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第二十二話


 葬列に並ぶように生気の抜けた顔で歩くのは、遥だ。彼女は遠くからでも分かるほど虚ろな瞳で歩いている。幽霊と見間違うほどの異質さに、私は言葉を止めた。


「あかりちゃん……?」


 ずっと病棟の窓を見つめる私に、縁川天晴も病棟へ振り向く。


「あいつ、何かする気じゃ……」


 縁川天晴が苦々しく唸りながら、病棟へ駆け出した。彼は、走っていい体じゃない。私は彼の名前を呼びながら慌てて駆け出す。


 でも縁川天晴は驚くほど速くて、追いつけない。今まで彼が走っているところを見たことは一度もなかった。こんなに足が速かったのかと思い知りながら、私は彼を追いかける。


 看護師さんが止めてくれればいいのに、病棟には誰もいない。


 人員不足を看護師さんが嘆いていて、話半分で聞いていたことを悔やみながら、私は腕を何度も振り上げる。


 私が花が好きと言ったら、花屋になろうとしたファンがいた。ライブで看護師さん大好きって言ってれば、少しくらい看護師さんになろうとしてくれた人がいたんじゃないかなんて考えてから、前まで見ないようにしていたファンのみんなの存在を意識していることに気付いた。


 それは間違いなく目の前の縁川天晴や、もう私が見えないさくらちゃん、ほかにもみんなのおかげだ。でも一番私を取り戻そうとしてくれた縁川天晴は、前を駆けていて手も届かない。


 私は胸に巣食う後悔を抱えながら走っていく。やがて病室に辿り着くと、遥が私のそばに立っているのが見えた。病室の外で、縁川天晴がその様子を窺っている。


「巻き込んでごめんなさい」


 遥は、私のベッドのシーツを握り締めていた。縁川天晴は声を潜めながら、「ずっと謝っているんです。貴女に」と耳打ちしてくる。


 遥が謝っている──?


