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16 ブレイジア祭

 ブレイジア祭。

それは王都を中心にして、3日間に渡って開催される国民的な祭事だ。

王宮を中心に出店が立ち並び、期間中には様々なイベントが開催される。

中でも国民の関心が高い行事は3つ。

顔見世、剣闘会、そして神炎の儀(しんえんのぎ)である。


 顔見世は1日目の最初に行われるイベントであり、王族一同が王宮のバルコニーに姿を現す。

普段表に出ることの少ない王族を拝見できるとあって、王都中から王宮前に人々が集まるのだ。

昨年も、王宮前広場に入りきらない程の人々が押し寄せていた。


 剣闘会は、1日目に予選、2日目に決勝トーナメントが開催される。

予選はバトルロワイヤル形式で行われ、決勝トーナメント進出者8名に絞られるまで続けれらる。

時には決着がつかず、丸一日続けられたこともあった。


 神炎の儀は、3日目の日没後に執り行われる。

移動先は中央塔と信託されたため、既に中央塔の上には風をモチーフにした設置台が準備されていた。

それを目の当たりにし、苦々しい気分になる。


 また、平民は参加できないが、王宮では2日目の夜に夜会が開催される。

王国中の貴族のみならず、近隣諸国の王族や貴族も招待される大規模な夜会だ。

これを楽しみに領地から出てくる貴族も多い。




――ブレイジア祭1日目。

リアンは顔見世のため、王宮前に足を運んでいた。

もちろん王族としてバルコニーに立つことはできない為、下から眺める事になる。

本日限定で王宮前広場が解放されているため、まだ早朝だというのに多くの人々が集まっていた。

少しでも良い位置で王族を拝見しようと、場所取りをしているのだ。


 リアンもバルコニーが程よく見える木陰を陣取り、腰を下ろす。

顔見世までしばらく時間あるため、ここで待機することにした。

時間を潰すため、懐から1冊の本を取り出す。

昨晩、メイドのモナが用意してくれたのだ。主に祭事についてまとめらている。



 読書をすること数時間。

いつの間にか広場は人々で埋め尽くされ、王族が現れるのは今か今かと心待ちにしていた。

昨晩アイザックに聞いた情報によると、もう間もなくだ。

リアンは読んでいた本を片付け、立ち上がる。


 バルコニー前のカーテンが開かれたのは、その直後だった。

国王が姿を現すと、広場に歓声が上がる。

それに応えるよう国王が右手を上げ、歓声はさらに大きくなった。


 国王に引き続き、妃、王子、王女たちが順に姿を現す。

広場から見上げる王族はとても神聖に見え、自分と血が繋がっていることを忘れていまいそうになる。


 自然とアイザックに目を向けると、目が合ったような気がした。

白を基調にした王族衣装を身につけ、黒く美しい髪を風になびかせている。

リアンとアイザックは瓜二つだと言われるが、リアンからすればそうでもない。

表情や仕草はもちろん、よく見れば瞳の色も若干異なる。

アイザックの方が鮮やかで透き通るような赤、リアンの方は濃い赤色だ。


 また、母の姿も探してみたがバルコニーにはいないようだった。

母はリアンの境遇に気を病み、リアンが産まれてからは後宮に籠りがちになってしまった。

ここ数年は、リアンも姿を見ていない。

今日も参加を見送ったようだ。


 歓声がある程度収まると、国王による挨拶が始まった。

風のエレメンタルにより広場中に声が響き渡る。

1年の労いの意と、無事にブレイジア祭を迎えられたことへの感謝が述べられた。

王国民は皆、満足そうな笑顔を浮かべている。


「それでは、皆の者。存分にブレイジア祭を楽しんでくれ。」

最後にそう締めくくり、国王による挨拶は終わった。

民衆の興奮冷めやらぬ中、王族はバルコニーに奥へ戻って行く。

王国民は口々に、国王が元気そうで良かった、第二王女はやはり美しいなどと言い合っていた。



 顔見世が終われば、いよいよ剣闘会である。

リアンは1度地下室へ戻ってアイザックと入れ替わり、剣闘会の選手控え室に向かう。

その途中、賭博のための投票所へ立ち寄った。

アイザックの優勝に賭けるため、リアンの全財産を叩いて投票券を買ったのだ。

これも退路を断つというリアンなりの覚悟であったが、フェンリーは呆れていた。



 リアンが選手控室に着くころには、ほとんどの参加者が揃っていた。

予選に備え、各々でウォーミングアップをしている。

この中で明日の決勝トーナメントに参加できるのは、たったの8人。

少しの油断が命取りになってしまうため、皆準備に余念がない。


 壁際では、シュトロハイム騎士団長が刀の手入れをしていた。

昨年の優勝者であり、今回の優勝候補筆頭でもある。

どうやら、第二王子エリックが代理人として指定したようだった。


 部屋の中央付近では、第三王子二コラがウォーミングアップをしている。

現在は、王国騎士団支給の戦闘服に身を包んでいた。

先程バルコニーで見た時と異なり、その姿は勇ましい。

こちらも優勝候補の一角であり、予選は問題なく突破するだろう。


 また今回、第四王子ライオネルは代理人を立てることを辞退したそうだ。

エリックからの指示ではないか、というのが兄上の見解だった。


 予選開始まで残りわずか。

高ぶる気持ちを抑え、他の参加者同様ウォーミングアップを始める。

――待っていてください、兄上。絶対に優勝してみせます。


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