[幕間] 第一王子と従者
これにて第一部は終了です。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
幕間は、ほぼ会話のみの形式となっています。
エムレーア王国第一王子の執務室。
そこでお茶を飲むアイザックと、給仕をするフェンリーの姿があった。
「どうしてリアン様に嘘を吐かれたのですか?リアン様であれば、あの薬を飲んで幻覚を見ることはあれど、副作用や依存症の心配はないと思うのですが。」
「それはどうだろう。あの薬の力は侮れないよ。」
「私にそんな誤魔化しは通用しませんよ。アイザック様とリアン様のことなら、誰よりも理解していると自負しておりますので。」
「やれやれ、フェンリーには敵わないね。確かにあの薬をリアンが飲んでも、幻覚を見るだけで体に異常は出ない。」
「それでは、どうして?」
「リアンの理想の中に、リアン本人が含まれていないからさ。あの薬は、飲んだ者が最も強く望む光景を見せる。リアンは、おそらく私が皇太子もしくは国王になる瞬間を見るだろう。しかしそうなった時、リアンは自分のことを不要だと思っている。それを今自覚させる必要はないからね。」
「それは第一王子としての考えですか?」
「どちらかと言えば兄としてかな。これでも人並みに弟をかわいいと思う感情はあるのでね。」
「その割に、リアン様を平気な顔で何度も死地に送り出しているではないですか。」
「私は第一王子だからね。リアンを犠牲にしてでも成さなければならないことがある。もしも国とリアンを天秤にかけなければならない時、私は間違いなく国をとるよ。」
「それは理解しているつもりです。」
「でもフェンリー。君はリアンをとってくれるんだろう?」
「もちろんです。私は何を敵に回しても、最後はリアン様の手をとると思います。アイザック様を敵に回したくはありませんが。」
「ははっ。君をリアンに付けた甲斐がある。その手腕と能力を活かして私の下につけば、出世が約束されているというのに。」
「アイザック様に私は必要ありませんよ。あなたは、お一人でも生きていける方だ。もちろん必要があれば、お手伝いくらいはしますが。」
「それはリアンの従者としてかい?」
「いいえ。アイザック様の幼馴染として申し上げております。」
「そうか。私とリアンは、何とも頼もしい幼馴染を持ったものだ。」
2人は顔を見合せ、吹き出した。
執務室には、しばらくアイザックとフェンリーの笑い声が響き渡っていた。