「貴女は、私がリークの情報を流したと思っているんでしょうね……」


 彼女は今まで機嫌が悪いことはあれど、俯いたり、こんなにも虚ろだったことはない。


 何かある。


 私が一歩踏み出した、その瞬間のことだった。


「もう、終わりにしてあげる。巻き込んで、ごめん」


 遥が、私に繋がれた管へ手をかけた。


「今、楽にしてあげるから」


 優しい声に、引きずられそうになる。でも、「やめろ」と怒鳴りつける強い声が響いて、ハッとした。


「あかりちゃんに、触るな!」


 縁川天晴が飛び出し、とっさに遥の手を押さえる。血走った瞳をしながら、彼は遥にに怒りをぶつけた。


「なんなんだよお前っ、あかりちゃんの命まで奪わないと気が済まないのかよ!」


 自分に言われているとすら錯覚するほど、鬼気迫る叫びだった。


 責められた遥は、顔を歪めて首を横に振る。、


「違う! 私はそんなこと望んでなかった! あかりが私のことリークしたなんて思ってない! それに私はずっとアイドルを──!」


 遥は、言葉を飲み込んだ。彼女のスマホから、けたたましいほどの通知音が鳴り響く。ダイレクトメッセージの、通知音だ。


 一瞬、彼女と視線があった気がした。けれど彼女は手に持っていたスマホを壁に叩き付け、激情をぶつける。


「うるさい! うるさいよ全部! 全部嫌! みんな死んじゃえばいい! 私に指図しないで! みんな大っ嫌い!」


 遥は、思い切り縁川天晴を突き飛ばした。壁へと叩き付けられる形になった彼は、床に倒れこむ。


 私はとっさに縁川天晴の前に飛び出した。遥の勢いは収まらず、私のベッドに置いてあった松葉杖を掴んで振り上げる。


 このままだとすり抜けてしまう。手が届かない。嫌だ。縁川天晴が危ない。


 そんなの絶対に嫌だ。


 とっさに手を伸ばす。その瞬間、フラッシュのような強い閃光が周囲を遮った。


 そのまま激しい水流に飲み込まれる錯覚に陥る。


 とっさに手のひらを強く握りしめ、久しぶりに感じた布の感触に驚き目を開くと、ぼんやりと揺れ動く遥の背中が見えた。


 さっきまで、遥の目の前に立っていたはずなのに、まるでベッドに横たわりながら彼女の腕を掴んでいるような視界だった。


「あかり」


 遥が、私を見ている。


「戻った……」


 縁川天晴も、唖然としていた。


 私は、掴んでいる。手の中の感触で、今まさに私は自分の身体に戻ったのだと理解した。


 遥は、ただただ驚いて目を見開き、首を横に振った。


「違う。殺すつもりじゃなくて……私は、迷惑かけたから楽にしてあげたくて、だって、苦しいから、違うの……もう嫌……なにもかも嫌!」


 遥は、怯えているようだった。目には涙を浮かべ、ぽたぽたと滴が真っ白な床に落ちていく。


「私は、巻き込むつもりなかったの……違うの、こんなつもりじゃなかったのに!」


 鮮烈な訴えに、心が騒然として動きを止める。やがてぱたぱたと人が駆けてくる音がして、遥は逃げるように病室から出ていく。


「あ、あ、あかりちゃん、も、戻って……」


 縁川天晴が近づいてくる。声が出ない。なんとか呼吸だけを繰り返した後、私はようやく言葉を発する。


「あ、あの子、私のこと……一瞬……見えて……」


「じゃあ寿命が近いってことですか?」


 それは分からない。もしかしてだけど、自殺しようとしてるのかもしれない。身体のタイムリミットだけじゃなくて、心が限界だったら、たぶん──。


 私はベッドから降りようとした。けれど、全然力が入らなくて転がり落ちる。縁川天晴が慌てて飛んできて、身体を支えてくれた。


「ありがとう……」


「ほら、ベッドに戻ってください! 今ナースコール押しますから!」


 縁川天晴は私をベッドに横たわらせようとするけど、私は首を横に振った。


「探しに、行かなきゃ……」


「無理です! 死んじゃいますって!」


「……もう死なない。後追いされると困るから。それに──」


 縁川天晴の腕を掴んだ。


「好きだから」


 だからこそ、遥が心配だ。大切な人間がある日突然いなくなる怖さを、やっと感じられるようになった。


「ごめん──見逃して」


 私は、さっき縁川天晴を傷つけそうになっていた松葉杖に手を伸ばす。すると、彼が松葉杖を取り、こちらに渡してくれた。


「二度目はないって言った時、うんって言ったのに。貴女こそ嘘つきじゃないですか」


「……ごめん」


「危ないと思ったら、僕は貴女を優先します」


「ありがとう」


 私たちは、病室を出ていく。寝ていたのは一か月と少し、それなのに歩くのすらままならない。


 幽体の時より地に足がついている感じがしなくて、松葉杖を握り進んでいくのがやっとだ。身体が重くて、吐き気が止まらない。


 病室の廊下は、しんと静まり返っている。真っすぐなはずなのに、ぐにゃぐにゃする。


 看護師さんたちは患者さんの対応をしているらしい。遠くの廊下で足を速める姿がちらりと見えた。


「看護師さんが見たら、たぶん声をかけると思うから……」


 遥はどうやって病室に入ってきたのだろう。診療中ならまだしも、こんな時間、病室まで来ることは出来ないはずなのに。


「どうして、遥は、病室に……」


「もしかして、夜間救急に紛れたのでは」


「あれ、でも夜間救急って……」


「第三土曜日だけは受け入れてるみたいです」


 なら、夜間救急の通路を使って……?


