表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/60

25 アルビオン王国

 王都ブレイジアを出発して10日。

野盗に襲われるというトラブルは発生したが、それ以外は問題なくアルビオンに辿り着いた。

国境を越えたあたりから気候は徐々に変わり、空気がカラッとしている。

エムレーア王国のような湿地帯はなく、代わりに草原が広がっていた。

その景色の違いに、異国へ来た実感が沸く。



 アルビオンに到着したリアンたちは、王宮へ案内された。

エムレーア帝国と比べて暖かな気候であるため、窓を多く確保した開放的な作りとなっている。

窓から見える町並みも、ブレイジアとはどことなく違っていた。


「こちらがアイザック殿下にお使い頂く部屋となります。何かありましたら、何なりとお申し付けください。」

ここまで案内してくれた従者は、説明を終えると去っていった。

部屋にはリアンとアイザックだけが残される。


 ナハトとは、王宮に到着してすぐに別れた。

自分の仕事はここまでだと、門番から報酬を受け取り去っていったのだ。

しばらくはアルビオンに滞在すると言っていたので、また会う機会があるかもしれない。

程なくしてカミラも公務があるからと去っていった。



「国王陛下や皇太子殿下との謁見は、明日となりそうですね。」

リアンは仮面を取り外しながら、口を開く。

先程の従者の説明によると、明日の昼頃に謁見が予定されているそうだ。


「そのようだね。時間ができた事だし、リアンは町に出てみてはどうだ。あまり国外に出た事はないだろう。」

用意された執務机に書類を広げながらアイザックは答えた。

リアンが国外に出るのは、戦争以外では初めてのことだ。

もちろん他国で町を出歩いた経験はない。


「しかし私が出てしまうと兄上が……」

従者として着いてきたため、リアンがいなくなればアイザックの世話をする者がいなくなってしまう。


「私はしばらく書類の処理をしているだけだから問題ない。行っておいで。」

それならばと、アイザックに背中を押される形で王宮を後にした。

日没までに戻ると伝えてきたが、今はまだ太陽が真上に昇っている。

しばらく町を散策できそうだ。

内心浮かれながら王宮を出ていく後ろ姿を、アイザックは微笑ましそうに見送った。



 町へ出ると、ブレイジアとの違いに目がいった。

湿気の多いブレイジアは木造の建物が多かったが、アルビオンには石造りの建物が多いようだ。

それに当たり前だがエターナルブレイズはどこにもない。

夜になれば、真っ暗になってしまうだろう。

国外に出て、改めてエターナルブレイズの凄さを実感した。


 国土の大半を湿地帯が占めるエムレーア王国が強国として君臨できているのは、エレメンタルの力が大きい。

エレメンタルを有した高い軍事力により隣国と同盟を結び、不足している食料や資源を輸入するのだ。

アルビオンもその1つ。

有事の際にエムレーア王国から兵を出すかわりに、豊かな土壌で採れた食物を安く提供してもらっている。

そんな背景もあり、ブレイジアでは見たことないような食べ物が売られていた。


「おじさん、この黄色くて丸いのって何?」

店先で気になるものを見つけ、店主に尋ねた。

りんごに比べる小さく、色も赤み掛かっている。


「これはミルベって果物だ。お兄さん、アルビオンに来るのは初めてかい?」

恰幅の良い店主が愛想良く教えてくれた。


「そうなんだ。エムレーアから来たんだけど、見たことなかったから。」

そうかそうかと、店主は豪快に笑った。

歓迎されているようだ。


「ミルベは傷むのが早いからアルビオンでしか出回らないんだ。せっかくアルビオンに来たんだから、1つ食べてみろ。」

そう言うと、売り物として並べられていたミルベを取り出した。

お礼を言って噛り付くと、口いっぱいに甘さが広がる。

甘さの中にある酸味がアクセントとなり、いくらでも食べられてしまいそうだ。


「おいしい……。」

思わず呟くと、当たり前だと店主は笑った。


「1袋どうだい? 安くしとくよ。」

さすが商売人なだけあって抜かりないな。

でも兄上のお土産にちょうど良いか、と思い1袋購入した。

店主は、先程以上に良い笑顔で笑っている。


「ところでこの近くに腕の良い武器屋ってあるか?」

せっかく町に出たのだから武器屋も覗いてみよう思った。

まだ、時間もありそうだ。



 店主に聞いた説明を頼りに、武器屋に辿り着いた。

看板も出ていないため、知らなければ辿り着けなっただろう。

店を覗けば、剣や槍、弓など一通りの武器が揃っている。

アルビオンの兵は弓を使うことが多いため、弓は特に充実していた。


 ……良い弓だ。

陳列してあった商品の1つを前にし、思わず呟いた。

安定した形に絶妙な反り具合。

特殊な素材を使っているのか、少し光沢がある。

弓使いだったら絶対に購入していたと思う。


 それにしても、この店で取り扱っている武器はどれも品質が良い。

可能なら自分の剣も打って欲しいくらいだ。


「ここの武器は君の家族が作っているのか?」

店番をしていたと思わしき少女に尋ねてみた。

ブレイジアまで届けてもらう手段があれば、打ってもらうと思った。


「全部、父さんが作ってるんだ。でも今は熊退治に行ってるからいないよ。」

少女は少し不貞腐れたように答えた。


「熊退治……?」

狩りだろうか。

それくらいならすぐに帰ってきそうだが。


「でっかい人食い熊が現れたんだ。そいつを倒すために町中の弓使いが連れて行かれた。父さんも連れて行かれたっきり戻ってこない。」

俯く少女は泣きだしそうだった。


「アルビオンの猟師が手こずるような熊なのか。」

アルビオンの猟師の腕の良さは有名だ。

アルビオンの兵が弓をよく使うのは、その影響を受けている。


「私は見たことないけど山みたいにでかい熊だって。山の主なんて呼ばれてるよ。」

それは父親が心配になる気持ちも分かる。

明日、国王陛下に謁見したら聞いてみようか。

もしかしたら力になれるかもしれない。



 少女の事が気がかりではあったが、日没が近付いてきたためリアンは王宮に戻った。

兄上に今日の出来事を話すと、何やら考え込んでいる素振りを見せていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