドルフの唸り声は、よりいっそう大きくなっていく。


 ――ガンッ ガンッ

リアンの耳が物音を捉えた。

何かがぶつかるような音が継続的に聞こえてくる。


「この先にいるな。」

ナハトにも聞こえたようで、神妙な顔で頷いた。

いつでも応戦できる準備をし、音の聞こえる方向へ駆け出す。

そして発信源を岩影から覗き込むと、衝撃の光景が広がっていた。


 開けた空間に血が飛び散り、剣や弓が散らばっている。

その中心では、リアンの何倍もあるような巨大熊が一心不乱に体当たりを繰り返していた。

よく見れば、壁の下に小さな隙間がある。

ユリス殿下が中にいる可能性も高い。

戦闘中に、壁の隙間へ逃げ込んだのだろうか。


 リアンは、先手必勝とばかりに熊に向けて炎を放った。

炎は渦を巻いて熊を飲み込んでいく。

そして熊を焼き付くす……はずだったが、炎の消えた先には怪我した様子のない熊の姿があった。

こちらを威嚇するように、立ち上がって唸り声をあげている。


 ……どういうことだ。何で炎が効かない。

リアンのエレメンタルは確かに熊を飲み込んでいたはず。

焼き付けされていてもおかしくないのだ。


「危ない!」

混乱しているリアンに熊が襲いかかってきた。

間一髪の所で、ナハトがそれを受け止める。


「よそ見してんじゃねー! こいつは俺の獲物だ。お前はユリス殿下を助けろ。」

ナハトに叱責されて我に返った。

そうだった……まずはユリス殿下を助けなければ。


 リアンはナハトにアイコンタクトを取ると、壁の隙間へ体を滑り込ませた。


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