 視線を向けると、言葉に出さずとも縁川天晴は、「ですね!」と、夜間救急と直結しているエレベーターに視線を向けた。


 エレベーターがどこの階に止まっているかを示すランプは、八階、七階、六階……とどんどん下がっていっている。


「俺階段で行ってきます! あかりちゃんはエレベーターで来てください」


 縁川天晴は、そう言うなり非常口に向かって駆け出した。


 私は焦燥にかられながら、エレベーターのランプを見つめる。そばにはエレベーターを待っている間、目を通す為にか、掲示板があった。


 緩和ケアの相談会や、健康的な食事についてのポスターが貼られている。そして、今月からドクターヘリを受け入れるとのお知らせが目に入った。


 ドクターヘリは、一刻も早く治療が必要な患者さんのために出来たものだ。


 学校の屋上と違い、扉を開ける必要性が出てくる。


 そしていま、救急搬送が多く、夜勤は人出が少ないと看護師さんが言っていた。


 ふっと最悪の想像をして、私は非常口へ一直線に向かう。


 遥は、降りてない。おそらく上がっている。落ちるために。


 私は松葉杖を突きながら階段を上る。死のうとするまでは階段の上り下りなんて苦痛を感じなかったのに、鉛をつけているのかと錯覚するほど一段が重い。


 松葉杖が手から滑り落ちて、ガタガタと音を立てて落ちていく。


 拾いに行っている時間はない。私は手をつきながら、這いつくばるように一段一段上っていく。


 間に合ってほしい。


 それか、屋上の扉が立ち入り禁止のまま、閉じていてほしい。祈るように何段も上っていく。やがて最上階に到着すると、扉は半開きだった。


 なんとか転がるように押し開いて飛び出すと、フェンスの向こうに遥がいた。


「遥」


 私は彼女の名前を叫ぶ。振り返った彼女は、私を見て驚いた顔をしていた。


「来ないで!」


「行くに、決まってるでしょ!」


 行くに決まってる。来ないでなんて言われて行かないわけない。


「それに、飛ぶ気なんでしょ? 私が行っても、行かなくても」


 私はそのまま、遥へ着実に距離を詰めていく。


「なんで、死のうとしてるの」


「それは……」


「なんで、私のこと殺そうとしたの」


 ずるい訊き方だけど、注意を逸らすにはそれしかなかった。遥はしばらく俯いて、こちらに振り返る。


「まつりが決まったドラマの番宣、本当は私の仕事のはずだったの。でもその前に、スポンサー……」


 七星まつりが、有名な女優さんのオフショットに一緒に写った。


 彼女はもともと捨て石や捨て駒なんじゃないかと言われていて、事務所からの扱いも悪かった。


 売れるアイドルにかける時間すら足りない中で、当初CDの売れ行きがあまり良くなかった彼女に目をかけるというのは、難しいことだったのだろう。


 でも、そのオフショットの公開から、周囲の態度が一変していた。彼女の口から「プロデューサーさんと食事に行った」と話題が増え、メイク室では忙しそうに台本を読んでいた。


「努力の差だったら諦めがついた。でも、全然そうじゃないじゃん」


 七星まつりの、拙さ。


 そんな面も含めて、彼女のファンは応援している。アイドルとしてではなく身近な隣人として彼女を応援している。だからか、歌やパフォーマンスを重視するファンは「話題性」だと厳しい目を向けることも多かった。


「皆、まつりがいればいいって思ってるよ。私なんかもういらないって。自分の上位互換が突然出てきた気持ちわかる? あっち、グッズもなにもかも売り上げトップだよ? わかるんだよ。言葉にされなくても期待されてないって、もう私なんて飽きられてるって、わかるんだよ。事務所のアカウント見た? あっちの配信開始は絶対宣伝するのに、私は宣伝すらしてもらえない。私が告知していいか聞いて、マネージャーのほうに返答来るのなんか、出演ぎりぎりだよ。私に情報来る頃には、全部終わってる。準備すらさせてもらえない。結果出さなきゃいけないのに、この世界は結果が全てなのに!」


 遥は、苦しげだ。ただ不平不満を口にしているのではなく、限界を見てしまったのかもしれない。


 アイドルという人に評価される仕事をしている以上、誰かに好かれなきゃ生きていけない。憧れられなきゃ、意味ががない。


 なのに炎上で救いを見出してしまうほど、彼女は追い詰められている。


「もう私には、後がないんだよ。炎上でもいい。注目が欲しい。だって頑張っても全然誰にも見てもらえない。苦しい。応援してくれたファンの皆に顔向けできない。全然、何も返せない。後だってもう、落ちるだけじゃん。もうわかるの。自分の考えが最低だって。でも苦しい。頑張ったの認めてもらいたい」


