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21 神炎の儀

 ――ブレイジア祭最終日。

この日は、日没後に神炎の儀(しんえんのぎ)が予定されている。

驚いたのだが、リアンも神炎の儀に立ち会うよう国王から指示があった。

正式な立会人というわけでなく、あくまで立会人の従者という扱いだが。

そのため、夕方にはアイザックと合流することになっていた。


 そのアイザックはと言うと、朝から神炎の儀の準備で忙しそうに走り回っている。

明け方まで夜会に参加していたというのに体は大丈夫なのだろうか。


 リアンは特にする事もなかったため、王都へ降りることにした。

昨日まで剣闘会の事で頭がいっぱいだったが、1日くらいはブレイジア祭を楽しむべきだろう。

とは言え1人で祭りを楽しむ気になれず、モナを誘った。


「私は罪を償うためにメイドの仕事をしているので、お休みを頂くわけにはいきません。」

と最初は固辞していたが、リアンの世話のためと言って無理やり納得させた。

いつも真面目に働いているのだし、偶には構わないだろう。




 王都へ出ると、多くの人々で賑わっていた。

大通りの脇にはおいしそうな食べ物はもちろん、様々な種類の店が立ち並んでいる。

この日のために他国からやって来る商人も少なくない。

物珍し気にするモナと一緒に。それらの店を覗いていく。

珍しいものを見つけてはモナが目を輝かせている。


「ブレイジア祭に来るのは初めてなのか?」


「はい。王都に出てきたのは最近でしたので。見た事ないものばかりで目移りしてしまいますね。」

楽しそうなモナの様子に、リアンまで幸せな気分になった。


「それは連れてきた甲斐があったな。」


「本当にありがとうございます。リアン様には感謝してもしきれません。」

ここまで感謝されると、少し恥ずかしくなってしまう。

まさかあの時のシスターと、こんな風に笑い合う日がくるとは想像もしていなかった。

けれども、穏やかで悪くない気分だ。


「あっちの店も覗いてみようか。」

その後もいくつかも店を回り、ブレイジア祭を満喫した。

昼食に食べた燻製肉はおいしかった。




 ――時は逢魔時。

中央塔の上には、国王アルバート、第一王子アイザック、そしてリアンのみが立っている。

王都民は王宮の周辺に集まり、その様子を見守っていた。

神炎の儀は、国王と立会人のみで執り行われる。

リアンがこの場にいるもの特例だったが、剣闘会のことを考慮して国王が独断で決めたそうだ。


 赤みを残していた空がどんどん暗闇に飲まれていく。

暗闇に全てが包み込まれた瞬間、神炎の儀は始められる。


「お前たち2人が生まれた時のこと、今でも鮮明に覚えている。」

空を見つめていると、アルバートが口を開いた。


「預言により、双子が産まれた場合は片方しか認められないことが予め決まっていた。そんな中、産まれてきたのがお前たちだ。」

ぽつぽつとアルバートは語り続ける。

このような事をアルバートから直接語られるのは初めてだった。


「苦渋の選択だったが、後から産まれてきたリアンを認知しないことに決めた。そして誰にも公表することなく、信頼のおけるアゼリア夫人に託したのだ。」

アゼリア夫人はフェンリーの母親であり、アイザックとリアンの乳母でもある。

リアンが真っすぐと育つことができたのは、アゼリア夫人の力が大きい。


「そんなお前たちがここまで来られた事を嬉しく思う。これは何もできなかった父親からの餞別だと思って受け取ると良い。よく見ておけ。」


 暗闇に空が飲み込まれた時、アルバートは東の塔のエターナルブレイズに向け、スッと右手を挙げた。

炎は次第に弱くなり、とうとう消えてしまう。

王都は完全に暗闇に支配された。


 ――そして。

中央塔の設置台に右手を向けると、新たなエターナルブレイズが燃え上がる。

炎はどんどんと勢いを増していき、設置台そのものを飲み込んでしまう。

それでも尚、炎は止まることを知らず、王都全体を昼間のように明るく照らし出した。


 目にした王国民は炎の強さに目を奪われる。

焼け付くような強烈な炎は、エムレーア王国の希望そのもの。

炎を見られたことへ感謝と、未来への希望を口々に述べている。


 間近で目にしたアイザックとリアンも例に漏れず、炎に魅了された。

この炎の前では、何もかもが無力に感じてしまう。

それほど強烈な炎だった。


 しばらくすると炎の勢いは落ち着き、設置台に収まった。

エターナルブレイズの移動が完了したのだ。

しかし炎の勢いに耐え切れなかった設置台は、一部を残して焼け落ちてしまった。

風をモチーフとしたデザインは溶かされ、まるで溶岩の上にエターナルブレイズが燃え盛っているようだ。


 それを見届けたアルバートは、後は任せたと言い残してその場を去った。

残されたアイザックとリアンは、しばらく設置台の上で燃え盛るエターナルブレイズに目を奪われた。


 その炎の中に、現国王アルバート=ブレイズの真の姿を見たような気がした。



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