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女大好き、クズ王子~転生魔王のハーレム英雄譚~  作者: 葉月
第三章

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107話 約束

 俺は待っていた……いつか訪れる復讐の機会を。

 何もかもを奪われたあの日から、一体どれだけの歳月が流れただろう。

 俺に残されたものは姉のミゼアだけだった。


 ミゼアだけは必ず守ると誓ったはずなのに……俺は守ってやることができなかった。

 ミゼアはいつも大丈夫だと俺に言う。


 大丈夫じゃないくせに大丈夫だと、ミゼアの目が訴えかけてくる度、俺は俺を嫌いになっていった。

 俺はミゼアの心さえも守ってやることができなかったんだ。


 村を奪われ親を殺され、自由を奪うだけでは飽き足らず、クルセとホルムデヒドというクソはミゼアの尊厳さえも踏みにじり奪ったのだ。


 村の為に命を賭けて戦った父は死の間際言った。

 男のお前がミゼアを守るのだと。


 俺は尊敬する父との約束さえも、今の今まで守ることができなかったのだ。

 ホルムデヒドにミゼアが表情さえも奪われる度に、俺の心は雪原の大地のように凍てついていった。


 ミゼアは決して弱音を口にすることはなかったが、嘆き悲しむ心に反応するように、悪性変異(・・・・)という嘆きを生み出すことになった。


 あの技を見る度にどれだけミゼアの心が悲しみに染まっていたのか、俺には想像さえできなかった。

 また俺の氷帝(・・)も一種の呪いのようなものだと自覚している。


 だけど、今ならわかる。

 この力は大切な者を守る為に俺の心が生み出したものだったのだと。


 クルセの束印から解き放たれた今、俺は俺の殺意に純朴に従うだけだ。

 俺は狼狽えるホルムデヒドに明確な殺意を向けた。


「わ、わかっているのですか? 私に歯向かえばそれはクルセ様に歯向かうという事なんですよ? 今なら許してあげましょう、そこの人間を殺しなさい!」

「「黙れ!」」


 俺とミゼアの言葉がシンクロする。

 俺たちの気持ちは一つだ。


 例えクルセに殺されることになったとしても、今この手でコイツを殺せるならどうでもいい。


 俺とミゼアは大地を蹴り上げ、父と母から貰った漆黒の翼を羽ばたかせ、左右からホルムデヒドに襲いかかった!


「「ホルムデヒドオオオオオ!」」


 左右から息の合った俺とミゼアの蹴りを両腕でガードするホルムデヒドは、腐ってもクルセの部下だ!


「この程度でこの私を殺れると本気で思っているのですか? いいでしょう! 愚か者に罰を与えてあげましょう!」


 ホルムデヒドの強大な魔気が放出されると同時に、ホルムデヒドから距離を取る俺とミゼア。

 俺は瞬時に三叉槍を創り上げ構えると、ミゼアも前屈みで地面に爪を立ててホルムデヒドの出方を伺っている。


「束印がなければ私に勝てるとでも思っていたのですか? 舐められたものですね?」


 ホルムデヒドは俺とミゼアを交互に見ては不敵な笑を浮かべている。


「図に乗るなよホルムデヒド! 私とゼセット二人を相手に、お前に勝ち目なんてないんだよ!」


 ミゼアの言葉を聞いたホルムデヒドは嘲笑うように睥睨し、ホルムデヒドの足元が黒く染まっていく。

 恐らくはホルムデヒドの魔技だろう。


 ホルムデヒドは普段から面倒な戦闘はすべて部下にやらせていた為、俺たちも奴の魔技を目にするのは初めてだった。


 ホルムデヒドの足元の闇の中から、無数の太ももサイズの黒い触手がニュルニュルと伸びている。


「なんだあれは?」

「気をつけるんだよゼセット!」

「ックククク」


 足元から生えた触手に囲まれたホルムデヒドが、勝ち誇ったように笑っている。

 一体あの触手はなんだ?


「お前たちのようなチンケな魔技とは違い、私の過食侵食(・・・・)は実に美しい、そうは思いませんか?」

「過食侵食だと?」


 一体どんな効力を持つと言うんだ。


「たっぷりとお前たちの心を喰らってやるとしますかね!」

「心を喰うだと?」

「ゼセット! あの触手に触れるなよ!」

「わかっている!」

「躱せきれますかね? 喰らって差し上げなさい!」


 目を見開いたホルムデヒドの意思に従うように、無数の黒い触手が伸びては俺とミゼアに襲いかかってきた。


 俺は手にしていた三叉槍で襲い来る触手を切り刻んでは凍らせていくが、触手は次から次へとホルムデヒドの足元から生えては襲いかかってくる。


「これではキリがない!」


 いくら切っても凍らせても次々に生え変わる触手に阻まれて、ホルムデヒドに近づく事さえできずにいると、不意にミゼアの声が聞こえる!


「クソッ離せ!」

「ミゼア!」


 武器を持たぬミゼアは鋭く研ぎ澄ました爪で触手を切り刻んでいたが、リーチが短すぎたのか触手に足を掴まれ逆さ吊りにされている。


 俺はミゼアを助けようと三叉槍を振り回し触手をなぎ払って近づこうと試みるが、思うようにミゼアの元まで近づけない。


「やっ……やめろ!」


 ミゼアは足だけではなく両手も触手に掴まれ、空中に張り付けられている。

 ミゼアの体を這うように触手は纏わり付き、ミゼアの自由を奪っていた。


 体を拗らせなんとか脱出しようと試みるミゼアの抵抗も虚しく、触手はズボズボとミゼアの口内に入り込んでいく。


「ミゼアァァァ!」


 苦しそうなミゼアを見て高笑いを繰り返すホルムデヒドをぶっ殺してやりたいが、触手がそれを阻んできやがる!


「いい眺めですよミゼア! まずはお前の心を喰らってあげましょう。よく見ておきなさいゼセット! 姉のミゼアが廃人と化すその瞬間を!」

「ホルムデヒドオオオオ!」


 俺の叫びすらも阻むように触手の壁が俺とホルムデヒドを遠ざける。

 そうしている間にも、ミゼアの苦痛の叫びが耳に届いては俺を焦らせる。


「ぐぅぅ……ぐああぁぁぁ」

「ミゼアァァ! しっかりしろミゼアアアア!」


 三叉槍を振り回しながらミゼアの名を叫ぶ事しかできない俺は……無力だ。

 俺は結局ミゼアを救えないのか!

 父との約束を守ることさえできないのか……。

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いつも読んで下さっている皆様には、本当に感謝しております。

ありがとうございます。m(__)m

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一話だけでも……!
是非お読みください!
モンスターボールを投げたらノーコン過ぎて女勇者を捕まえてしまった件。
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