 遥の感情すべてに、身に覚えがあった。応援してもらったファンに顔向けできない。このまま落ちぶれていく姿を見せるくらいなら死にたい。消えてなくなりたい。


 誰からも期待されてもらえなくなるのが怖い。前の自分のほうが良くできてる気がする。こんなはずじゃなかった。


 遥の苦しみすべてに、吐きそうなくらいの身に覚えがある。


「この世界に、居場所がない」


 遥は縋るように私を見た。そして手のひらを握りしめる。



「返事はしてくれてる。でも分かるんだよ。自分の存在意義が捨て駒として扱われてないの。適当なんだよ。全部。今度仕事について打ち合わせしましょうって、企画説明しますって言って、そのままなの。何度も。同じ事務所の子は打ち合わせとかしてるの。私に割く時間はない。人気ないから。それなら貴方を相手にする暇はないですって提示してくれるほうが優しくて親切なくらい、自分って相手にされてないんだなってわかる。それをファンの人に見える形で、どんどん放り出されるの。何もかも」


「で、でも、マネージャーは? 遥のマネージャーは、遥のことすごく思って」


「事務所、辞めたって。炎上の責任とって。自分が辞めるから、私のことは辞めさせないでって頼んだって」


 言葉を失った。


 マネージャーが、辞めたなんて。


「もういない。私のこと怒ってくれる人も、見てくれる人も」


 遥のマネージャーはいつだって、遥が活躍することを望んでいた。


 他人の私から見てもそう感じていたのだから、彼女は肌でその期待を感じていただろう。


 その心の支えが、ない。


 事務所から期待をされない彼女の心を守っていたのは、間違いなくマネージャーやファンの声だった。けれど炎上でどれほどその声は減ったのだろう。


 唯一の心の支えにしていた存在を失った彼女は、いま──、


「死にたい」


 平坦な声色で、遥は言った。懇願を微塵も感じさせないその声色は、約束した未来を示唆するものだった。


「せめて今、かろうじているファンの心に残って死にたい。だってもう無理だもん。恩返しできる気がしない。私からファンの人を楽しませることができる何かを提示できない。みんなのこと見返す何かを持ってない。才能ないって気付いた。ここまで来れたのまぐれだった。分不相応だった。奇跡だった。間違いだった。だから私の前から本当に誰もいなくなる前に──終わる」


 遥の体が傾いた。


 気持ちは痛いほどわかる。私も同じだ。


 そうして私は逃げたくて、自分を殺そうとした。


 でも、


「駄目だって……!」


 私は身を投げようとしていた 彼女の腕を必死に掴んだ。 


「自分も死のうとしておいて、他人に死ぬななんて都合がいいのわかってるよ。これ以上どう頑張ればいいか分からないし、どうしようもなく生きてたくないって、絶対死ねば幸せだって思う気持ち分かるよ。でも、違うじゃん!」


 私は死ぬ気だった。


 死ななきゃいけないと思っていたけど、それ以上に死にたかった。だってどうしようもなく辛いから。


 世界の全部が私という存在を否定するような、もういらないって見放してくるようで、苦しかった。


「私も見ないふりしてた。自分が死んで悲しむ人のこと。 だって、何があっても遥には生きててほしい人いるでしょ? 遥がアイドルを続けるために、マネージャーは辞めたんでしょう? 遥の未来を、望んで遥から離れていったって、本当は分かってるんじゃないの?」


「うるさい」 


「生きてよ! 報われなくても生きろなんて言えないけど、それでも誰かのせいで死ななきゃいけないなんておかしいんだって。間違えてもいいじゃん。正しくなくていいよ。壊れてたって、許されなくても生きていいんだって。おかしくても関係ない。正しくなくてもそれでも、生きていいじゃん。間違ってもいいんだって! 私は、今思い知りそうになってる。大事な人がぱっと消えるのがこんなにも怖いって、死ぬ方はもう、死ぬことしか考えられないってわかってるよ。でも、死なないでほしいって思ってるよ。私は遥に死んでほしくない。誰にも死んでほしくないよ」


