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第十五話 取材

 一週間はあっという間に過ぎて、木村のインタビューの日がやってきた。昼までは川島が大学へ行き、授業を受けた。家に帰ると川島も気を利かせてすぐに木村に代わった。


 木村は交代すると、服を着替えて化粧をした。そして、事務所へと向かった。事務所に着くと、事務所の前で高木が待っていた。


 木村は家を出る前に高木に電話を入れておいたのだった。




「真衣ちゃん、こんにちは。じゃあこの車に乗って」




 高木はそばに停まっている車を指差して言った。




「こんにちは。高木さん、今日はよろしくお願いします」




 木村は軽く頭を下げて言った。高木は頷いて、木村を車に乗るように促した。車は高木が運転した。こうしてみると、マネージャーという感じが高木から出ていた。


 車が着いた先は、とあるホテルだった。二人は車から降りてホテルの中へ入る。高木が前を歩き、エレベーターに乗り込んだ。


 高木は三階のボタンを押す。三階に着くと、二人はホテルの一室へと向かう。高木が部屋の呼び鈴を鳴らす。すると、ほどなく部屋のドアが開いた。




「高木さん、お待ちしてました」




 中から現れたのは若い男性だった。年は見た目から予測するに二十代後半ぐらいだろうか。


 その男性は高木の姿を確認してから横に立っている木村の姿を見た。男性は木村を上から下まで見てからようやく声をかけた。




「木村真衣さんですね。どうぞ中の方へ」




 そう言って二人を誘導した。部屋の中はカメラなどの機材が設置されていた。木村は少し驚いた。インタビューだけなのにカメラがあるということに首を傾げた。


 そんなことを思っていると、その男性からソファーに腰掛けるよう言われた。ソファーに座ってから木村は男性に尋ねた。




「あの、どうしてカメラがあるんですか?」




「インタビューの場面の写真もインタビュー記事と共に載せるんですよ」




 その男性は木村に丁寧に説明した。そして、ようやく名刺を差し出してきた。




「今回インタビューをさせていただく速水(ハヤミ)です。よろしくお願いします」




 速水はそう言って手を差し出した。木村も緊張しながら握手を交わした。名刺にはしっかりと『BW』編集者と記されている。


 時間も限られているため早速、インタビューが行われた。インタビューでは初めてのモデルの仕事に際してどういう心境か、これからの抱負、モデルにスカウトされた時どう思ったかなどの質問が続いた。


 木村は緊張が一つもほぐれることなく、質問に答えた。インタビューの最中、何度もシャッター音が飛び交っていた。

 もちろん、カメラ目線は禁止。木村もインタビュアーとの一対一の会話をしている場面を撮っていると理解していた。


 高木はそれを物静かに見届けていた。約三十分ほどでインタビューは終了した。




「ありがとうございました」




 木村はきっと自分の表情が強ばっていただろうなと思いながら、速水に礼を言った。




「はい。お疲れ様でした」




 速水は優しい笑顔を浮かべながら言った。木村も気が楽になり、肩の力がフッと抜けた。速水は高木の元へ向かい、話しかける。




「今日はありがとうございました。またインタビューが出来るのを楽しみにしていますね」




 速水は再び『BW』での仕事があることを期待しながらにこやかに話した。




「こちらこそありがとうございました。初めてのお仕事が御社であったのは本当にありがたかったです。またよろしくお願いします」




 高木は丁寧に改まって速水に言葉を返す。すべてを終えて、木村と共に部屋を後にした。エレベーターの中で高木は木村に話しかけた。




「お疲れ様。初めてにしてはきちんと受け答え出来てたと思うわよ」




 木村は褒められて嬉しくなった。それと同時に少し恥ずかしくもなった。




「でも、モデルの仕事はこれからだからね。インタビューはおまけみたいなものなんだから。次の撮影の仕事が本番よ」




 そんな木村を横目で見ながら、高木は少しプレッシャーをかけた。




「はい」




 木村ははっきりした口調で答えた。帰りは高木が車で木村を家まで送ってくれた。木村は家に着くなり、ベッドに倒れ込んだ。




「ごめん。健太、疲れた」




 木村がそう言うと、川島のわかったという声と共に体が代わった。川島は木村の服を脱ぎ、部屋着に着替えた。


 そして、夕食を済まして寝ることにした。横になり、川島は呟く。




「それにしても真衣すごいな。なぁ、真也?」




 川島は深沢に同意を求めた。しかし、すぐに応答はなかった。




「真也?」




 川島は不思議に思い、もう一度問いかけた。ようやく反応が返ってくる。




「あ、あぁ、そうだな」




 深沢の様子が明らかにおかしかったので、川島は疑問に思った。


 しかし、すぐに脳内に木村の声が響き、不思議に思った気持ちもかき消される。




「そんなことないよ。まだまだこれからだし。……それにしても、疲れた」




 木村の声は本当に疲れきっているようだった。


 それを聞いて川島は早く寝た方がいいと思い、目を閉じた。

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