 死んでほしくない。


 賛美遥に死んでほしくない。縁川天晴に死んでほしくない。遠岸楽も死んでほしくなかった。誰も死んでほしくなかった。生きて会えたらって、一緒にいられたらって思っている。これから先、ずっと。


「死ぬほうが幸せを感じるかもしれない。苦しくてどうしようもないかもしれない。生きてるうちにしか出来ないこと、あるんだって。生きよう、一緒に。一緒に生きて」


 これから先、また死にたくなる瞬間は来るかもしれない。そんな私に、誰かに死ぬな、なんていう資格はきっと無い。それでも。


「お願い……」


 それでも、この手を離したくない。


 私は一生懸命、遥の腕を掴む。けれど病み上がりであることや重力も相まって、彼女の華奢な身体はどんどん夜の奈落へと導かれるようにずるずると落ちかけていく。


 私が自分を殺そうとしたことを、止めたいと思ってくれた人がいた。


 同じように、いま、遥が死のうとしてると知ったら、手を伸ばしたいと思う人間がいるはずだ。その人の分まで、私が遥の腕を掴まなきゃいけない。


 それなのに、両手で掴んでも、ずるずると私の身体も下へと下がっていく。手すりが骨にあたって痛い。早く引きあげなきゃいけないのに。一人じゃ力が足りない。


 真っ暗で、誰も見えない。


「あかりちゃん!」


 叫ぶような声に、目を大きく見開いた。私が遥を掴む手に、さらに縁川天晴の手が重なる。


 ぐんと引き上げる力が楽になって、そのぶん遥を思い切り引っ張り上げる。


 何度も何度も引っ張って、やがて遥の足がぺたりと屋上の地面についたことに安堵して、私は一気に脱力した。やがて噺田先生がやってきて、こちらに駆け寄ってくる。


「これは一体……」


「彼女が、飛び降りようとして」


 縁川天晴が、遥に目を向ける。先生は深刻そうに、私と遥を交互に見た。


「とりあえず、彼女を一度屋上から離さないと」


 先生は、躊躇いがちに私を見る。


 医者として、さっきまで昏睡状態だった人間と重い病気を抱えた人間屋上に置いておくのは忍びないのだろう。


「大丈夫です。ちゃんと戻れます」


「戻らなくていい。人を呼ぶから、そこにいなさい」


 先生は持っていた端末で、応援を求める。


 急に体全体に重力がかかったように重くなって、私はその場に倒れこんだ。


「あかりちゃん!」


 縁川天晴は、絶望を帯びた声で呼びかけてきた。私は首を横に振る。


「大丈夫だから。ずっと寝てて急に動くのに無理があっただけ……」


「でも」


「いいから。それより、そっちのほうが重症でしょ。おとなしくしときな」


 私は彼を制するように手を振る。けれど彼は、「生きてる……」と泣き始めた。


「あかりちゃん……、目が覚めて……本当に……本当によかった……」


 ぼたぼたと、頬に涙が降りかかる。何とか指を動かして、その頬へと手を伸ばす。


 触れた温度がこの間までのものと全く違っている。


 私は、帰ってきたのか。


 この、世界に。


「夢みたいです……あっ、握手しちゃった」


「ずっと前から、してたでしょ」


 私は呆れがちに言葉を返した。


「生きててくれて、ありがとうございます……」


 彼はそのままずっと、何度も何度も私の手を握る。


 空は真っ暗になっていたけれど、星の光に輝いていた。


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― 新着の感想 ―
遥ちゃん、嫌な子なのかなって最初思ちゃってたんです。もしかしたらリークしたのも?って。でも実際は違くて。遥ちゃんはわからなくてやらかしちゃったりするけど、遥ちゃんなりに一生懸命にもがいて頑張ってたんで…
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